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【よろずイベント紹介④】一生に一度は行ってほしい! 「Anthrocon」

2021.06.26 12:00

三度の飯より旅行が好き。まんぐです。

移動や集会がままならない時期が続き、オフラインでのイベントへの逆風はいつ止むのかといった状態ですが、どこにも行けない今こそ、ちょっと背伸びして遠方のイベントにも思いを馳せたり、あまり馴染みのないイベントに目を向けたりするチャンスかも。ということで、わたし自身の参加経験も交えつつ、各地のイベントを紹介していきたいと思います。よろしくです!


Photo by Victoria Earl / CC BY-SA 2.0

今回紹介するのは「Anthrocon(アンスロコン)」。JMoF 2020のゲスト・オブ・オナー、Uncle Kage(アンクル・カゲ)が代表を務めているコンベンションです。

日本のケモノ界隈に相当する海外ファーリー界隈の中で見ても、かなり早い時期から開催されていた、かつ数年前まで世界一の参加人数を誇っていたイベントだということもあり、名前を聞いたことだけならあるという人も少なくないかもしれません。

そもそも知名度のあるイベントを、なぜあえて今紹介するのか? もちろんそれだけの理由があるからです!


基本情報

Photo by SkiEngineer / CC BY-SA 4.0

開催地はアメリカ合衆国の東部、ペンシルベニア州のピッツバーグです。野球やアメフト、アイスホッケーといったスポーツチームの本拠地として知っている方もいるでしょうか。かつては鉄鋼業が盛んで、今は学術都市としての性格もあるなど、さまざまな面を持つなかなかに面白い都市ですが、ダウンタウン(街の中心部)を流れ合流する大きな川と、そこにかかる大きな橋がとても印象的な街です。現地にたどり着くまでのハードルは決して低いとは言えませんが……。

開催時期は毎年おおむね6月下旬もしくは7月上旬の週末ですが、年によって若干変動があります。週末といっても大規模コンベンション、木曜日から日曜日までの4日間開催ですし、アメリカは7月4日が独立記念日の祝日にあたることもあって、何かと休みが取りやすい時期ではあるようです。日本だとこの時期の気温と湿度だと、特に着ぐるみキャラにとっては辛いイメージがありますが、それよりはだいぶ過ごしやすかった印象です。


★コラム★ Anthroconまでのアクセス

アメリカやヨーロッパまでの旅となると、やはり問題となってくるのは移動。アメリカ東部までのフライト時間は片道10時間を超えてくる上に、日本から飛行機の直行便は(2020年現在)ないので、どこかで乗換が必要になってきます。さらにピッツバーグ空港から会場のあるダウンタウンまでは約30kmと、ほぼ東京−横浜間に相当する距離があります。しかも鉄道アクセスはありません……。一応路線バスがあるにはあるのですが、大荷物を抱えて難儀することが目に見えているので、SuperShuttleのような事前予約制の乗合ワゴンタクシーが一番使い勝手がいいんじゃないかと思います。


ポイント① とにかく圧倒的! これがコンベンションだ!

Photo by Warphammer / CC BY-NC-ND 2.0

Anthroconの参加者数は2019年の時点で9,000人を突破しており、実質1万人だと考えるとまさに桁違いの規模! 現在は首位の座を他に譲ったとはいえ、2000年には参加者が既に1,000人を超えていて、そこから15年以上にわたって世界最大の界隈イベントだった……とえば、そのすごさが伝わるでしょうか。

会場にコンベンション・センター(例:ビッグサイト、幕張メッセ、インテックス)が使われている時点でもうお分かりかと思いますが、集合写真に映る2,000体以上の着ぐるみや、これだけで一つの独立したイベントじゃないかと思えるようなディーラーズルーム(即売会エリア)など、これだけの規模の会場を専有するケモノイベントは日本の周りにはまだ存在していません(参加人数だけなら即売会でも割といい線いってそうですが)。

右を向いても左を向いても、おびただしい数の同好の士が大手を振って歩いている…… 「地球上にこんな世界があったんだ」くらいの感覚になります。大袈裟でなく。

Photo by Douglas Muth / CC BY-SA 2.0

とはいえ、そもそも界隈規模人口が多いアメリカ。数千人規模のイベントは他にもあります。

Anthroconが他とどう違うのか。一言で言えばそれは、とてつもなくしっかりしたイベントだというところにある、と思います。

Anthroconの巨大さを形作っている大きな要因の一つは、これまで積み重ねてきた歴史にあります。これを見てもらえればわかると思いますが、1997年に始まり、それ以降毎年(時に場所を変えながら)開催され続けているAnthroconは、アメリカ北東部の一大拠点であると同時に、アメリカの(そして世界の)ファーリー界隈の歴史を作ってきたイベントだといえます。時にはファーリー界隈全体の顔としてメディアの矢面に立ちながら、20年以上にわたって築き上げられてきた重みとでもいうべきなのか、頼もしさ、安心感が本当にすごいんですよね。

また、ここまでほとんど何の説明もせず「コンベンション」という語を使っていますが、

タイプの集まりって、なかなか珍しいんじゃないでしょうか。単なる即売会でもなく、企業主催イベントでもなく、オフ会と呼ぶにはあまりに巨大でさまざまなものを含んでいるコンベンション。こうした空間で生まれる独特の空気、なんともいえない魅力があるのですが、これを言葉で伝えるのが実に難しい!

