年末にお届けしたい「箱」のお話
君は箱を持っている。
君は、そこに何を入れてもいい。
ぼんやり足元を照らすランプや、自由帳に書き込む2Bの鉛筆や、
世界を切り取るカメラや、陽気な音符を浮かべるギターや、
キラキラした飴玉や、宝物みたいな本や、秘密のテストの答案でも、
何を選んで入れるかは、いつも君の自由だ。
君は、それを誰かに見せてもいい。
大切な人はもちろん、今日出会った人にだって。
中に在るものを渡したり分けたりすれば、笑顔や泣き顔は増えるだろう。
孤独な日には整理を始めれば、その中身が自然に君を暖めてくれる。かもしれない。
君は、それをどんな風に飾ってもいい。
光り輝く金銀財宝で囲んでも、
ペタペタお気に入りのシールを貼り付けても、
持ち運びやすいように風呂敷で包んでも、もちろんいい。
蓋なんて開けっ放しの日もあるかもね。
大きくなったり小さくなったりも気分一つだけど、
あんまり慌てて逆さまにして全部こぼしちゃわないようにね。
君は、それについて日々学ぶんだ。
箱の中の合理的な仕分け方や、色の使い方を。
中身の魅力的な説明の仕方や、音や絵に乗せた見せ方や、運び方を。
それぞれの道具の成り立ちや理や、どう使うべきかを。
世界のどこにいても、誰にでも伝えられる術を。
君は、ある日迷うだろう。
雨の朝に、震えた子犬を拾ってその中へ入れるのかどうか。
寒い夜に、賞味期限の切れたアイスをどうするべきか。
同じものはいる?これは似てるから捨てる?ん?そもそも箱って一体何なのか?
誰かに相談をしてもいいけれど、大事なことは、君が決めることだ。
心配する人も、文句を言う人も、関係ないのにあれこれ言ってくる人も居る。
でもね、その箱を持っているのは君。責任も、君が持つべきだ。
同じように、誰かの箱の正解は、その誰かが持っていることに注意をしよう。
君は、気付くこともある。
忘れてしまった大切な何かが、どこかに確かにあったことに。
そして、それがいつの間にかに無くなってしまうことに。
君は、色んな経験をするだろう。
ガサゴソしてたら嫌いなものを触ってしまったり、
奇跡のようなタイミングで紙飛行機がそこへ入ってきたり、
いきなり鉄球を突っ込まれて重くて動けなくなったり、
奥底から出てきた古い日記帳に恥ずかしくなったり、
捨てたはずの写真が元で喧嘩になったり、
ずっとしまっていた指輪がやっと交換できたり、
なんでこんなの買ったんだろうって木刀が二つも出てきたり、
片隅で花が咲いたり、枯れたり、
香水がこぼれてしばらくいい匂いが漂ったり、
ちょうどよく鍵穴と鍵が見つかったり、
いいことも、悪いことも、よくわからないことも、
君は、色んな経験をするはずだ。
君は、箱を持っている。
君は、いつか必ずこの世界にお別れをする。
その最後の日に、その最後の時に、
世界にたったひとつだけのその箱の中を覗いて、
どうか、笑ってサヨナラができるようにしよう。
君のその箱の名前は、人生と言うんだ。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
もしかしたら、向こうにも持っていけるのかもしれないしね。
今年も色んな事がありました。
元気に明るく楽しく今年が過ごせたのも、
皆様のおかげです。
この場を借りて、御礼申し上げます。
本当にありがとうございました!!
良いお年を。