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僕らの気になるパイセンたち | トミー・ゲレロ(スケートボーダー/ミュージシャン)

2017.01.16 10:00

やりたいことはたくさんあるし、自分が好きなものもだいぶ分かってきたミレニアル世代の僕たち。でも理想の将来像となると、まだまだ知りたいことだらけだ。そこでSILLYでは、僕らから見てクールな生き方をしている先輩たちに、人生について聞いてみることにした。


今回登場するのは、サンフランシスコ出身のカリスマスケートボーダーにして、ミュージシャンとしても活躍するトミー・ゲレロ。先日ジャパンツアーのために来日したゲレロ氏は、めちゃくちゃかっこいいけど気さくで、常にユーモアを忘れない、まさに理想のパイセンだった。


—プロのスケートボーダー、そしてミュージシャンとして活動されていますが、スケートボードと音楽はいつ始めたのですか?


トミー・ゲレロ(以下、TG) スケートは1975年、音楽は1979年〜80年に始めたんだ(※1966年生まれ)。


—日本にはトミーさんに憧れているキッズがたくさんいて、まさに理想の先輩というイメージです。人生の先輩として、SILLYの読者たちに大人になるまでにやっておくべきことを教えてください。


TG 若さを楽しむこと。それに、できる限り無責任でいること(笑)。大人になったら、それは不可能だからね。そうは言っていられなくなるよ。


—10代、20代の頃の最高の思い出は?


TG 友だちや兄貴(※ミュージシャンのトニー・ゲレロ)とスケートしていた日々。


—将来について迷っているキッズに向けて、何かアドバイスはありますか?


TG だれにだって、将来について迷う時期は必ずあるんじゃないかな。俺自身が将来について計画することは、実はほとんどないんだ。先のことはあまり考えず、とにかく今を生きるようにしている。それが何であろうと、大好きなことを目一杯やるべきだ。

—トミーさん自身は、最初からスケートや音楽を仕事にしたいとわかっていましたか?


TG 全然! いまだにわかっていないよ! スケートの方が俺を選んでくれたんだ。そのことについては永遠に感謝している。


—そういえば以前のインタビューで「年を取ってからスケートを始めるとけがをするからお勧めしない」とおっしゃっていましたが、先日SILLYが取材したラリー・クラーク氏は、47歳からスケートをはじめたと言っていました。僕らはどちらを信じれば…。


TG 自分自身を信じるべきだよ(笑)。みんなそれぞれ肉体的なコンディションは異なるだろうからね。


—なるほど(笑)。


TG まあ状況にもよるよね。太ったからとか言って、大人になってから突然スケートをはじめて、すぐにけがをする人がいるのは確かだよ(笑)。


—人生において、失敗を乗り越えるうえでのコツを教えてください。


TG 日本について書かれた本で知ったフレーズがあるんだけど、“七転び八起き”っていうんだ。俺はそのフレーズがすごく気に入っている。それって、まさにスケートボーディングのことだからね。スケートは何度転んでも立ち上がり続けることを教えてくれるんだ。


—心が押しつぶされそうな、最悪な気分の日に聴きたい曲は?


TG たとえどんなにクソみたいな気分の日でも、いつだってマイケル・ジャクソンの「Off the Wall」を聴けば、悲しい気分ではいられないはずだよ(笑)。それは不可能だ。想像しただけでもアガるだろ?


—トミーさんにとってのモチベーションは?


TG うーん……良い質問だね(笑)。とにかく前進し続けることかな。一度止まったら終わりだから。でも、常にたくさんのことにインスパイアされているよ。世の中はインスピレーションであふれている。今回は日本に来て写真を撮りまくっていたら、携帯のデータがいっぱいになってしまった。そんなの初めてだよ。


—今回はニューアルバム『The Endless Road』を引っさげての来日ですね。新作は聴いているといろんな感情が浮かんでは消えて、単なるBGMとしては聴けないアルバムだと感じました。このサウンドはどうやって着想したものなのですか?


TG 1曲ずつ作ったんだ。レコーディングするときは、いつも衝動的なんだよ。そのときの感情を大事にするために、事前に曲を書いたり、デモを作ったりすることは一切しない。すべてはスタジオで、そのときに感じたままレコーディングしている。自分のやっていることに対する、自分自身のリアクションを録音するんだ。

—リズムがラテンっぽかったり、ファンクっぽかったりと多彩で、エスニックな印象を受けました。どのようにしてリズムトラックを制作したのですか?