そもそも、元々はアメリカのSFファンの集まりがこういう形式をとっていた(ちなみに日本のSFファン界隈にもコンベンション(大会)があります)ところから、ファーリーの集まりが分派するような形で発生した時に受け継がれて、今のファーリーコンベンションの形があるんですよね。JMoFも欧米のコンベンション形式をお手本にしている部分が大きいのですが、やはり向こうのコンベンションの空気は格別です。しかも、Anthroconは他のファーリーコンベンションのお手本になってきた原型のひとつでもあるわけで、いわば定番の全部入り。その意味でもぜひ一度みんなにこの空気を味わってほしい……!

Photo by Douglas Muth / CC BY-SA 2.0

★コラム★ Anthroconと日本

長きにわたって開催されていることもあり、Anthroconにまつわるエピソードは実に多彩ですが、実は日本に関するものもちらほら。例えば、過去には関西テレビの「さんまのまんま」からマスコットのまんまちゃんが参加していたり、日本で活動する方がゲスト(Guest of Honor)に選ばれたりしたこともあります。実はAnthroconと日本、ちょっとしたご縁があるのでは……? という気にもなってしまいそう。


ポイント② ここは街の中! 僕らはここにいてもいいんだ……!

Photo by Douglas Muth / CC BY-SA 2.0

Anthroconを語る上で外せない醍醐味が、街との一体感。メイン会場のコンベンションセンターはピッツバーグのダウンタウン、まさに中心部に位置します。会場直結のホテルだけではとても人が収まらず、周辺のホテルに宿泊している参加者たちが会場まで歩いてくることもあって、会場近くでは当たり前のように街中でキャラクターに出くわします。地元の方々にとっても、この時期になると半ばお決まりの光景になりつつあるようで、とてもあたたかく参加者を迎え入れてくれます。

Photo by Douglas Muth / CC BY-SA 2.0

また、集合写真後のパレードも、以前は会場内をぐるりと一周するだけだったのがここ数年は会場外を練り歩く区間が設定されているのですが、コンベンション参加者以外の人も多数見物に訪れているようです。まさにお祭りの雰囲気といったところで、街との一体感をとても感じられる瞬間のひとつだと思います。

Photo by Douglas Muth / CC BY-SA 2.0

実際のところ、毎年数千人が一週間近く泊まりに来る経済効果はバカにならないものがあるようで、ピッツバーグの地元にとっても有数のイベントとなっていることがたびたび報じられています。とはいえ、ただのビジネスライクな付き合いというよりは、これまでのAnthroconが地道に積み上げてきた信頼関係の賜物だといえるでしょう。会場周辺の飲食店が毎年コラボレーションしたり、そうした店が経営危機に陥ったときは参加者が寄付を募ったこともあったり、という有名な話もあるくらい、街とコンベンションが深く親密に結びついています。

数千人規模の参加者を集めるコンベンションとなるとなかなか場所の確保も容易ではないようで、街中から離れた郊外の、会場の外にはほとんど何もない(特に車社会アメリカということもあり、車がないと非常に厳しいような)場所で開催されることもままあるのですが、その中にあって街を楽しみながら参加できるところ、そして巷の人と触れ合いを楽しめるところはAnthroconの特筆すべきポイントとなっています。コンベンションの前後に市内の観光に繰り出すのもいいですね!


★コラム★ 観光ガイド

せっかく海外まで行くんだから、観光もぜひしておきたいところですよね! 車社会のアメリカ、複数都市を回ったり郊外まで行ったりするにはどうしても車がないと厳しくなってきますが、街中の観光なら徒歩と公共交通機関でも割となんとかなります。

インクライン(ケーブルカー)で丘の上から一望できるダウンタウンの光景は昼夜共に美しく、屈指の名所となっています。いきもの関連なら全米最大規模の鳥類園をはじめ、郊外の植物園や動物園も人気スポットのようです。鉄鋼王で慈善活動家でもあったアンドリュー・カーネギーのお膝元ということもあって文化施設も指折りで、ポップアートの旗手アンディ・ウォーホルの美術館や、ティラノサウルスの全身骨格などアメリカ全土でも屈指の化石標本を収蔵するカーネギー自然史博物館などがあります。


まとめ:万人におすすめできる、頼もしいコンベンション

Photo by Douglas Muth / CC BY-SA 2.0

ここまで、Anthroconの魅力のほんの一部を紹介してきました。アメリカには特にたくさんのコンベンションがあり、その中からひとつの魅力を語ることはなかなかに難しかったですが、ただ大きいだけじゃなくてちゃんとイベントの色があるぞ! っていう部分が少しでも伝われば幸いです。

伊達に長いこと開催されてきたわけじゃない。これまで積み重ねてきたものがある。Anthroconの魅力の背景にはそうした頼もしさが感じられるし、だからこそ「すごい!」と思わされてしまうんですよね。いやーすごい。

2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、Anthroconも他のコンベンション同様中止に追い込まれました。なかなか先の情勢も見えにくい中、2021年7月の開催を目指して参加登録をオープンしていたのですが、3月下旬に2021年の開催中止の告知がありました。もしかするとコロナ禍後の「ニュー・ノーマル」なイベントの新しい形をAnthroconが作っていく、なんていうこともありうるのかと思っていただけに、ちょっと悲しいお知らせとなってしまいました。

もう一年繰り越されて、次の開催予定日は2022年6月30日〜7月3日、開催テーマは「Aesop’s Fables(イソップ童話)」です。今度こそはきっと開催されますように&参加できるようになっていますように……!

Photo by Colin Gerhart / CC BY-SA 2.0