明治時代の吉と𠮷
1.明治時代の文学
『吾輩ハ猫デアル. 上』 夏目漱石 著 明治38年-明治40年(1907年)(国立国会図書館オンライン)
夏目漱石の小説、『吾輩ハ猫デアル. 上』では、『英吉利』(イギリス)は活字で『吉』となっております。
また、本小説にて『吉備團子』や、『長吉』、『英吉利』、『榊原健吉』、『吉野紙』、『吉田虎藏』、『吉原』などの言葉が使われていますが、いずれも活字で『吉』となっております。
『金色夜叉. 前編』 尾崎紅葉 著 明治31年-明治36年(1903年)(国立国会図書館オンライン)
尾崎紅葉の小説、『金色夜叉』では、『英吉利』(イギリス)は活字で『吉』となっております。
また、本小説にて『吉井瀧』や、『吉い事』(いいこと)、『吉き事』(よきこと)などの言葉が使われていますが、いずれも活字で『吉』となっております。
『新編浮雲. 第2編』 二葉亭四迷 著 明治20年-明治24年(1891年)(国立国会図書館オンライン)
二葉亭四迷の小説、『浮雲』では、『不吉』は活字で『吉』となっております。
『小説神髄』 坪内逍遥 著 明治18年4月(1885年)(国立国会図書館オンライン)
坪内逍遥の著書、『小説神髄』では、『住𠮷』は『𠮷』となっております。
『当世書生気質 : 一読三歎. 第1号』 坪内逍遥 (春のやおぼろ) 著 明治18年ー19年(1886年)(国立国会図書館オンライン)
坪内逍遥の著書、『当世書生気質 : 一読三歎. 第1号』では、『𠮷住さん』は『𠮷』となっております。
『自笑文草. 第1編』 正岡常規 著 明治15年(1882年)(国立国会図書館オンライン)
正岡子規(本名:正岡常規)の自筆書、『自笑文草. 第1編』では、『𠮷野紙』、『𠮷野葛』は『𠮷』と手書きで記されております。
『安愚楽鍋 : 牛店雑談 一名・奴論建. 初編』 仮名垣魯文 (野崎文蔵) 著 明治4年ー5年序(1872年)(国立国会図書館オンライン)
仮名垣魯文(かながきろぶん)の著書、『安愚楽鍋』(あぐらなべ)では、『英𠮷利』(いぎりす)は楷書体で『𠮷』となっております。
また、本書では『吉原』という地名の言葉が使われていますが、下図に示しましたとおり、楷書体で『吉』と『𠮷』となっていたり、くずし字で『吉』と『𠮷』となっていたりします。
また、『佐𠮷さん』や『太閤秀𠮷公』は、くずし字で『𠮷』となっておりますが、『于時明治第五年壬申ノ孟春吉旦』は、楷書体で『吉』となっております。
明治4年ー5年に刊行された仮名垣魯文の著書、『安愚楽鍋』では、楷書体の『吉』と『𠮷』、くずし字の『吉』と『𠮷』が、ある意味で“自由”に使われていたのですね。
はじめまして、作家の水瀬希星です。
この度、楽天ブックス様の電子書籍より、吉の字の歴史をテーマにした本、『吉を辿る物語 上』を上梓させていただきました。
吉と𠮷とは? 吉と𠮷の歴史とは? など、について100以上の古書や古文書(明治時代の小学読本や源氏物語や東海道五拾三次や膝栗毛や関ヶ原合戦絵巻など)に記された吉と𠮷の字をめぐる本になっております。
主人公は、17歳の男子高校生二人で、歴史上の様々な吉と𠮷について触れていく冒険読本です。
『吉を辿る物語 上』では、昭和時代から戦国時代までの吉と𠮷の歴史を、愛でていただけます。
(下巻は、日本の室町時代から古墳時代まで、そして古代中国を予定しております。)
吉と𠮷の歴史につきまして、ご興味がございましたら、ぜひ御手にとって、近代、近世、中世の吉と𠮷をご鑑賞して愛でて頂ければ、この上ない幸せです。
どうぞ宜しく御願いいたします。
令和三年、夏、葵月
水瀬希星
吉を辿る物語 上 [電子書籍版]