送り手のタイミング(キャンペーン)から受け手のタイミング(通期PDCA運用)へ
少し前に「フロー型」から「ストック型」へというフレーズが流行った。これは特にオウンドメディア開発に注力をおくという意味合いが大きかった。キャンペーン型で短期にピークをつくるがすぐに減衰してしまうキャンペーンモデルだけでなく、ベースラインを徐々に上げて、キャンペーンによる効果も実施前の水準にまで落ちることなく蓄積していこうという考え方だ。
そして、この考え方をもっと進めると、ペイド施策も含め、キャンペーンという企業側(送り手)のタイミングでコミュニケーションするだけではなく、個々の消費者のタイミングでコミュニケーションする通期運用型にマーケティングコストがシフトすることが必然となる。
従来は個々の消費者の関心が顕在化するタイミングなどは把握しようもないので、主にシーズナリティをベースに、また主な購買機会を演出してキャンペーン期間を設定し、マーケティング予算をほとんどそこで使ってしまうパターンであった。しかし今は様々なデータから個々の消費者の購買の兆しを推し量ることも可能になってきた。DMP活用による個客分析は購買意向のタイミングをキャッチすることも重要な役割になるだろう。
例えば、ビデオカメラのキャンペーンは従来、卒業式入学式シーズンと秋の運動会シーズであったが、昨今運動会も初夏にやる学校が増えて、キャンペーンチャンスも年一回(3月メイン)になったりしている。この時期は広告需要も最も多いので、入札型広告ひとつとっても広告価格が上昇する時期である。
そして、そもそもビデオカメラとかムービーカメラといったワードの検索数は1年中ほぼ変わらない。企業マーケターなら自分の商品カテゴリーや自社ブランドの検索数の年間推移を見たことがないという人はいないと思うが、これがほぼ消費者の関心量という需要と解釈していい。となると、マーケティング予算を広告価格の上昇する時期に全部寄せるのではなく、通期型で個々の消費者側の関心のタイミングにカウンターでコミュニケーションすることも織り交ぜたほうがいい。入札型広告も通年運用すれば、広告需要期だけより同じパフォーマンスを半分以下のコストで買い付けることも可能だろう。単純に言えば、2割を通期にシフトさせて、それを半分のコストで運用すれば全体は1割コストダウンできる。(パフォーマンスを落とさずコストコンシャスにするにはそんなに簡単ではないので、高度なコンサルが必要だ。)
もちろんシーズナリティなどタイミングでの訴求も、関心が顕在化していない消費者に需要を想起させる効果がある訳で、また流通施策(棚を用意する)のためには絶対に必要である。ただ、関心が顕在化していない人への想起を促すことも必要だが、関心が顕在化した人へのナイスタイミング訴求のほうが購買につながりやすいだろう。(もちろん短期的な刈り取り発想だけでなだめで、マーケティングの時間軸を中長期で設定しての最適化発想は大事だ。)
で、もうひとつの通期型運用のメリットは、ダッシュボードで自社ブランドのKPIをリアルタイムで補足しながら即時に手が打てることだ。もし競合ブランドが不意をついてキャンペーンを仕掛けてきたり、思いのほか大量投下してきたりして、対抗策を講じなければならない時、従来マスメディアだけだと少なくても30日程度実施までかかってしまう。その間何も手を打てないと競合ブランドとのマインドシェア競争で後手を踏むことになりかねない。マーケティングダッシュボードを装備して、自社のブランドのKPIの一定の閾値を割ったらすぐに打ち手を発動して、(入札型ネット広告でもそれなりの対抗策になる)奪われるコミュニケーション資産を最小限に食い止めることほうが、結局のところマーケティングコストが少なくて済む。いったんやられてしまってから元に戻すコストは高くつくからだ。
つまり、一定の閾値を維持すべく、かつ個々の消費者のタイミングに合わせて通年運用する広告活動をキャンペーン型に組み合わせるべきなのである。
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