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鉄道会社の水害対策について

2021.06.10 08:15

1.はじめに

 みなさんこんにちは。中学3年の**です。気が付けば中学生活も半分以上が過ぎました。さて、今回で私が執筆する研究も3回目です。前々回、前回の2回は路線研究を書いたので今回は抽象的な研究を書いてみようと思います。今回のテーマは「鉄道会社の水害対策について」です。地球温暖化などにより、台風や豪雨などによる洪水や土砂災害、高波などの災害が年々威力を増す今、鉄道会社は利用客や路線、車両や設備などを守るためにどうすればよいのか研究していきたいと思います。相変わらず拙い文章ですが、最後までお読み頂ければ幸いです。

2.鉄道における水害による被害 

 鉄道は毎年台風などによる災害により運転見合わせなどの被害を受けています。2020年に発生した災害だけでも「令和2年7月豪雨」などにより叡山電鉄鞍馬線(一部区間)、JR久大本線(一部区間)、JR肥薩線(一部区間)、くま川鉄道湯前線(全線)が現在も不通となっています。また、JR只見線(一部区間)のように9年以上も災害による不通区間がある路線や、JR日田彦山線(一部区間)のように費用面などから鉄道による復旧が困難で、BRT(※)により復旧する方向で検討されている路線もあります。また、災害による被害を受けているのは路線だけではありません。2019年には、「令和元年東日本台風」によりJR東日本長野新幹線車両センターに大雨で氾濫した千曲川の水が流入し、10編成(E7系8編成、W7系2編成)120両が浸水するという甚大な被害を受けました。浸水した車両は全車廃車となり被害額は約418億円に上りました。

※BRT・・・「バス・ラピッド・トランジット」の略で、連接バスやバス専用道などを組み合わせることによって、通常のバスよりも速達性・定時性を確保し輸送力を増やすことができるバスシステム。

3.課題

(1)台風や豪雨による洪水や高潮

①車両基地の浸水

 長野新幹線車両センターに限らず、鉄道の車両基地には洪水や高潮による浸水のリスクがある低地に建設されたものが多く、浸水対策が課題となっています。次のページの表は、大雨などの際に氾濫した河川の水により浸水するリスクのある車両基地のうち、東京23区内にあるものをまとめたものです。

※…洪水時・高潮時にも浸水が予想される車両基地

()…高潮時に浸水が予想される車両基地

・その他は洪水時に浸水が予想される車両基地

 上の表をご覧になればわかるように、東京23区内だけでも多くの浸水のリスクのある車両基地があることがわかります。万が一これらの車両基地すべてが浸水の被害を受けてしまうと、特に14車両基地中7車両基地が被害を受ける東京メトロと4車両基地中3車両基地が被害を受ける都営地下鉄は大きな被害を受けることになり、東京の地下鉄をはじめ首都圏の鉄道は麻痺してしまうでしょう。また、上の表の車両基地の中には他の私鉄と相互直通運転を行う地下鉄の車両基地も多くあります。するとその車両基地に留置されている、相互直通運転を行う会社の車両が浸水してしまうリスクもあります。先に述べたように、長野新幹線車両センターではJR東日本の車両基地であるにもかかわらずJR西日本のW7系も浸水してしまいました。また、次の表をご覧ください。

 上の表をご覧になればわかるように、主要な新幹線の車両基地も浸水のリスクがあることがわかります。万が一これらの車両基地が被害を受けると、大部分の新幹線車両は水没・浸水し、都市間移動に大きな影響が出てしまい、人の流れが不活発になるため経済にも悪影響が出るでしょう。

②地下線を通じた浸水の広がり

 上の表の車両基地の中には地下にある車両基地もあります。「地下にあれば浸水のリスクはないのではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、駅の出入り口や線路が地上にある部分、換気口などから水が入ってきて浸水してしまうリスクもあります。過去に、実際に下の表のように地下部分が浸水する被害が起こっています。

 万が一地下区間に水が入ってしまうと、そのトンネルを通じて本来浸水リスクのない区間まで広範囲に水が広がってしまうリスクがあります。上の表の御陵駅のケースのように相互直通運転を行う路線も浸水するリスクもあります。さらに、乗り換え駅の通路などを通じてほかの路線にも水が広がってしまうリスクもあります。すると、上の表の御陵駅のケースでは地下鉄が4日間運休しましたが、内閣府の想定によると、最悪の場合、下の表のように東京の地下鉄などの大部分が浸水することが想定されており長期間にわたって不通になってしまう可能性があります。

 これらの路線が全て浸水してしまい、長期間不通になれば東京都心部の交通が麻痺することを意味し、都心部は大混乱に陥ってしまうでしょう。また、先に述べたような地下にある車両基地が浸水してしまえば、さらに復旧は遠のいてしまいます。地下の浸水対策は急務と言えるでしょう。

