スケープゴートⅡ(汚れ者)~情報伝達【書籍】紛争と和解を考える
前回のコラムではスケープゴートの発生メカニズムについて触れました。
今回も書籍「紛争と和解を考える 第1章拡散する敵意」より、
スケープゴートを悪化させる、情報伝達についてご紹介したいと思います。
なお、本書におけるスケープゴートの具体例としては
中世におけるキリストを殺したとされるユダヤ人、またヨーロッパの魔女狩り、
近代ではナチスドイツ時代のユダヤ人、9・11同時多発テロ後のアメリカにおけるアラブ人などが挙げられています。
さて、現在、多種多様なメディアやインターネットコンテンツがあります。
そのような中、いかに視聴者の関心を引き、そのコンテンツへのアクセスを継続させるかが
メディアやインターネットコンテンツの重要な要素となります。
スケープゴートの第一段階として、視聴者の関心を引くには次の要素が効果的であると紹介されています。
― 重要性(多くの視聴者にとって関連があり、重要な出来事)
― 近接性(文化的・地理的近接性が高いもの)
― サイズ(多くの人が巻き込まれた事件・災害や、著名人のかかわりなど)
― 閾値(インパクトが強く、センセーショナルな内容)
― ネガティブさの程度(悪いニュースは安全なショックをもたらし、視聴者にとって魅力的)
次の段階として、視聴者の興味を長引かせるため、娯楽的要素の追加、最新情報の更新(特ダネやスクープ)、ドラマ化、視覚的な魅力の創出などの手法を用います。
その上で、エリート(著名人や権力者)が聴衆を惹きつけ、問題をスケープゴート“個人の行動”に落とし込み、簡潔に継続的に伝えることにより、スケープゴートが確立されると、本書では説明されています。
私たち自身がこのスケープゴートを悪化させる情報伝達に留意しつつ、
これらの手法を和解や融和に応用することもできるのではないかとも考えます。
次回はスケープゴートを軽減する方法について触れます。
2021年6月4日
田島賢侍