クリスマスの物語
「ねぇねぇ、雪すごい」と僕を起こす声。
僕は眠い目をこすりながら、笑いかける君を見る。
小さな眼が僕を見つめている。
横着で、寝不足で、しかも寝るのが大好きな僕だけど、
君が起きろと言うなら、僕は起きる。
例えるなら、恋人でも王様でも大統領でも出来ないことを、君はやっているんだよ?
わかってるかな?
君のお母さんが、空の上へ旅立って、もう3年になる。
男手一つで育ててきたけど、うまくやってこれたのか、自信はない。
甘やかしすぎたかなとも思うけど、いい旦那さんになかなかなれなかった僕が、
君を叱るのを、天国のお母さんはあんまり良くは思わないと思うから。
夜寝る前に、まだ小さな小さな君の手が、僕の服のはしをぎゅって掴むと、
僕はちょっとだけ、本当ちょっとだけだけど、強くなれる。
このぐぅたらな僕が、日々日々頑張れているのも、君のおかげ。
だからね、君がここに来てくれて、そして今もここに居てくれて、本当によかった。
「働きすぎは誰にとってもよくないぜ」
職場の同僚たちは、そんな風に口では言うけれど、
何だかんだ、僕がもう一つの仕事をしている間、
君のことや家のことを手伝ってくれたりする。
感謝しなくちゃね。
今僕がしているお仕事は、色んな商品の訪問営業マン。
ビシっとスーツを着て多くの家を訪問するけれど、
どこも大体会って話をする前に断られる。罵声を浴びることだってある。
働くってことには、厳しさや苦しさも多い。
人は見かけや学歴といったもので判断されることも多いし、
この社会には、不条理なことや偏見や納得行かないことだって山程だ。
君がもっと大きくなったら、いつかそんなものに出会う日だってやって来るだろう。
でもね。
それ以上の愛や優しさや希望が、
この世界にあることを忘れちゃならない。
君にはさ、そのこともしっかり教えてあげなくちゃ。伝えてあげなくちゃ。
だって、それは君のお母さんが命をかけて僕に教えてくれたことだから。
いつかね、お母さんに聞いたことがあったんだ。
お母さんはさ、元々身体が弱くて、小さい頃から病気に悩まされていた。
僕と一緒に暮らしていなければ、もっと長生き出来たかもしれない。
いい病院に入って、いい治療を受けて、もっと素敵な人生を送れたかもしれない。
そんなお母さんに、ある夜、僕は聞いたんだ。
「なんで僕と一緒に暮らすことに決めたの?貧乏で、寒くて、生まれた所からも遠いこんな場所で」
お母さんは一瞬驚いた顔をして、それから笑って言った。
「そんなの決まってるじゃない。とっても、楽しそうだったからよ」
それから、隣ですやすやと眠る小さな小さな君を見て、そしてもう一度僕の目をしっかり見て、
「正解だったわ。私は、とっても幸せだったわよ」って。
片親が人間の、君がいつか大人になる為には、
人間の世界のこともちゃんと知っておかなくちゃいけないと思うから。
僕が色んなことを教えてあげられるように、
広い人間の世界を自分のこの目でしっかり見ておこうと思う。
そしてそれを、ずーっと忘れないように、日々書き留めておくよ。
人間の世界で僕が知ったこと、君に教えたいことや伝えたいことはもちろん、
トナカイでの空の飛び方とか、煙突のうまい入り方とか、
間違えて起きている人間に出会っちゃった時の対処法とかもね。
(失敗したおかげで僕は君のお母さんと出会えたわけだけど)
そして、僕とお母さんが、いつだって、
とんでもなく君を愛しているということも。
長くなってしまったけど、初めての日記はこれで終わり。
3日坊主にならないように気をつけなくちゃね。
もうすぐクリスマスだから、本業の方も頑張らなくちゃ。
じゃあ、
おやすみなさい。
隣で眠る、親愛なる息子へ。
〜あるサンタクロースの日記より〜
昨日はあんな風に書きましたが、
クリスマスはやっぱり天下のクリスマス。
チキンやケーキを食べるぐらいの余裕は、
受験生にも必要でしょう。
さて、クリスマスが終われば年の終わり。
今年のクリスマスは、ひいては今年という年は、
あなたにとって、いい年になりましたか?
なってないなら、ここから挽回しましょう!
2016もファイナル・カウントダウン!
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
あ、この日記が更新されるのはクリスマス終わった後だ。