旅のチカラ、旅のカケラ

用意された「感動」

2008.03.16 09:50


ここはタイのメーホーンソーン。

かの有名な首長族「パダウン・カレン族」が住む、

ナイソイ村にほど近い。

だから、街からは多くのツアーが出ている。

そんなツアーに参加してみた。


車に揺られること約1時間、目指す村が見えてきた。

道は舗装されておらず、身体が左右に大きく振られる。

砂煙を巻き上げ、車が停まった。


ここかぁ。


静かな山間の集落、木の葉が舞うように、

無数の蝶が飛んでいた。


桃源郷?

そんな言葉が似合うかもね。


入村料250バーツを払い、村へと足を踏み入れる。

竹を編んだような家、屋根はかやぶき。

軒先には、首に金色のコイルを巻いた女性たち。

そう、パダウン・カレン族だ。


タイにいるパダウン・カレン族は

20年前にミャンマーからタイに逃げてきた難民で

現在は200人ほど住んでいるとか。

彼女らは先祖が竜だったと信じていて、

満月の水曜日に生まれた女の子は「竜のお嬢さん」だといって

首を長くする習慣があるそうだ。


のんびりと機を折り、編み物をする彼女ら。

写真にも気軽に応じてくれる。

どの家も土産屋を兼ねていて、

この村の収入源はほとんど観光料で賄われている。


村の奥へと進むと、耳たぶに大きなピアスをしたカヨー族や、

膝に黒い布を巻いたカヤー族も住んでいた。



わざわざこんな辺境の地に、入場料を払って見に来る自分と、

生活を見せる事で生計をたてている彼女たち。

なんとも複雑な気持ちになった。

彼女らに会うのは憧れだったけど、

しっかりと用意された「感動」に、少し冷めてしまうのは、

単なるわがままだろうか。


幾多の観光客の目にさらせれ、写真を撮られ続ける生活。

伝統を守るためか、収入を得るためか、

そんな葛藤を抱えながら生きていく。


「辛いでしょ?」

「うん」


そう、頷きたいのかもしれない。

首に巻いたコイルさえ邪魔しなければ…。