【~多田智満子の章~試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より⑪】
試論集『十三人の詩徒』(七月堂)より、
詩人たちのご紹介も11人目。
本日は、詩を書き始めたころからの憧れの詩人、多田智満子。
美しい「ひとひらの姿」をご紹介します。
▶多田智満子(ただ ちまこ/1919~1990)
東京生まれ。詩人、翻訳家、随筆家。
全作品を通して、典雅で美しい、独自の形而上学に貫かれています。
天と地を自在に往還する知の翼は、詩、翻訳、エッセイと
ジャンルを超えて、 生涯揺らぐことなく羽ばたき続けました。
端正なことばの連なりは、古今の人類の歩みを大らかに見つめ、
長い時のスパンを悠々と飛躍して佇んでいます。
すべては流れるといったとき
人はどんな表情をしていたか
エフェソスの河のながれは
江戸川の水につながる
水車はまわり風車はまわり
ひまわりはまわりおえて枯れる
(「パンタ・レイ」)
多田智満子『多田智満子詩集』(1972年・思潮社 現代詩文庫)
(写真:多田智満子『多田智満子詩集』(1972年・思潮社 現代詩文庫)より)
少女期の愛読書は、『平家物語』と『プルターク英雄伝』。
古歌や和漢の故事を織り込んだ謡曲に親しんだ日々は、
多田の流麗な文体を形作る基盤となりました。
多田の詩世界、内宇宙は、常に豊かな生の躍動に満ち、
初期から晩年まで一貫した美学を貫き、決してぶれることがありません。
文学の世界に徹底して遊ぶこと。
ことばを持つ人類が、生を受け、移ろいゆく森羅万象とどう関わり、
何を見つめ、 何を思考し続けてきたか。
文学の仕事の尊さを教えてくれる多田の作品群。
普遍の光には、永遠の叡智(えいち)が宿っているのです。
▶次回は稲葉真弓をご紹介します。
▶試論集『十三人の詩徒』(七月堂)
9月11日より、七月堂古書部で店頭販売が始まりました。
また、HPよりオンラインでご購入頂けます。
▶七月堂HP『十三人の詩徒』ご紹介&販売ページ
新しい読者との出会いを待っています!