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長崎歴史ノート

2024.07.15 06:51

https://www.nagasaki-press.com/kanko/history/column-histry/nagasaki-history/post-64783/ 【日本一、島が多い長崎県だから島旅上手をめざすべし】より

魚、海、自然、歴史 はるばる渡る目的は?

「いきなりですがハワイに来ています」とフェイスブックであげてみた写真。本当は五島市の香珠子ビーチです。

長崎県の島の魅力を伝えるために、考えぬいた福山雅治さんは、「島」になりました。衝撃の島PRムービーがちょっと前に話題になりましたが、ご覧になりましたか?いや。はや。人々は、福山岩を見るために壱岐にいくのかな。福山島を見るために対馬にいくのかな。福山海を見るために五島にいくのかな。いってほしいけれど。

長崎県内の島の数は、971なのだそうです。そしてそれは日本全国にある島の数の14.2パーセントなのだそうです。有人島の数も面積も日本一なら、離島定期航路の数も日本最多。とにかく、島を楽しむならば長崎にいくしかない。島旅の面白さならば長崎はどこにも負けません。

透明度の高い海。ダイナミックな自然。鮮度抜群の魚。人は何を求めて島に行くのか?目的はそれぞれですが、近年ぐっとクローズアップされているのが、潜伏キリシタンの暮らしや教会をめぐる歴史旅でしょう。ただ、何の予備知識もなく足を運ぶと、アクセスが限定されているだけに時間に追われ、バタバタでキッツキツなスケジュールをこなすだけで疲弊してしまうリスクがあります。島旅のキモは集中力。そのための予習は必須です。

パライソの島を訪ねる

国境の物語を知る

五島市から船で渡る久賀島は、パライソ(天国)に一番近い聖地ともいわれるキリシタンの島です。ユネスコの世界遺産登録を目前にした「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産の一つ、旧五輪教会もあります。この島のキリスト教墓碑の調査報告書『復活の島』(大石一久と久賀島近代キリスト教墓碑調査団編著)は、1冊まるごと久賀島。禁教が解かれるきっかけともなった「牢屋の窄」事件をはじめ、島の自然や風土、信徒の暮らし、旧五輪教会が保存されるまでの顛末まで。島に残る墓碑の地道な調査を基盤にネットワークを駆使した濃厚な内容となっています。

範囲をもっと五島列島全体に広げて、教会だけでなく食も遊びも欲ばりたい、となれば『長崎游学11五島列島の全教会とグルメ旅』がお手軽かな。美味しい店情報やお土産案内も網羅しています。

世界の記憶として認定された対馬の朝鮮通信史ならば、『十二回の朝鮮通信史』(志岐隆重著)を読めばさらに深く知ることができます。江戸時代のニセの国書とその返還などドキュメントタッチで、国境の島のリアルがせまってきます。

スポット的に歴史を掘り下げた『旅する長崎学』の海の道シリーズは、11で壱岐、12で対馬、13で五島列島、14で平戸・松浦、そして15は100の島を一挙紹介という恐ろしく手間隙のかかる仕事をしております。常に台風や低気圧によるスケジュール変更と隣り合わせの島取材、ここまでまとめるのはさぞ大変だったことでしょう。

西の端にある長崎の、そのまた海の向こうにある島ならではのハンパない「はるばる感」は今も昔も変わりなく、どっぷり浸かれば、リフレッシュはお約束。

いい季節になりました。ずっと行きたかったあの島へ、今年こそチャレンジしてみてはいかがでしょう。

https://www.nagasaki-press.com/kanko/history/column-histry/nagasaki-history/post-66263/【長崎のキリスト教史は昔も今も波乱万丈】より

土地に眠る物語を知り 世界遺産に強くなる

サント・ドミンゴ資料館と共にぜひ訪れたいのが、日本二十六聖人記念館。この2つを押さえれば、おおよそ概要はつかめます。建築家今井兼次氏の設計ですが、外壁には「フェニックスモザイク」と呼ばれる、役目を終えた陶器のカケラをモザイクにした壁画が。これも一見の価値あり。

この本が出るころには、もう決定しているのでしょうか。ユネスコの世界文化遺産に登録されるという「長崎・天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。土壇場で待った!がかかり長く待たされた関係者にとって、まさに悲願でした。でも決定が延びたぶん、準備時間を長く持てたので、その間にガイドを育成したり、見学システムを整えたり、資料館をつくったりできたという関係者のお話です。まさに「満を持して」。

長崎市立桜町小学校の裏手にはサント・ドミンゴ教会跡資料館が併設されています。17世紀の長崎に10以上もあった教会は禁教時代に破壊されて今は影も形もありませんが、小学校の建て直し工事中にサント・ドミンゴ教会の基礎が発掘されました。影は消えても形が残っていたわけです。この資料館の中には遺跡のほか、土層断面パネルがあり、キリシタン代官だった村山等安が自分の土地に建てさせた教会の時代と、その後の髙木代官屋敷時代がミルフィーユのように重なって、その上に小学校があるのがわかります。

歴史の営みはそのまま私たちが立っている地面につながっているのです。あとは長崎人が、この世界遺産の意味や意義をどのくらいワタクシゴトにできるか?なんだけれど、正直、信者でない限り、キリスト教が長崎で400年間歩んできた「伝来・迫害・復活」の歴史や、潜伏キリシタンとカクレキリシタンの違いを即答できません。とはいえ、どっぷり勉強する時間はなし。それでも、外からお客様が来たときに少しは知った顔で解説したいものです。

漫画で読む。訪ねてみる。講演を聴く。お好みで

そんなときにお勧めしたいのが『漫画で読む長崎キリシタン史 愛のまち 夢旅日記』(西岡由香著)です。平戸、口之津、有馬、大村、外海など長崎県内各地のキリシタンの重層的な歴史をわかりやすく、ドラマチックに描ききった足掛け5年の力作です。世界遺産の構成資産は「○○集落」という表記になっていますが、その集落の信仰の象徴こそが教会。

『長崎游学2 長崎・天草の教会と巡礼地完全ガイド』(カトリック長崎大司教区監修)は、島の小さな教会から構成資産集落の教会、大浦天主堂までガイドしており、日本語版以外にも英語版、韓国語版を出版しています。

『旅する長崎学1~6』はキリシタン文化シリーズですが、中でも6は1~5の総集編なので全体を総括できるダイジェスト版。

また、現在、カトリック大司教区の教会は内部が撮影禁止になっており、教会を訪れたときの感動を記録に残すことができません。ならば写真集の出番でしょう。『珠玉の教会』は建築写真家でもあった三沢博昭氏の遺作写真集。

また『ステンドグラス巡礼』は教会のステンドグラスにしぼった松尾順造氏の写真集です。どちらもさすがプロフェッショナルな仕事ぶり。教会って訪れる季節や時間によっても表情を変えるのです。

ところで7月、このテーマでもって長崎文献社主催の文化フォーラムを開催します。関連書籍の販売もあるので、ぜひおでかけください。

文・川良 真理