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鼻血濁点々

過去の話[天籟]

2017.01.07 05:34

彼の場合は、人間時代は女性として過ごした。


中国の中の小さな勢力であった、宗教団体の信仰対象になっていた。

物心がつく頃には既に村の神とされ、大勢の信者が居たことを憶えてる。


その団体の教えでは、「神の身体を喰らうことで、人間という卑しい生き物は生き永らえることができる」とあった。


彼らの神になる天籟は、当時13歳。

一か月ごとに身体の部分を切断されながら、暮らしていた。

不思議なことに、彼の自然治癒力は人間とは思えない程に強く、回復の速さは凄まじかった。

しかし、それは彼にとってはこれから一生、信者という狂った人間共に喰われ続けるという、地獄を作り上げる要因にすぎなかった。


成長しては切られ、喰われる日々。

豪奢だが少し狭い一人用の部屋に閉じ込められ、外に出ることは許されない。

気持ち悪い笑みを浮かべて触ってくる教祖が不快でたまらない。

肉体的にも精神的にも、圧し潰されていた。


幼い頃から身体を切断されていた所為で、彼の体の成長はとても遅かった。

年齢と外見が釣り合わなくなり、40を過ぎても20歳頃の姿のままだった。


幼い頃からずっと纏足にされていたため、それは後遺症となり彼は歩けなくなった。



心が休まるのは、本を読んでいるときだけだった。

小説や図鑑、辞書や教科書、魔導書なども読んだ。


このとき、『外の世界』…つまり3番街の外にもこことは違うものがあるというのを知り、

裏世界管理人として目覚める。

彼は外に出ていないのに関わらず目覚めたということで、特殊な管理人とされている。

人間時代から継続して生きることができたため、魂はそのまま、器は成長し、折り返しで退化していくという、いわば『輪廻』のように生きることになった。



喰われ続け監禁され続けの地獄の日々に、

ついに耐えられなくなった天籟は暴走し、人喰い鬼となり全ての信者達を喰い殺した。

団体を潰すと、我が子を抱えて【外の世界】へ逃げた。


自分を嘲り慰み者にした教祖は喰わず、皮を剥いで晒した。

あいつだけは、気持ち悪くて喰う気にはなれなかった。