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麺や 佐渡友(三苫)

2016.12.21 10:00

 暮れも押し迫った12月17日、三苫の街道沿いにオープンした新店。東京の人間的には三苫という場所が直感的には分からない。そうか、名島や香椎よりも先なのか。街中からだと地下鉄と西鉄を乗り継いで行くか、天神からバス一本でも行ける。ちなみに今回は行きがバス、帰りが電車で訪問してみた。

 こちらはここ数年の福岡ラーメンの新潮流とも言うべき「脱豚骨」の店。白を基調にした明るく清潔感のある外観は、ラーメン店というよりも和食店のような雰囲気。店内はテーブル席がメインで厨房に面する形でカウンターもある。若いご夫婦お二人で営まれているようで、優しい接客が心地よく感じる。オープンしてまだ間もないのに、家族連れの客が多く、地元で認知されているようだ。珍しい店名の「佐渡友」(さどとも)とは、ご主人の苗字そのまま。気になるラーメンは醤油ラーメン一本という潔さ。

 そんなラーメンは、見た目にもスッキリとした色合いの清湯醤油。鶏ガラや野菜をベースにした透明なスープに、魚介系の味わいが優しく広がる。そこに醤油の甘く豊潤な香りと、黒胡椒の風味が加わることで、軽やかなのに物足りなさを感じさせないスープになっている。醤油の色は都内や関東で主流の淡麗醤油系よりもかなり薄め。

 麺は厨房に置かれた製麺機で作る自家製麺。しっかりと茹でられてしなやかな食感の中細ストレート麺は、バリカタ極細の博多ラーメンとは真逆の存在だが、まろやかな味わいのスープとの親和性が高い。なお、博多ラーメンにはよく見られる「替玉」というシステムがこの店にはないので、普段から替玉必須の人は100円増しで大盛を頼むと良いだろう。

  具はしっとり柔らかなチャーシューが二枚と、ネギ、カイワレというシンプルな構成。好意的に捉えれば麺とスープに集中出来る構成と言えそうだが、ビジュアル的にやや寂しさがあることは否めず、ここにメンマなどもう一品何かが乗っていても悪くないかなとは思った。麺のならし方もやや雑に見えるので、具材の選択含めたビジュアル面に関しては再考が必要かも知れない。もちろんこのビジュアルでも問題ないのだが、商品力という意味においては洒脱な店の作りや佇まいと乖離している。この雰囲気の中で出すラーメンにしては寂しい顔をしているのだ。

 醤油ラーメン一本ではメニューにやや物足りなさを感じるのは東京の人間だからだろうか。福岡ではラーメン一本の店は普通にあるし、基本となる醤油らぁ麺のバリエーションとして、スープに背脂を浮かべた「こってり」と、魚介の旨味を増加させた「魚介ガツン」も用意されているので、何度来ても飽きることがない。さらに「かしわおにぎり」や「明太ご飯」などのご飯ものや、「一口焼き餃子」「枝豆」などのサイドメニューもあるので、軽く一杯飲むのにも使えそうだ。

 日本蕎麦やうどんを想起させるような、東京の醤油ラーメンとも異なる新たな形の淡麗系醤油ラーメンの新店。豚骨至上主義の福岡で通用するかどうかが気になるところだが、化学調味料に頼らない誠実な味作りと優しくフレンドリーな接客があれば、間違いなく脱豚骨の新潮流に乗った人気店になっていくことだろう。期待の新店が登場といったところか。


麺や佐渡友
福岡市東区三苫6-13-38
西鉄貝塚線「三苫」駅より徒歩4分