Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

アマデウスの旅15-完成「フィガロの結婚」

2021.06.16 10:57

1786年5月1日、遂にフィガロの結婚がモーツァルト自身の指揮で、ブルク劇場で演奏された。劇場はたいへんな盛り上がりで、アリアにはアンコールがつき、演奏はとても長くなった。しかしわからない観客からのブーイングもあったそうで、新聞も「傑作ながら難しい」と伝えている。

この歌劇は、フィガロの結婚戦略を中心としながら、伯爵と夫人の冷えた夫婦関係、フィガロへの姦計、小姓ケルビーノなどのストーリーが複雑に絡み合って進行していく。その接点で人と人が交われば、そこで複雑な重唱が生まれる。アリア中心からアンサンブルオペラを創作したのである。

さらに、フィガロ達の生き生きとした民衆の音楽と伯爵の貴族の音楽はきちんと描き分けられ、絡み合いながら、フィナーレで融合していく。第4幕は一触即発の場面が、すべて赦しと和解の場面になってゆくのである。アマデウスはいわば立憲君主をこのオペラで表わしたといえるのだ。

アマデウスはもてる力を遺憾なく発揮したが、あれもしたいこれもしたいと、当時としては超前衛的で、筋も音楽も長く、複雑になってわかりにくくなったのも無理はない。しかし現代に至るもこのオペラの生命力は衰えず、オペラそのものの代表となっている。