「という」、「と言う」、「と云う」、「と謂う」
定義規定や略称規定において、「◯◯とは、〜をいう。」、「以下〜と総称する。」という表現がごく稀に用いられることもあるが、一般的には、「◯◯とは、〜という。」や「以下〜という。」という表現が用いられている。
なぜ「〜と言う。」・「〜と云う。」・「〜と謂う。」ではなく、「〜という。」が用いられているのか。
重箱の隅を突くようなお話だが、簡単に述べようと思う。
cf.1民法(明治二十九年法律第八十九号)
(定義)
第八十五条 この法律において「物」とは、有体物をいう。
cf.2児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)
第二十四条の二 都道府県は、次条第六項に規定する入所給付決定保護者(以下この条において「入所給付決定保護者」という。)が、次条第四項の規定により定められた期間内において、都道府県知事が指定する障害児入所施設(以下「指定障害児入所施設」という。)又は指定発達支援医療機関(以下「指定障害児入所施設等」と総称する。)に入所又は入院(以下「入所等」という。)の申込みを行い、当該指定障害児入所施設等から障害児入所支援(以下「指定入所支援」という。)を受けたときは、当該入所給付決定保護者に対し、当該指定入所支援に要した費用(食事の提供に要する費用、居住又は滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用及び治療に要する費用(以下「入所特定費用」という。)を除く。)について、障害児入所給付費を支給する。
(以下、省略:久保)
国の法令は、すべて「〜という。」と平仮名表記をしているのに対して、自治体の例規の中には、「〜と言う。」、「〜と云う。」、「〜と謂う。」と漢字表記しているものがある。
常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)には、「言う」のみが掲載されている。国の行政機関が作成する公用文における漢字使用等については、常用漢字表によらなければならないが(平成22年内閣訓令第1号)、自治体は、内閣訓令に従うべき義務がないので、常用漢字表に掲載されていない「云う」及び「謂う」を用いたからといって必ずしも間違いというわけではないけれども、通常は、国に準じて、常用漢字表によっている。
cf.3滝川市選挙ポスター掲示場の設置に関する条例 (昭和58年3月28日条例第5号)
第2条 滝川市選挙管理委員会(以下「委員会」という。)はポスター掲示場を設けなければならない。
2 委員会は、公職選挙法施行令(昭和25年政令第89号。以下「令」と言う。)第111条の規定により算定した総数のポスター掲示場を設置しなければならない。ただし、特別の事情があるときは、委員会の定めるところにより、その総数を減ずることができる。
3 委員会は、投票区ごとに公衆の見やすい場所を選び、令第111条第3項に定める基準に従い、第1項の掲示場を設置しなければならない。
4 委員会は、第1項の掲示場を設置したときは、直ちにその設置場所を告示しなければならない。
cf.4彦根市財政事情の作成および公表に関する条例 (昭和23年3月8日条例第14号)
第1条 地方自治法第243条の3第1項の規定による文書(これを「財政事情」と云う。)の作成および公表に関してはこの条例の定めるところによる。
cf.5栃木県宇都宮市の「行列及び一般大衆示威運動に関する条例( 昭和23年12月24日 条例第201号)」
第2条 市民個人の権利を除外し又は妨害して道路を塞ぎ,行進し,或は之を使用する車又は歩行に依る行列を含む如何なる行進,一般大衆示威運動(以下「運動」と謂う。)も公安委員会の許可なくしては行うことが出来ない。
では、「言う」、「云う」及び「謂う」の違いは何であろうか。
この点、相模原市立相模大野図書館によれば、下記の通りだ。
「言う」:自分が口に出して言うときに用いる。
「云う」:他人のことばを引いて述べるときに用いる。
そうだとすると、定義規定や略称規定は、口に出して述べているわけではないので、「言う」はふさわしくないし、定義規定や略称規定は他人の言葉を引用するわけではないので、「云う」もふさわしくないということになる。
さらに、「謂う」は、由緒・由来などを述べる際に用いられたり、世間一般で言われていることを述べる際に用いられることが多いようだ。
そうだとすれば、「謂う」も、定義規定や略称規定にはふさわしくないということになる。
このように定義規定や略称規定においては、「〜という。」を用いるのが無難だということになる。
そこで、国の法令は、すべて「〜という。」を用いているのだろう。
「言う」つながりで、 Paul McCartney and Michael JacksonのSay Say Say(1983年)をどうぞ♪
歌詞自体は、女々しくって何だかなぁ〜という感じだけど、黒人と白人の二大スターの共演ということで、話題となり、大ヒット。