猫の寄生虫について
子猫や外で暮らしていた猫を新しく家族に迎える場合、ノミやマダニなど体の表面につく寄生虫のほかにも、体内の寄生中にも注意が必要です。
今回はそんな猫の寄生虫についてお話したいと思います。
寄生虫の種類
<内部寄生虫(体内につくもの)>
*猫回虫(ネコカイチュウ)
3~12cm程度の白く細長い虫です。大量に寄生すると、嘔吐や下痢を起こし体力を失います。生後1ヶ月くらいの子猫では、お腹が張る・食欲不振などの症状がでて、重症化することもあります。
便に混ざって排出された卵が、グルーミング(毛づくろい)などで口に入ることで感染します。母猫から子猫へ胎盤感染することも多くあります。また、ネズミや小鳥を捕って食べることで感染することもあります。
*猫鉤虫(ネココウチュウ)
1cm程度の細くて白い虫で、腸に噛みついて血を吸います。また吸血するときに血液が固まらないようにする物質を口から出すので、血を吸い終わったあとも患部から出血が続きます。下痢・血便を引き起こし、多数寄生すると貧血を起こすこともあります。
*瓜実条虫(ウリザネジョウチュウ)
ノミから感染するサナダ虫の仲間です。節が連なったような形態をしていて、頭は小さく、腸にくっついて次々と新しい節が出来ていきます。末端の成熟した節にはたくさんの卵が詰まっていて、卵入りの1cmくらいの白い節がちぎれて便に混ざって出てきます。
卵はノミの幼虫に食べられて、そのまま成長します。猫がグルーミングするときに幼虫入りのノミを飲んでしまうことで猫の体内に入り、寄生します。
通常は寄生しても無症状ですが、多数寄生している場合は食欲不振や下痢、重症になると神経症状などが現れます。また、ちぎれて出てきた節はあたりに散らばり、不衛生です。ノミがいると再び感染してしまうので、瓜実条虫とノミは必ず同時に駆虫します。
*マンソン裂頭条虫
カエルやヘビから感染する長くて平たいサナダ虫の仲間です。瓜実条虫と異なり卵が直接排出されます。通常は寄生しても無症状ですが、重度の感染の場合は、食欲不振・栄養障害・体重減少などの症状が現れることがあります。
*トリコモナス
原虫(単細胞寄生虫)の仲間で、目に見えないほど小さい虫です。通常は無症状ですが、大量に寄生すると下痢・水様便・血便を引き起こします。
*コクシジウム
原虫の仲間で、腸の細胞の中に入り、細胞を壊しながら増殖します。下痢や血便、食欲不振の原因になります。
一度感染すると、なかなか駆虫できません。ごく少数の寄生では何の症状も出ないことがありますが、環境の変化やストレスで爆発的に増殖し、とくに子猫の場合は急速に体力を消耗してしまうこともある恐ろしい寄生虫です。
<外部寄生虫(皮膚に付くもの)>
*シラミ
1~2mmくらいの楕円形の寄生虫です。猫の毛を掻き分けると皮膚にたくさん付いているのを目で確認することができます。
*ノミ
大きさも形もゴマのような黒い虫で、皮膚に付いて血を吸います。吸血の際に痒みをもたらすほか、アレルギーの原因にもなります。ノミアレルギーを発症すると、皮膚の炎症や激しい痒みなどの症状が現れます。
*ヒゼンダニ
目には見えない小さなダニで、皮膚にもぐりこんで疥癬(カイセン)症という皮膚病を引き起こします。耳の縁から顔面に広がるカサブタ病変が特徴的で、痒みが強く出ます。
*ツメダニ
体長は0.2~1.0mmほどの大きさのダニです。寄生すると、寄生した部分からフケや痒み・皮膚炎を起こします。成猫では軽度の症状であることが多く、子猫の場合は重症化する場合があります。
*ミミダニ
耳の中に住んで増殖し、外耳炎を起こすダニです。寄生すると激しい耳の痒みや、黒い耳垢が大量に出てきます。
検査方法
体内に寄生虫がいるかどうかは、主に便検査をすることで判断できます。
便検査には直接便を顕微鏡で検査する「直接法」と、指先程度の量の便を溶液に入れて浮かんできた寄生虫卵を集めて検査する「間接法(浮遊法)」の2つがあります。
寄生虫の種類によってはどちらか一方の検査だけでは発見されないことがあります。
皮膚につく寄生虫の場合、目に見えるものは虫を直接取って、顕微鏡で確認して診断します。目に見えない虫が疑われる場合は毛を抜いたり、フケを集めて皮膚検査を行います。
治療方法
体内の寄生虫に対しては駆虫薬を一定期間投与します。1回で駆虫できるものもありますが、大抵の場合は数回、あるいは何日か継続して投与します。寄生虫の種類や駆虫薬の選定は飼育環境にもよるため、どのような駆虫方法にするかは獣医師と相談してください。
投与後はきちんと駆虫できたかどうか、何度か便検査をして確認したほうがよいでしょう。
全身状態が良いときは駆虫薬を飲ませればすぐに回復しますが、すでに脱水や貧血など重度の症状がある場合は、症状に合わせた治療も同時に行います。状態によっては入院が必要なケースもあります。
皮膚につく寄生虫は、種類に応じて外用薬を使用します。
人への感染
寄生虫の種類によっては、人へも感染します。とくに鉤虫などは経皮感染といって毛穴や小さい傷を入り口にしたり、直接皮膚に穴をあけて体内に侵入するので、下痢便を処理する際にはくれぐれも素手で触らないように注意しましょう。もし触れてしまった場合は、すぐに水道水で洗い流し、石鹸を使って念入りに洗いましょう。多くの寄生虫は、便に含まれた卵などが口から入ることで感染するので、食事の前にはしっかりと手を洗うことが大切です。
皮膚の寄生虫が見つかった場合は、完全に駆虫するまで猫と一緒に寝たり抱っこしたりすることは避けましょう。
このようなことをきちんと守っていれば、猫からの寄生虫感染を過度に怖がる必要はありません。
予防方法
皮膚につく寄生虫は、定期的に外用薬(今はスポット剤が主流)を使用することで防ぐことができます。
感染リスクを減らすためにも、外には出さずに完全室内飼いにしましょう。どうしても猫が外に出てしまう場合は、定期的に便検査をして、早期発見・早期治療を心がけましょう。
今まで猫を飼っている家で新たに猫を飼うときは、皮膚や便に寄生虫がいないかどうかを必ず最初に動物病院で検査してもらい、駆虫が完了するまではほかの猫や動物と接触させないようにしましょう。
まとめ
一言で寄生虫と言っても、種類や寄生した際に起こる症状はさまざまです。むやみに怖がる必要はありませんが、子猫では症状が重くなると体力を失ってしまうこともあります。特に、拾った子猫は何かしらの寄生虫を持っていることがほとんどなので、下痢をしているなど体調が悪いときは動物病院で検査をしてもらいましょう。
多頭飼いをしている場合は、1頭でも感染するとすぐに蔓延してしまいます。もしお家の猫から1頭でも寄生虫を持っている子が見つかったら、必ず全頭同時に駆虫する必要があります。そのため、簡単に予防できるものは普段から予防しておくことが大切です。
寄生虫は意外と私たちの身近なところに潜んでいます。きちんと予防し、寄生虫から愛猫を守りましょう。