(2)土砂災害

 鉄道における土砂災害による不通区間は毎年のように発生しています。国土の4分の3を山地が占める日本においては急斜面が多くありその中には土砂災害が発生する危険が高いものも数多くあります。土砂災害による不通区間は私たちの身近な所でも発生しており、例えば京急本線では2012年に追浜駅~京急田浦駅間で発生した土砂崩れによる脱線事故により一時金沢八景駅~逸見駅間で運転を見合わせました。京急本線では1997年にも土砂崩れによる脱線事故が起こっています。列車の運行中に土砂崩れが起こると、乗客や乗務員の安全を脅かしかねません。上にあげた2つの京急本線の土砂崩れのどちらでも負傷者が出ました。そのため対策は急務と思われます。

(3)地方鉄道

 地方部を走る路線の中には、乗客が少ないため経営が苦しく、設備が老朽化するなどして貧弱になっている路線が数多くあります。2020年に「令和2年7月豪雨」などにより不通となった(現在も運休中の区間を含む)23路線中19路線は三大都市圏外を通る路線です。これらの路線では、沿線があまり開発されておらず山が線路ぎりぎりまで迫っているため、台風や豪雨のたびに土砂崩れが発生して不通になったり、川を渡る鉄橋が洪水によって流されたり、沿岸部では高潮の被害を受けたりしています。ですが、水害により長期間不通になってしまうと旅客収入が大幅に減ってしまい、普段から利用客が少ないため苦しい経営状況に拍車をかけることになってしまいます。また、複数回被害を受けたり不通期間が長引いたりしてしまうと、日高本線(一部区間)などのようにその路線が廃止されてしまう可能性もあります。

4.改善策

(1)台風や豪雨による洪水や高潮

①車両基地の浸水

 車両基地のかさ上げなどの対策も考えられますが、すでにある車両基地をかさ上げするのは莫大な費用が掛かり、さらに工事中の車両の留置場所などの問題も発生してしまうためあまり現実的ではないと思います。そこで、私は洪水や高潮などの災害が予想される際には車両を浸水リスクの低い場所に避難させ、駅などに留置するのが良いと思います。例えば、高砂検車区の浸水が想定されている京成電鉄の場合、東京都内の区間は荒川などが氾濫した際に浸水してしまう可能性が高いですが、千葉県内の大部分の区間は浸水のリスクが低いためこの区間に車両を避難させれば浸水するといった被害を防ぐことができます。すべての車両を避難させるのは難しいでしょうが、早めに計画運休するなどして少しでも多くの車両を避難させて被害を最小限に食い止めるべきだと思います。地下鉄の場合は、浸水リスクの低い地域を通る地上区間や地下区間に避難させるのが良いと思います。地下区間に避難させる場合は万が一水が入ってきてしまうと甚大な被害が出てしまうため後に述べるように絶対に水が入ってこないような対策を講じるべきだと思います。これは過去にも行われており、「昭和42年7月豪雨」で東海道新幹線の鳥飼車両基地が浸水した際には基地内の全13編成を基地外に退避させ被害を免れました。また、当時の鳥飼車両基地では他部署と一体となって毎年6月に車両退避訓練が行われていました。このように、普段から訓練などで非常時の対処法を共有・確認しておけばいざという時にも冷静・迅速に対応できると思います。

②地下線を通じた浸水の広がり

 鉄道会社も対策をしています。例えば、東京メトロでは、

(1)止水板(高さ70cm)、防水扉(全断面閉鎖型)の設置(駅出入り口の浸水対策)

(2)換気口に換気口浸水防止機を設置・換気塔の開口部を高い位置に設置

(換気口・換気塔の浸水対策)

(3)防水壁・坑口防水ゲートの設置(坑口の浸水対策)

(4)トンネル防水ゲートの設置(河底からの浸水対策)

を行っています。

 こういった設備をフル活用して地下線内に絶対に水が入り込まないようにするのが大切です。しかし、設備があればそれでよいというわけではありません。例えば、上の表の名古屋市内の地下鉄駅のケースでは止水板を職員が立てようとしたにもかかわらず動かなかったことで冠水しました。原因は床と止水版の間に詰まったり挟まったりした泥や砂利が原因でした。なお、点検が最後に行われたのは1年前でした。せっかく設備があっても、いざという時に仕えなかったら意味がありません。日ごろから定期的に点検し、台風の接近などが予想される際も事前に念入りに点検すべきです。また、トンネル防水ゲートの閉鎖には操作時間のほか列車の運行停止・送電停止・架線処理等、閉扉準備に60分程度必要です。また、止水板を立てたり防水扉を閉めたりするのにも時間がかかりますから早めの決断・行動を心掛けるべきです。

