提案『音楽の敏感期』
今回の記事は6月4日のシオの勝手に幼少期イメージシリーズ『ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト』でもアナウンスした『音楽の敏感期』についてより深く説明をする内容です。
『音楽の敏感期』は2歳~5歳で日常生活の中にある音楽や音の高低差、リズム、メロディーに興味を示し始め6歳になるとその敏感期は消え去ってしまいます。よってその間に音に親しむ環境を作るか否かにより音楽に対しての関心や興味にも、音楽を奏でる能力にも差が出てきてしまうのです。敏感期は子供が『・・・がしたい』という強烈で夢中になる時期であること、そして楽に習得できること、そのタイミングを逃さないようにする時期であることを認識しておきましょう。
音楽の敏感期の波に載せるためには4つの重要な取組があり、また音楽を聴かせるだけで良いというものではないのです。以下の4つの項目が土台になることを再確認しておきましょう。
1、日常生活の微細運動、身体運動
手や足など身体全体でリズムをとったり、叩いたり、振ったりするなど楽器を操作するために日常生活で身体の動かし方を理解する必要があります。また音楽教育が進めば目と手の供応動作である読譜や演奏技術が必要になり、さらにペンを取り記譜することも必要になります。よって一見音楽とは関係がなさそうな日常生活がとても重要になるのです。
2、感覚的バランス
音楽的敏感期といえば聴覚のみ研ぎ澄まされれば良いわけではありません。必ず手や目との供応動作が必要になります。視覚・聴覚・触覚の感覚を連動させて音質、音色、音の高低差の弁別、音の記憶、音の強弱など感覚的に身につけるべきことはたくさんあります。また芸術的想像力や表現力もこの感覚的バランスが必要になります。
3、言語習得との関係性
言語と音楽は別物のように思うかもしれません。しかしその両者はとても深い関係にあるのです。私達が使用する言語は一音一音の音の集まりです。日本語だと言語が音の集まりだと判断しづらいものですが、英語やフランス語・中国語などの外国語は単語一つ一つに音や抑揚やアクセントが付いています。よって乳児の頃から既に言葉を通して音を学んでいるのです。これは私の経験的観測で意見を申し上げるのですが、おしゃべりをよくする子は音楽的な感覚が一歩先を行っている様に感じています。またそのような子供の特徴として音を聞くと手を叩いたり、身体を揺らして音を楽しんでいる乳児期があり、その動作にやがて言葉をはめ込んで自作の歌をつくるようになります。この2、3歳に現われる音楽的敏感期は乳児期の言語の土台があってこそなのです。
4、静けさの中の体験
音を正しく聴き取るためにはその音に集中する力が必要です。生後9ケ月~11ヶ月の選択的聞く力の獲得に成功した子供は、この静けさの体験も獲得しやすく、雑踏の中でも自分自身の聴きたい音に集中しようとする耳の澄ましが上手にコントロールすることができます。
この静けさの中で多くの良い音に出会えるように環境を整えることが耳の良さに繋がります。指揮者がオーケストラで各パートの音色を聞き分ける力もこの力を最大限に使っているプロフェッショナルなのです。
今皆さんのお子さんがどの位置にいるのかを分かりやすく理解できるように、敏感期の特徴をアナウンスします。
1、乳児期
乳児期は生後3ケ月から音を聞き分けます。身近にお世話をしてくれる母親とそれ以外の家族の声を分けて捉えています。生後6ヶ月では好きな音楽や曲が決まり、9ケ月では音楽に反応して身体を動かしたり、声を出して喜ぶ様子が見受けられるようになります。我が子は曲に合わせ屈伸運動が基本でお気に入りの曲ではその屈伸運動に手拍子が付いていました。子供によって表現方法も異なりますのでお子さんの動きを観察なさると新たな発見があるかもしれません。
2、1歳児
喃語調の音声を出して歌を歌うようになります。音程やテンポ、リズムを自由に探索し音を楽しむ様子が見受けられるようになりますが音階らしきものはまだまだ現われてはいません。
3、2歳児
自分なりの歌を作るようになります。音程は定まらないことが多いのですが言葉一つ一つに音をはめ込んでくるようになり、ドレミファの音階に対応する様子も見受けられ、ハ長調やト長調の走りが出てきます。またお気に入りの曲の一部を歌うようになりますがとても短いフレーズです。
4、3・4歳児
ドレミファの音階で歌が歌えるようになり、フレーズの繰り返しがあり曲を好みます。
4歳になると好きな歌を替え歌にして創作的歌詞を作り、また意味の通る内容になってきます。
5、5歳児
音程やリズムを正しくとって歌うことができるようになります。また歌を覚える力も付きますが環境の差が出てくる年齢でもあり、歌が好きな子はどんどん歌えるようになり、音楽的環境が乏しい子は歌を歌うことに関心が無い状況になる年齢です。
最後に鳴りますが、音楽の敏感期は聴覚だけでは波に乗ることができません。乳児期からの言語の獲得を土台に音に対しての獲得を心がけ、日常の微細運動や身体運動、感覚的バランス、静けさの体験と共に音を楽しむアクティビティと同じ曲を何度も楽しむ経験をさせましょう。