気虚
東洋医学には、気の病というのがあります。
気虚、気滞、気逆という種類があります。 気虚とは気が不足している状態を示しますが、症状としては疲労感や食欲不振、抵抗力の低下を起こすと言われています。
ただ、それは、身体全体としてみた気虚の状態であって、身体の部位としての気虚とは違います。この違いを理解していないとスコープという考え方ができません。
中医学では、主に主訴から状態を決める処方をしていますが、これには大きな疑問があります。それは、診断の決定権は本人の自覚症状に頼るという方法だからです。
例えば食欲は?
という質問をしたとします。本人は今までの自分の尺度によって答えます。「普通です」という答えになったりしますが、その人の普通は平均的とは言えません。つまり他の人との比較はない訳です。
また脂っこいものを食べるともたれますかというような質問に対しても、多く食べれば誰でももたれます。あくまでもその人の基準の範疇でしかないということです。
よく食べる人もあれば、あまり沢山食べない人もいます。自分の基準で普通と答えたり、その逆であったりする訳です。
それを基準にして良いのかどうか疑問が残ります。 また、食欲の変化というような症状は、その場ではわかりませんから、漢方薬を処方しても、答えは次回来るときまでわかりませんし、それも本人の訴えだけが頼りになります。
その答えも嘘をついているかもわかりませんので正しかったかどうかはわかりません。うまい術者は、患者が本当のことを言っているか嘘のことを言っているかがわかるかもわかりませんが、それは経験と勘に頼ることになるでしょう。 つまり、問診も経験と勘に頼らざるをえないと言うことだと思います。
気虚は、疲労感や食欲不振がある場合に判定すると言いますが、気虚が身体のどこにあらわれているかを診断する術は問診だけでは不可能と言えるでしょう。また気虚があるのであれば、必ず気実(気滞)があるはずです。気の不足がある訳ですから、どこかは気が実(停滞)しているはずなのです。そうでなければ身体は崩壊してしまいます。
虚だけ存在し、実はないというのは本来あってはならないことだと思います。その実と虚のどちらを優先すれば良いのか?
という疑問も最終的に残ります。
そう簡単な診断ではないと理解できると思います。