よく似た風景
出雲・松江出張から広島に帰りました。写真は今日の宍道湖を南岸から撮ったものです。水面の向こうに穏やかな丘陵が見えるこの風景は、実はスコットランド留学時代に何度も行って印象に残っているある場所(グラスゴー郊外のグリーノックというところ)ととてもよく似ていて、気に入っています。帰国以来、この場所を通るときは車を止めて眺めることが多くなりました。
曇り空の下、暗めの光景が、なおさらスコットランドのその場所に似ているわけです。もちろんスコットランドもずっと雨や曇りばかりではありませんが、その場所はなぜか曇り空の方が、似合うと感じたのを覚えています。初めてそこを訪れたとき、曇り空に迎えられたからかなと思います。
さて、話は変わりますが、税務調査の受託立会人として出雲に行ってきました。久々の調査立会で少し身構えていましたが、今回の調査官は、かなり紳士的で穏やかな印象です。こういう相手であれば、適度な協力関係(理想的には信頼関係)をもって協議ができる気がします。
これまでかなりの数の税務調査立会をしましたが、残念ながら不快な経験もたくさんしてきました。そのなかには、調査官が納税者の権利を軽視していて、権力者的に振舞うアプローチ(海外の文献ではこれを「command and control approach」と言ったりします)も多く見てきました。
要するに、税務署(又はその部門)によって、また調査官の性質によって、納税者に対する態度は大きく異なるのが現状だと思います。そのあまりのギャップに、ときどきこちらのマインドが混乱することがあります。
その混乱が、僕がテーマとする研究を始める動機となりました。税務調査の手続的公正についてです。結論から言えば、納税者の正直さと自発的な協力姿勢を引き出すには、権力者アプローチは有効ではないということです。
税務調査官が納税者の権利を尊重して、敬意をもって接触する方が、全体的には納税者のコンプライアンスを引き上げることになるといえます。それは強制されてではなく、自発的なコンプライアンスです。
それなら、現状の税務職員の態度にみられるギャップを小さくし、手続的公正を重視する方で統一するのが、税務署側にとっても得策といえます。そのためには、やはり納税者権利憲章の導入などで、納税者の権利を尊重しながら納税義務を果たしてもらう姿勢を、国として明確にするのがよいというのが僕の見解です。
もちろん調査の現場では、納税者の意に沿わない決定が下されることはあります。ただ、その場合でも調査官がどのような態度でそれを行うかというのがとても大事なわけです。少なくとも、終始敬意と品格のある態度でそれが行われるなら、事後の争い(不服審査とか訴訟)はかなり減るのではないかと思っています。