ジュリエット、恐るべし その4
2021.06.19 23:45
ある夏の夜。
夕方から激しい雨が降り、雷が鳴り響いていた。
雷もうるさかったが、もっとうるさいのがおっさんの声だった。
「ジュリエット! どこだ! どこにいるんだ!」
どうやら、雷に怯えたジュリエットが脱走したらしい。
見た目は猛獣そのものの大型犬、ジュリエット。
しかし、身体のサイズと裏腹にものすごく気が小さい。
困ったものだ。
ジュリエットのいる庭は一応、金網などで囲われている。
でも、その気になればどこからでも抜けられるだろう。
そうとは感じていたが、脱走が現実に起こるとなると怖すぎる。
翌朝、また大音量に起こされて、こちらの睡眠はにわかに終了。
どうやら豪雨は明け方までにすっかり止んだらしい。
大音量はおっさんの声だ。
雷に怯えて脱走したジュリエットが戻ってきたらしい。
こちらも様子が気になって、窓のカーテンの隙間から覗いてみる。
すると、目に飛び込んできたのは恐ろしい光景。
ジュリエットは仰向けに地面に横たわっている。
その上のおっさんが馬乗りになっている。
そして、ジュリエットの顔を何発も殴っている。
「ジュリエット!お前ってやつは!」
「ここを出て、一体どこに行きたかったんだ!」
ボコボコにする。
そんな表現を時々聞く。
でも、それが実際にどういうことなのか見たことがなかった。
いま、ボコボコにする、という場面を初めて見てしまった。
見た目は大型猛獣のジュリエット。
しかし、おっさんの前ではまるで毛を刈られるときの羊。
雷はさぞ怖かっただろう。
そして、今、それよりもっと強い恐怖を味わっているのだろう。
ジュリエットの気持ちを想像せずにはいられなかった。