TG エチオピアンジャズやアフロビート、それにティナリウェンとかボンビーノのようなデザートロックをよく聴いていて、インスパイアされたんだ。リズムは自分のアイデアから始まって、文字通り自分ひとりでプレイしてレコーディングした。ドラムキットの前に座って、グルーヴ感のある、さまざまな拍子のリズムを作ったんだ。今の自分が興味のあるようなものをね。


—エチオピアンジャズでオススメはありますか?


TG 『Ethiopiques』っていうシリーズがあるんだけど、知ってる? 俺が一番好きなのは『Ethiopiques Volume 4』。ムラトゥ・アスタトゥケが一番有名なアーティストだよ。(実際に音源を聴きながら)すごく美しいよね。60年代後半から70年代初頭の作品で、ワルツのリズムなんだ。今はこういう音楽に興味を持っている。


—アルバムにおけるギターのフレーズは即興ですか? それとも計算されたもの?


TG まずはドラムやパーカッションでリズムトラックを録音して、それからベースラインを考え、それをもとに方向性が決まっていったんだ。そこからは、ただ自分がインスパイアされるままにギターをプレイした。

—トミーさんのスケーティングと音楽に共通する魅力は、流れるようなスムーズさやエレガントさだと感じます。若者は派手なテクニックに憧れがちだと思うのですが、ご自身が若い頃はどうでしたか?


TG 俺のスケートに対するアプローチは少し違っていた。自分にとってはテクニックよりも流動性が大切だったんだ。


—スケーティングも即興という感じですか?


TG そうだね。サンフランシスコのストリートでスケートして育ったんだけど、ストリートでは何もコントロールできないんだ。だから必然的に、即興で衝動的なスタイルのスケーティングになったんだよ。


—だからこそ、他のスケーターと違って逆に目立ったのかもしれないですね。


TG そうかもしれないね。それに、これは人生における多くのことに言えると思うんだけど、シンプルで控えめなものにはパワーがあるんだ。


—東京公演に出演したSPECIAL OTHERS(※SPECIAL OTHERS ACOUSTICとして出演)もMCで話していましたが、トミーさんに憧れてメガネをかけた日本の若者は少なくないと思います。ファッションについてはどのように考えていますか?自分なりのスタイルが確立されたと感じたのは、いつごろでしたか?


TG 自分がおしゃれだとか、自分のスタイルについて考え出したら終わりだよ(笑)。


—好きなものを着ているだけ?


TG そうだね。それに、俺の着ている服の多くはもらい物なんだ(笑)。このトップスは Krooked だし、デニムはリーバイスがくれた。コンバースはスポンサーだし、靴下までもらい物だよ。買ったのはMUJI(無印良品)の下着だけ(笑)。Tシャツはヘインズの安いやつだしね。


—日本には、トミーさんに憧れている人も多いと思いますよ(笑)。


TG お金をかけなくても真似できるよ(笑)。愛用しているシャツも多くがヴィンテージで20ドルとかだしね。こういうスタイルになった理由の一つは、スケーターとして育って、あまり裕福でもなかったから、いつも古着屋で服を買っていたからかもしれない。


—長年にわたってスケートボードと音楽活動を続けられていますが、その原動力は?


TG 俺は多分、正気を保つためにやっているんだと思う。とにかく前進し続けて、トライし続けることだよ。トライしていれば失敗はないはずだ。


—最後に人生のモットーがあれば教えてください。


TG ……死ぬな(笑)。そんなもんだよ!

トミー・ゲレロ
サンフランシスコ出身のスケートボーダー/ミュージシャン。伝説のスケートボードチーム、Bones Brigadeの最年少メンバーとしてシーンに登場し、抜群の知名度と影響力を持つストリートスケーターとしてスケートボード界で成功を収めた。その後、ミュージシャンとして音楽活動を開始。1997年のデビューアルバム『Loose Grooves & Bastard Blues』がロングセラーを記録し、音楽シーンでも地位を確立する。作品をコンスタントに発表しており、2016年12月には10枚目のオリジナルアルバム『The Endless Road』をリリースした。


Photographer (Tommy Guerrero) : 佐藤哲郎 / Tetsuro Sato

Photographer (Live photos) : 俵和彦 / Kazuhiko Tawara