旅のチカラ、旅のカケラ

もう1つの赤い橋

2008.03.19 12:30


タイで過ごす最後の日。

メコン川を隔ててラオス国境と接するノーンカーイという街にいる。

ここはタイ東北部の主要都市の一つで、

ラオスとの国境の町として知られる。

そう、ラオスの首都ビエンチャンはもう目と鼻の先だ。


午前9時、ようやくゲストハウスのベッドに辿り着いた。

ひどく蒸し暑い部屋で顔をしかめながら眠った。

そして午後、あまりの暑さに耐えかねシャワーへ。

そのままカメラ片手に街へ飛び出し、

タイ、ラオス、ベトナムの雑貨が入り混じった市場を練り歩いた。

夕暮れを待って、トゥクトゥクで向かった先は、

「タイ・ラオス友好橋」

メコン川を隔てて国境を接する両国を結ぶ橋だ。

途中までは歩いて渡れるため、

わき道から橋へと上り、まっすぐに伸びる橋を歩く。

ラオスへと向かう車、タイへと向かう車が交差する。


メコン川のちょうど真ん中、

おそらくここが両国の国境だろう位置に立った。

目に飛び込んできたのは、両国の間に沈む夕日。

川面を照らしながら、

もう1本の“赤い橋”を作り上げていた。




あぁぁ…すごっ、、


声にならない声。心のため息。

同じ夕日でも、見る場所によって印象がかわるものだ。

24時間のうち、わずかな時間だけ世界が赤く染まる。


忘れ物をとりに戻った教室でこんな夕日を見たっけ?

パソコンを閉じ、会社を一歩出ると世界が違って見えたっけ?

電車の窓から、遠くの茜空を眺めたっけ?

いつか見ただろう夕日を思い返しながら異国の空、

国境の真ん中で、アジアの時間が止まった。

この先、どれだけの夕日を見るだろう?

あたりまえにあるくせに、ときどきこうやって心と時間を奪う。


最近、夕日を見ましたか?


その手を休めて、窓を見て欲しい。

どんな色の空がそこから見えますか?