(2)土砂災害

 まず斜面が崩れてこないように対策をするべきだと思います。コンクリートで保護するなどして斜面が崩れてこないようにすべきでしょう。ごくまれですが、雨が降るなどしなくても何の予兆もなしに崩れる場合もあるのでこれが一番効果的です。ただし、崩れる可能性のある斜面すべてにこのようなことをしていると多額の費用が掛かってしまいます。そこで多発している大雨による土砂崩れへの対策としてはハード面だけでなくソフト面での対策も強化するべきです。まず、大雨が降った際は、崩れる可能性のある斜面がある区間は運転見合わせまたは速度制限を行うべきだと思います。高速で走っていると崩れた土砂が線路に流れ込んだ際にブレーキが間に合わず乗り上げて脱線してしまう可能性があります。先述の2012年の事故の際も当該区間で速度制限は行われていませんでした。よって少なくとも速度制限は行うべきです。また、万が一崩れた土砂が線路に流れ込んでいるのを発見した際は直ちに近くを走る列車の乗務員に知らせ当該区間を運転見合わせにすべきです。先述の1997年の事故の際も運転士が防護無線を発報したことによって危険が近くを走る列車の乗務員に伝わり二重事故を免れました。なお現在京急の車両には2100形以降の全車両、また過去の形式の一部車両に「非常ブレーキ動作、パンタグラフ降下、非常信号発報」の3動作を行う「緊急スイッチ」が搭載されています。いざという時のために訓練するなどして連携体制を強化するべきです。

(3)地方鉄道

 地方部の路線の水害対策における最大の壁は経済面です。前述のように地方部の路線において水害による長期不通区間が発生している最大の理由はその路線の乗客が少なく経営状況がよくないため水害対策にお金をかけられないことです。ですから費用の財源を確保することが必要です。まず補助金制度についてです。地方の鉄道会社に対する補助金制度は、国が費用の3分の1以内を補助する「鉄道施設総合安全対策事業費補助」、「地域公共交通確保維持改善事業費補助金」があります。また、JRに対しては鉄道・運輸機構が費用の3分の1から2分の1を補助する「鉄道防災事業費補助」もあります。ですが、これらの補助を利用しても少なくとも費用の2分の1、私鉄は3分の2を鉄道会社が負担しなければならず、これだけでは十分とは言えないと思います。とは言っても、国や鉄道・運輸機構の財源にも限りがあるためこれ以上補助金制度を充実させるのは困難です。そこで私は、経営状況が苦しく災害リスクの大きい地方部の路線では運賃・入場料金にある程度上乗せして水害対策のための費用を積み立てられるようにするべきだと思います。鉄道は公共インフラであるため上限運賃を国に申請しなければならず、「適正な原価」に「適正な利潤」を加えたものにしなければならないためあまり運賃を高くすることはできませんが、地域の足と乗客の安全を守るために利用者に一定の負担を求めることは必要だと思います。

5.まとめ

①車両の浸水を防ぐため豪雨による洪水や高潮が予想される際は浸水リスクの低い区間または地下に車両を避難させる

②様々な部署が一体となって訓練を行い、非常時の対処法を共有・確認する

③早めの決断・行動を心掛け、普段から怠りなく点検をしながら防水設備を活用して地下への水の流入を防ぐ

④崩れる可能性のある斜面は可能な限りコンクリートなどで保護する

⑤大雨などの際は、沿線に崩れる可能性のある斜面がある区間は運転見合わせまたは速度制限を行う

⑥日ごろから連携体制を強化し、危険を察知した場合は直ちに運転を見合わせる

6.おわりに

 さて、いかがでしたでしょうか。路線研究以外の研究を書くのは初めてなので内容の薄い文章となってしまったと思います。後輩も入ってきたというのに情けないですね・・・。これから何回も研究を書くのでそのうちに少しずつ上達していきたいと思います。今回は「鉄道会社の水害対策について」研究しました。今後も台風などによる洪水や豪雨による土砂災害と言った水害が起こることが予想されます。水害によって不通になってしまい最終的に復旧が困難という理由で鉄道としては廃止されてしまった路線もありますがこれ以上このような形で鉄道路線が減っていくのは悲しいです。また、新型コロナウイルスの感染拡大により経営状況が苦しくなっているのに水害による甚大な被害を受ければさらに経営状況が悪くなってしまうでしょう。鉄道会社はあらゆる事態に備えて利用客や路線、車両や設備などを守り抜くための最大限の対策をしてほしいと思います。最後に、このような拙い文章を最後までお読みくださった皆さん、

本当にありがとうございました。

7.参考資料

・国土交通省

http://www.mlit.go.jp

・防災情報のページ - 内閣府

http://www.bousai.go.jp

・東洋経済オンライン

http://www.toyokeizai.net

・IT media ビジネスオンライン:ニュースを考える、ビジネスモデルを知る

http://itmedia.co.jp/business/