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#野口悠紀雄 #Diem #中央銀行デジタル通貨 革命

2021.06.20 10:06

「フィンテックジャーナル」様より

シェア、掲載。


ありがとうございます。

感謝です。


ディエム(Diem)や中央銀行デジタル通貨は「マネーの世界を根底から変える」


連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質


2021/03/11


国際的な送金の仕組みは古くて効率が悪く、コストが高い。これが、労働力の国際的流動化を阻む大きな原因となっている。電子マネーは、銀行預金に立脚する仕組みなので、国際送金には使えない。ビットコインなどの仮想通貨は、国境を簡単に越えることができる。しかし、価格変動が激しいので、送金用に広く使われるようにはなっていない。フェイスブックが計画する「ディエム(Diem)」や、中央銀行が発行するデジタル通貨は、原理的には世界通貨となりうる。2021年には、このいずれもが現実に発行される可能性がある。


<目次>


デジタル移民を阻むもう一つの壁:送金のコスト

古くてコストが高い国際送金システム

電子マネーは国境を越えられない

仮想通貨は、簡単に国境を越える

「ディエム」発行が間近か?


デジタル移民を阻むもう一つの壁:送金のコスト


 日本でDXを進めるにあたって、ITの専門家がネックになると言われている。その解決のために国際的なアウトソーシングが利用される可能性が高い。そこで問題となるのが、国境を越えて報酬を支払う場合の送金コストだ。


 前回述べた「アップワーク」などのマッチングサイトを通じるアウトソーシングは、単発的な仕事が多い。こうした仕事を時々海外に発注するのであれば、送金コストはあまり大きな問題にはならないかもしれない。


 逆に、コールセンターを外国に移すような場合には、現地法人が給与を支払えばよいから、いちいち本国から送金する必要はないだろう。


 しかし、その中間的な場合、つまり恒常的な雇用関係にあるスタッフが海外のさまざまな場所に点在するというような場合には、つまり在宅勤務の国際化(デジタル移民)の場合には、それらの人々に国際送金して給与を支払う必要があり、送金コストが大きな問題となる。


古くてコストが高い国際送金システム


 ところが、現在の国際送金は、古いシステムだ。


 ここで詳しく述べる余裕がないが、送り手から受け手の間に、直接取引する銀行以外に「コルレス銀行」というものが介在し、外貨への交換や流動性の確保などを行っている。このため、事務処理に時間がかかり、コストが高くなっている。また、為替レートが利用者に不利に設定されていることに伴うコストもある。


 マネーが国境を越えるのは、意外に難しい。マネーは、国際化が最も遅れた分野なのである。送金のコストが高くなってしまっては、安い労働力を使うという利点が損なわれてしまう。国際間のデジタル移民が進まない大きな理由がここにある。


 「アップワーク」の場合には、支払いにはPayPalとクレジットカードや銀行振り込みなどが使われている。PayPalは、クレジットカードを用いて行う送金だが、送金者と受領者の間にPayPalが入って仲介するため、送金相手にクレジットカード番号や口座番号を知らせる必要がない。このため、安全な仕組みだとされている。


 PayPalは日本ではそれほど広く使われていないが、米国では、ECサイトやWebサービスでの決済のために、広範に使われている。ただし、クレジットカードの仕組みは、もともとコストが高い。日本で報酬を受け取る手段としては銀行振り込みが推奨されているが、これは、上記のように時間がかかるし、コストも高い。


電子マネーは国境を越えられない


 では、電子マネーを国際送金に使えないのか。中国で広く使われているAliPayや、スウェーデンのSwishなどのようなもので、日本にもQRコード決済の電子マネーが多数ある。スイカなどの交通系カードやコンビニのカードなども電子マネーだ。


電子マネーは、基本的には銀行預金を前提にした仕組みである。銀行預金から電子マネーのワレット(電子財布)にチャージ(入金)する。それをQRコードのやり取り等で受取者に支払う。すると受取者の銀行預金が増える。口座振替と同じようなことを、もっと簡単にできるようにしたものだといってもよい。


