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射撃の大学

スキート据銃時に銃口が下がる(暴れる)理由

2021.06.09 02:43
※画像は小沢仁志さん。特に関係はありません(笑


スキートをやっている人の多くが経験する「銃口が下がって(暴れて)しまう」現象。据銃が完了したとき、思ったより銃口が「下」にあるので、これを修正するためにリキんで銃口が暴れてしまったりして、引き金のタイミングが遅れてしまう。多くのシューターはこんな経験をしています。

これが出た時、「慌てないように」したり、一生懸命左手で「持ち上げる」イメージを作り、人によってはものすごく左手にチカラをいれてしまい血が出るほど先台を握り込んでみたりして、なんとか対処しているわけです。

またこれは、狩猟時の獲物を銃で「捉える」際にもタイミングが一瞬ずれてしまうので、猟果を落とす一つの原因にもなります。

さて、これはなぜ起きているのか、そしてどうすれば改善できるのか、という話です。


実際に起きていることはどんな感じか

一般的に言われる据銃のやり方は、「照星を動かさないで銃を上げる」と言われます。「目」「照星」「ターゲット」の3点を直線で結び、この直線を動かさないように「ゆっくり」据銃の練習をしている方は多いと思います。

この時「照星の位置」はほとんど変わらないことになりますし、練習の際はゆっくり練習するので「下がる」なんて感覚がないわけです。でも実際に射台で据銃した時に銃口が「下がる」というのは、理解に苦しむわけです。

この時の変化といえば、「据銃スピード」が若干速くなるぐらいで、あとは同じ動きをしているはずなのに、「銃口が下がる」「銃口が暴れる」ようなことが起きます。

これを「左手が弱い」とか「右手が強すぎる」とか、「慌てて上げすぎている」なんてところを原因と捉えて修正しようとするけれど、これがなかなか治らないわけです。



原因はガンポジションの「銃の向き」だった

ですが、「照星の位置」ではなく、「銃の向き」を考えてみましょう。

銃の向きというのは、「目」「照星」「ターゲット」の3点を直線で結んだ際、据銃が「完了」した時は銃の向きはターゲットに向くわけですが、「ガンポジション」の時は銃床側だけが下がりますから「銃は上を向いている」ことになります。

次に、銃を上げていく際、「向き」がどのように変化するのかというと、「上向き」から「水平」に向かうわけですから「銃は下向き方向に動く」ことになります。

そして、頬や肩で銃床側が「止まる」わけです。この時「銃を下向きに変える」回転エネルギーは何かで打ち消さない限り慣性の法則で残っていますから、銃床が止まった瞬間に行き場のなくなったエネルギーは「銃口側」に伝わり作用して、「銃口を下げる」わけです。


練習と本番での差は、単純に、練習の際は「ゆっくり」うごかしていますから、「銃を下向きに変える」エネルギーも小さいわけですが、射台でクレーに集中している際は思ったよりも遥かに速く銃を上げているので、その分だけこのエネルギーが「大きく」なっているため、その分だけ「強く下向きに銃が動こうとする」わけです。



「頬付」より「肩付」が大事なのはこれが理由

この「銃を下向きに動かすチカラ」の影響を受けないようにするために、考えられるのは2つの方法があります。まず一つ目が「下向きに変えるエネルギー」そのものを発生させないこと、そして「銃床」にかかっていたエネルギーを「銃口側」に移さないこと、このどちらかになります。

このうち、よく言われる「スキートは頬付よりも肩付」と言われる方法は、「エネルギーを銃口側に移さない」効果があります。

頬で銃床の上昇エネルギーを「ピタっ」と止めてしまうと、銃口側に伝わるエネルギーが最大になってしまい、非常に影響を受けやすくなります。これを「肩に引き寄せる」ようにすると、銃床の上昇エネルギーを「上から後ろに変化」させてから、「引き寄せる」ことで打ち消すので、銃床の上昇エネルギーが銃口側に伝わりにくくなるわけです。

ただこの動きは、銃を前に出す、持ち上げる、手前に引く、という「コの字」や「円運動」にちかくなり、据銃動作が「ただ上げるだけ」ではないので複雑になります。


ガンポジションの銃口の方向をクレーの「飛行線」に合わせるほうが効果が高い

ただ、そもそも「銃を下向きにする回転エネルギー」が初めからなければ、打ち消す必要もないわけで、素直に上げればスムーズに据銃できるはずです。

これを作ることを考えると、そもそものガンポジションの状態で、銃がクレーの飛行線を向いていたらどうでしょうか。銃は「クレーの飛行線」つまりおよそ20メートル先ほどを中心にしての回転運動になるため、回転エネルギーはおよそ1/20になります。そして、据銃が完了した際のエネルギーは、「クレーの飛行線をなぞる」方向にしかかかっていませんから、力を抜くだけで惰性で銃は勝手にクレーの飛行線をたどってくれます。

また、狙い越しさえ合えば、たとえ肩に入っていなくても引き金を引けば当たるはずになります。もちろん現実的には正確に腰撃ちでクレーに当てていくのは難しいですが、据銃を完了しないと「絶対に当たらない」ものだったのが「大まかに当たる方を向いている」というだけでも、結果として「いつ引いても当たる」時間、クレーとの良い関係ををとても長くすることができるわけです。


最善策と練習方法

つまり、最善策は「ガンポジションの銃口の向きをクレーの飛行線に合わせ、頬付より肩付を意識する」ということになります。

ただ、この時に一つ問題が出てきます。それは「据銃をする時の基準がなくなってしまう」というもの。一般的に行われている「照星を動かさないように」して据銃練習をする場合、「照星」が基準になります。「ふらつき」などを見たりもできますし、照星があるところに銃が上がってくるように練習ができるので、うまくできたかできなかったかがわかりやすいわけです。

ただ、ガンポジションで銃の向きを「クレーの飛行線」に合わせると、かなり視界の下の方に照星があり、据銃動作の基準がなくなってしまいます。

なので、練習方法としては、これまで通りまず「照星が動かない据銃」の練習も行い、次にそれと同じ時間くらい、「20メートル先の飛行線」に銃の向きをイメージで合わせ「見ているところに据銃」する練習を行うのがおすすめです。

自分の「目」を基準にするわけです。

これは、初めは苦戦することも多いですが、慣れてくるとある程度見ているところに綺麗に銃が入ってくるようになります。この誤差が大まかにあってきたら、次は目を閉じて据銃し、思ったところに上げられているかを確認する、という練習をするとさらに効果的になります。

これに慣れると、銃がどのような位置からでも思ったところにスパッと据銃ができるようになりますし、多少慌てても銃口が暴れることもなくなりますので、射撃にかなり「余裕」ができ、スコアの底上げができると思います。