【~田村隆一の章~試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より②】
2021.09.10 02:20
昨日に続いて、試論集『十三人の詩徒』(七月堂)から。
日本の近・現代詩人13人の詩と人生を見つめた一冊。
日本語の豊かさ、ことばの光を感じて頂けたらうれしいです。
本の中から、詩人たちの「ひとひらの姿」をご紹介します。
▶田村隆一(たむら りゅういち/1923~1998)
東京生まれ。詩人、随筆家、翻訳家として活躍。
詩誌『荒地』に参加。
戦後詩に大きな影響を与えました。
田村の詩の流れを現す大きなキーワードは、
「垂直から水平へ」。
言語の高度な抽象性を柱として、
戦後社会に生きる人間たちの
ざわめきと体温とを母胎として
数々の詩が生まれました。
その作品群は、詩にしか成し遂げることのできない、人と文明と現在とをつなぐ確かな記憶として屹立します。
言葉のない世界は真昼の球体だ
おれは垂直的人間
(「言葉のない世界」)
内向きに閉ざされることのない詩のことばには、世界を真摯に見つめる批評性がみなぎります。
幅広く、奥深いことばの源泉と鉱脈とを開拓し続けた田村隆一。
書き残された作品の力は、時間の鑢にかけられても、決して緩むことがありません。
白という色を産みだすために
ただそれだけのために
ぼくは詩を書く
一行の余白
その白
その断崖を飛びこえられるか
白
(「二月 白」)
※引用作品は田村隆一『田村隆一全集 全6巻』(2010年・河出書房新社)
(写真:高梨豊『田村隆一全集』第3巻より)
~次回は、永瀬清子をご紹介します~
▶詩論集『十三人の詩徒』(七月堂)
▶七月堂HP http://www.shichigatsudo.co.jp/