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「四半農工漁X」動画と小値賀小中高一貫教育について

2021.06.22 01:12

さて、質疑応答動画はこちらになります。このあと、いろいろなコメントなどいただいております。


そして、「小中高一貫教育」についてはそれほど専門的に調べていなかったので、関連論文をあたってみました。どうも小中高一貫教育は、私立系列や国立大付属校のような都会の中のひとつの選択肢として評価するようなものが多いですね。数学や理科などの教科関係から小中高一貫のカリキュラム展開を言うものが多い。

そして、探す中に、まさに小値賀の北松西高校をとりあげた論文がありました。なんと。そして、その驚くべき内容が。

岡幸江. "小値賀町にみる, 地域課題としての学校: 島の小中高一貫教育と, 高校生へのヒヤリング調査から." (2016): 79-85.

こちらから本文pdfをダウンロードできます。小値賀の教育に関心ある方は是非。

実際の北松西高校生および関係者にヒアリングして、小中一貫教育について考察されています。ちょっと引用してみます。

「小値賀町は、離島のなかでも官民一体となってまちづくりにとりくんでいる先進地域であり、われわれはそうした後姿が生徒たちの意識に多少は影響を与えていることを想定していた。しかし予想に反して、教育段階を終えてこの島で働き生きていく、という選択肢を述べた生徒はわずか2名であった。(中略)一方大多数を占めたのは、「退職後になって戻りたい」という意見である。」

「しかしあくまで島は「働くところ」ではなく「ゆっくり暮らすところ」と枠づけている生徒がほとんどである。「働くところ(理想の仕事)」と「暮らすところ(理想の暮らし)」を別物と考えている、ということもできるだろう。少なくとも、島にいて、理想の仕事ができると考えている生徒は一人もいなかったのが印象的だった。したがって、進路志望の選択肢には「公務員就職」の項も設けていたが、これに回答する生徒はいなかった。」

「生徒たちからきいたほかの話と関連付けて考えられるのは、島で働くという選択肢を、無意識のうちに排除せざるをえない環境があるのではないか、ということである。」

小値賀の良いところは、自然が多く、人がやさしい、といった言説は共有化され、そこだけが語られる。小値賀の教育としてもそこが語られるが、一方どういった人材を育てあげるのかという点は同様のトーンで漠然であることが如実にあらわれている。そして、今回のわたしの一般質問の答弁相手である教育長自身もこう述べたとある。

「行政職として、観光協会再編・官民一体の「島の自然学校」たちあげ・アイランドツーリズムの端緒となったザルツブルグ音楽祭など、若いころから島おこしを牽引してきた吉元教育長は、「次に小値賀を担う人材を育てる、という意味で、本当に小中高一貫教育は機能しているのだろうか」と自問する。」

えー。おいおい。ある意味率直な方なのだろうなとも思うが。

「今回の高校生たちへの調査結果概要を聞いた教育長は、「高校生なりに葛藤がある中で、進路を決めているのだなと感じました。子どもたちに求める前に、まず我々大人が変わる必要があったのですね。」と語る。と同時に、「大きな視野で考えると日本のためになる若者を育てていることには変わりがありませんが、小値賀の後継者づくりが進まないことは大きな反省点だと考えます。」ともいう。」

で、反省してどうなったのだろうか。このヒアリングが2016年であるから、5年前だけれどなあ。そして、こう論じている。

「先の高校生の、「仕事の場としての島外」と「豊かな暮らしの場としての島」を分断してとらえている意識からすると、島は仕事の場にはなりえない。確かに、小中高校の教育段階における改善は必要だろう。島には移住者も多く、島を活かした全国的にも先進的な事業が動いている。「島の仕事の現在」はどうなのか。内外出身者の多様な生きざまや仕事に触れ、彼らの葛藤を自分のものとして、島と自分の未来を考える教育を学校教育―地域の社会教育をまたいで展開されることを期待したい。生徒の視野を広げさせたいという高校側の思いも、単に本土への視野にとどまらず、見ているようで見えていない島の現実への視野のひろがりとあわせて展開していくことが必要だろう。しかし教育による子どもたちの認識と意識の転換で、ことはすむのか。先にみたようにより本質的には、子どもたちの背後にいる保護者も含む地域の大人たちの意識の問題がある。」

ですよね。地域側の本気度が試されていると思います。

だからこその「四半農工漁X」がひとつのコンセプトになりえると思うのだけれどなあ。これでいけば、「小中高一貫教育」と「ふるさと留学」の関係もスムーズになるし、島の現実と住むということがつながっていく。都市の暮らしの問題点や働くということ、住むということ、生きるということをしっかり12年間で学んで体得していくことで、「生きのびる力」を得ることができ、自信をもって島を出て、島に自信をもって帰ってくるだろう。「老後の島」ではなくて、島で生きたい、島のために生きたいと思える学びの場へ。島の現実と向き合うことで学びの場になりえるのだ。