【宝探し】(仕事場D・A・N通信vol.31)
自宅にも仕事場にも、未整理の本棚がある。好きでそうしてあるのだから、宝の山である。何が存在しているのかを未知なのだから、眺めるときはいつも宝探し気分だ。今朝も他のものに手を伸ばしていたのに、眼に「旅」の文字が入った。
「旅」って、日本交通公社(後のJTB)が出版していた雑誌じゃないか。休刊になったよなぁと思ったので取り出した。
「これ、読んだのかな?」と言いたくなるような、折れ目もない美しいシチリアと地中海の表紙の雑誌。新創刊、創刊80周年記念号・新潮社とある。
そうか、老舗の旅行雑誌を新潮社が譲り受けて継続発行したのだったか……(本当にそうだったかどうか、大した確認なんかしないがウィキペデアではそうだ)
その表紙の下部に新連載「ノースライト」の文字を観て驚く。少し前のNHKドラマ化作品がなかなか良かったし、小説はむろん発売時に読んで、とてもいい話だった。
「エッ?」、ちょっと待てよ。「ノースライト」って読んだの最近じゃなかったかな。本を探してみたが、どこに置いたか分からない。ネット検索したらやっぱり2019年2月発行とある。
この雑誌、書店で最近印象がないぞ。いつ潰れたんだ?手元の雑誌は2004年5月の新創刊号。「ノースライト」は2006年2月号まで連載されていたらしい。
で、単行本になったのは2019年。連載終了後13年も経っている。大幅な加筆修正を経て刊行されたとあるが、連載時の評判はどうだったんだろう。
横山秀夫といえば2003年、2004年頃、「半落ち」や「クライマーズ ハイ」で評判の作家だった。その後「64」でも大いに支持を集めたが、あの時期に書かれたものが、どうして?と思った。
そこでスマホを頼りに調べてみると、著者自身がインタビューで「この連載は、見事に失敗しました」と語っているのに出会った。そして全面改稿の長い時間があって、著者自身が一番と言うような小説になったらしい。