 だから、AliPayで支払いするには、中国の銀行に預金口座がなくてはならない。AliPayが日本でさほど普及していないのは、そのためだ。このように、電子マネーは国境を越えることができない。電子マネーが広く使われるようになっても、国際的なマネーの仕組みには、ほとんど影響を与えていないのはこういった事情からである。


仮想通貨は、簡単に国境を越える


 インターネットによって情報を送ることは、世界的な規模でほとんどゼロのコストでできるようになった。これが社会を大きく変えた。しかし、前述のように、マネーをインターネット経由で、低いコストで送ることはできなかったのである。


 ところが、電子マネーとはまったく違う仕組みのマネーが現れた。それが仮想通貨(暗号資産)だ。ブロックチェーンという仕組みを用いることによって、経済的な価値をインターネットを通じて送れるようになったのだ。


 これは、銀行システムとはまったく無関係に発行される。そして、受取者はそれをさらに支払いに使うことができる。つまり、転々流通する。初期に登場したのが、ビットコインだ。ビットコインには国籍がない。というより、もともと国という概念がない。相手が受け入れればどこでも使える。これは従来のマネー(中央銀行券や銀行預金)を代替し、理想的な世界通貨になる可能性があると考えられた。


 しかし、価格変動(ボラティリティ)が大きいため、残念なことに、この役目を果たせなかった。資産としては使われているが、支払手段として広く使われることはなかった。


 この状況が、ここにきて大きく変化し始めた。たとえばPayPalは、昨年の秋、暗号資産での取引を開始すると発表した。PayPalが介在することによって価格変動の問題が解決できれば、国際送金の仕組みは大きく変わる可能性がある。ビットコインの価格が今年になって大幅に上昇したのは、PayPalの決定があったからではないかと言われている。


「ディエム」発行が間近か?


 ただ、PayPalの新事業は、序章に過ぎない。本格的な変化は、次の2つによって引き起こされるだろう。


 第1は、フェイスブックが発行を計画しているディエム(旧リブラ)だ。


 これは、ブロックチェーンによって運営され、転々流通するという意味で、ビットコインと同じ性質を持っている。そして、PayPalや電子マネーとは本質的に違う。ディエムは、ビットコインと違って、現実通貨との交換比率をほぼ固定する。そのため、支払い手段として広く使われるようになる可能性がある。もしそうなれば、マネーの世界を大きく変えることになる。


 ディエムの前身であるリブラの構想が発表されたとき、各国の金融当局は、こぞって反対し、封じ込めようとした。中央銀行を頂点とするこれまでの金融体制が、リブラによって根底から覆されてしまう可能性があるからだ。リブラの構想は若干改定されて「ディエム」となった。今年中に発行されるのではないかと思われる。


 第2は、CBDC(Central Bank Digital Currency)だ。これは、中央銀行が発行するデジタル通貨である。さまざまな国で発行のための準備や研究が行われているが、特に先行しているのが、中国とスウェーデンだ。どちらも、実証実験をすでに行っている。中国のCBDCである「デジタル人民元」は、2022年の北京オリンピックまでには発行されると見られる。


 ディエムやデジタル人民元がどのような仕様のものになるのか、今のところはっきりしたことは分からない。しかし、どちらも技術的な観点だけから言えば、ビットコインと同じく、世界中のどこでも使えるはずだ。


 ただし、各国の通貨当局がそれに対してどのような規制をするかが、現時点でははっきりしない。もし世界通貨として自由に使えるようになれば、国際間の送金は極めて簡単に安いコストでできるようになる。


 それは、さまざまな経済活動に大きな影響を与えるが、デジタル移民をめぐる基本的な条件も大きく変わることになるだろう。アップワークのような単発的な仕事だけでなく、恒常的な雇用関係を伴う国際的なアウトソーシングが飛躍的に増大するだろう。