第五次小値賀町総合計画策定に向けて×企画書の描き方
ということで、次期総合計画が小値賀の未来の鍵を握りそうです。とはいえ、現行の第四次総合計画が令和5年年度末までなので、あと2年半しかありません。2年前の一般質問では、5年かけて策定すべき、しましょうと質問したのですが、その後動いている様子はなさそうです。だいぶロスしています(T-T)。であれば、これからするとして何ができるでしょう。ちょっとここでは、パタン・ランゲージは置いておきます。あまりにも違うので(とはいえ、建築家設計へのアンチテーゼなのだが)。
第四次総合計画のときには、小値賀町議会が議会独自の総合計画も作成し、行政版との対比比較をしています。町長もこのことを答弁していました。で、私はもちろんいなかったので、どんなものなのかを探すと実物がありました。で、読んでみました。
少人数ではありますが、有志の町民と全議員が参加してつくりあげて冊子とされています。なかなかおもしろい内容で、ほーと思う提案もありました。また、「計画づくりは素人なのでご容赦を」ともありますが、先駆的な取組だろうと思います。実際、マニフェストなんとか賞をもらっていたと思います。
さて、行政計画を批判する言語として「総花的」という表現がよく使われます。あれもこれも持ち込んでしまって、膨大なものになるという感じです。環境基本計画や自転車活用推進計画などは、アウトカム評価が明確なものがあり、二酸化炭素排出量であったり、自転車分担率といってものが指標になりえます。が、総合計画はそういった目標値が設定しにくいのです。「安全安心なまちづくり」といったところで、目標値が何になるのかあいまいです。事故件数や犯罪件数があがりますが、それは氷山の一角の指標です。小値賀でいえば、人口(減少率)になるのかなとは思いますが、けっこうそれは最終目的値であって、あれこれ施策の結果として数十年先に見えてくるものでもあるので、値を設定しにくい。目標値が設定しにくいということは、あれもこれもという計画施策をどうしぼっていくのかという優先順位や取捨選択が効きにくいと言うことです。もちろん、財政的な裏づけや人的資源の限界などもあって、すべてはできないのだけれど、そこはブレーキが効きにくい。IRや大きな箱物なんかはまあブレーキがきくけれど、小値賀ではそれはもうありえないかと。
小値賀町議会が作成した総合計画も、あれもこれもとアイデアを入れ込んだ感じではあります。アイデア案の取捨選択が難しかったのではないかとも思います。
何を言いたいかというと、表面に出てきた各施策を論じても実はあまり意味がなくて、その各施策を生み出すべき中心部の考え方/コアをしっかりさせることです。
「中心部の考え方」とはむずかしい概念ですが、ちょっと話題を変えると、大学の授業で「社会システム分析設計演習」というものをしていて、これは企画書の書き方をじっくり実践的に教えるというものでした(2回生用/別途カリキュラムは紹介予定)。各自が対象施設を選んで、その分析からどういったものが課題問題であって、ではそれをどう変えたコアをつくって、企画書にするかということを、発想法、図解法、システム化法、ものがたり法などを組み合わせて演習的に教えたものです。たとえば、下記事例はJR彦根駅の分析図と設計図で、殺風景な彦根駅をアットホームにすると言う企画案です(設計を先にしています)。
で、こういう駅をどうするかという企画では、すぐにライトアップとかイベントといった案が出るのですが、企画で大事なのは「いったい誰がどういう仕組みでするのか」です。この場合は近隣高校と大学、商店街との関係をもちこんで持続的なものになるように企画しています。派手な企画案を出すことよりも、もっとぐっとこらえて地味にでも誰がそれを支えられるかを考えるのです。「何をするか」よりも「誰がどうするか」です。コンビニや商店の企画でも、実は何をするかよりも、アルバイトの募集や育成方法、地域団体との関係などがミソであり、学生にもそのあたりを厳しくつっこんでいきます。「それって持続性ある?」「一回キリで終わらない?」「次の企画も出るようになっているかな?」と。
さて、総合計画に戻りましょう。
つまり、その計画は「誰が」「どのような仕組みで」実行していくのか、「修正改善し、次を発想する仕組みがあるか」です。これが「中心部の考え方」なのです。
では、こういった運動態のようなかたちが行政計画でできるのか、というものですが、いくつか事例はあります。先の論文で紹介した「沖島21世紀プラン」もそうだし、書き換えていく「未来予想絵図」も表層だけれど作成プロセスとその後の書き換えにその可能性はあります。そして環境基本計画では、個別施策を体系化することをやめて、すべてプロジェクトとしたところもあります(野洲市)。つまり、参画した市民で考えたプロジェクトを協働で実施しましょう、でも毎年見直して、次なるプロジェクトを考えていきましょうというものです。プロジェクト群なのです。これは、参加協働という動きそのものをもっとも重要視したものであると言えます。
小値賀は幸いにも小さなまちです。計画づくりではこれが最大の利点であると思います。通常は身近な参加意識がうまれないため、小学校区程度にわけて考えるものであって、地域間行政がやや難しいこともあるのだけれど、小値賀は一体として考えることができそうです。二次離島はどうかなあ。地区計画ぐらいの範囲が町総合計画というものになるので、行政パワーが面的に分断されない。
さて、今考えるわたしが夢想する次期総合計画のおだいもく(コア)は下記です。ま、どんどんと変わるけれど、今おもいついたものはこれですかねー。
1.理想へチャレンジし続ける島へ
2.次世代に誇ることができる島へ
3.身軽に柔軟に誰もがかかわる島へ
ちなみに、現状の総合計画は
「美しい海のまち」
「活き活きとした産業のまち」
「ふれあいとやすらぎのまち」
です。そして、小値賀町議会がつくったものは下記です。
「1 新しい産業の創出と経済構造転換」
「2 新たな価値観に基づく生活環境づくり」
「3 世界に一つしかない島づくり」
つまり、私が思う行政計画の最大のコアは、「推進体制」なのだけれど、どんな計画でも計画末尾にちょっとそれっぽい図がついているだけで、どれもがPDCAサイクルで~と言っているだけである。それでは、計画は行政職員しかかかわらない。策定に参加した市民もすぐ忘れてしまう。
あ、そういえば、「ほう・れん・そう」じゃなくて「み・つ・ば」がまちづくりでは大事であるという講演をよくしていたので、それもまた別途ご紹介していくかなあ。