【~金子光晴の章~試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より⑨】
本日は、久しぶりに、詩のイベント、詩人の聲に出演します。
新著『十三人の詩徒』(七月堂)出版を記念して、
13人の詩人たちの詩と自作詩を届けます。
19時より、駒込平和教会にてスタートです。
どうぞよろしくお願いいたします。
引き続き、試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より。
本の中から、詩人たちの「ひとひらの姿」をご紹介します。
▶金子光晴(かねこ みつはる/1895~1975)
愛知県海東郡越治村(現津島市)生まれ。
世界放浪と反骨精神、常に「尖ったイメージ」を持つ詩人。
晩年、孫に向けて書かれた『若葉のうた』は、 対極の世界観を現し、
命の華やぎに向けて、素朴な喜びをうたっています。
森の若葉よ 小さなまごむすめ
生れたからはのびずばなるまい
(「森の若葉 序詞」)
一つの新しい命を見つめるまなざしは、無償の愛情を根底に携え、
世界と人間との普遍的な関係性をすくい上げることに成功しています。
愛知県海東郡越治村、大鹿家に生まれた金子は、
実父の事業の失敗から、建築業を営む金子家の養子として、
京都、東京と、住まいを転々とする環境のもとに育ちました。
帰属する温かな故郷を持たない幼少期は、
愛という源を求めて彷徨い続けるアウトサイダーとして、
世界を放浪する精神を自ずと養ったといえるでしょう。
その寄る辺ない淋しさへの不意打ちのように、
孫の若葉は出現し、 金子の心を揺さぶりました。
「その子を抱きあげはしたものの/僕は、そこらをうろつくばかりだ。/世界は こんなにひろいのに/どこにもこの子をおくところがない。」(「ENVOI」)
※引用作品は、金子光晴『金子光晴全集 全15巻』(1976年・中央公論社)より
(写真:9. 金子光晴『金子光晴全集』(1976年・中央公論社)第4巻より)
常に流され、失われゆく人間存在の痛みを充分に知るがゆえに、
目の前に奇跡のように訪れた命にかけがえのない愛おしさを感じ、
その姿を白紙へと刻んだのです。
▶次回は小熊秀雄をご紹介します。
▶試論集『十三人の詩徒』(七月堂)
9月11日より、七月堂古書部で店頭販売が始まりました。
また、HPよりオンラインでご購入頂けます。
▶七月堂HP『十三人の詩徒』ご紹介&販売ページ
新しい読者との出会いを待っています!