① 波の「青」を表現する色・色彩へのこだわり 「ベロ藍」と「銅緑」水飛沫(みずしぶき)の表現は、まるで現代アートの様だと語る、天野山文化遺産研究所・代表理事で「修復士」の山内 章さんは推測した。 「緑がかった色には、使える色として、銅の錆から作った顔料としての<銅緑(どうろく)>と、孔雀石から作った顔料の<岩緑青(いわろくしょう)>の2種類があった。ビビッドな色でないと、祭り屋台としての映えないとの理由から、北斎は岩緑青より早く、白く退色してしまう銅緑を、あえて使ったと思われる」と。これは、2019年に本作品に対して実施された「蛍光X線分析」という科学的な解析アプローチ結果からも、裏付けられた。 ② ここで描かれた波や飛沫(しぶき)の大きさと奥行きを立体的な3D技術により推測 3D作家のワクイアキラさんは、「ここで描かれた波や飛沫を、神奈川沖浪裏の様な絵画とも比較しつつ、少なくとも奥行きとしては、10層以上(一層が10メートル)で100メートル以上はあったものを、想定して描かれている。つまり、この世を超越した別世界、異世界に連れていってくれる仕組みが、ここではできている」と語った。そして、実際の3D映像として制作した3D映像作品を、柳楽優弥さんにもイリュージョン体験・体感をしてもらった。 ③ 「陰陽説」でいう「太極図」を憶測する 北斎館・副館長の竹内 隆さんは語る。「陰陽説とは、対立する陰と陽の<気>が調和し、自然の秩序が保たれるという思想です。この絵画は、祭屋台の天井画として北斎に描いてもらったので、神に感謝しての五穀豊穣、そして住民の幸福を祈る。そのために、何を描いたらいいのかを、北斎は考えたのではないか」と。 アート・トラベラーの柳楽さんは、最後にこの絵画の感想を述べた。「景気のいい感じ。でも、<怖さ>とか<疑い>という感情を忘れさせてくれる。<自由な気持ち>を与えてくれるような感情を抱いた」と。