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俳句に込められた作者の心情と「詠み」がもたらす心理的効果―― ポジティブ心理学の観点を加えて ― ②

2018.06.25 14:16

https://core.ac.uk/download/pdf/322597745.pdf#search='%E4%BF%B3%E5%8F%A5%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%99%92%E3%81%97' 【俳句に込められた作者の心情と「詠み」がもたらす心理的効果―― ポジティブ心理学の観点を加えて ―】 より

3.俳句の「詠み」がもたらす心理的効果

俳句の中に私小説的な境地を詠み込んで独自の句風をうち立てた石田波郷,思索的生活的な人間中心の句風を作り上げ人間の内面に光を当てた加藤楸邨,そして,寓意的比喩的表現など近代詩の境地を俳句に導入し特に人間の欲求と成長を表現しようとした中村草田男。彼らを中心とする人間探求派は,本稿で取り上げた作品群が明示するように,人間性の探求と俳句の持つ伝統美との融合に努め,対象の客観的描写の中に自らの心象を託そうとした。人間探求派は俳壇史において大きな足跡を残したが,その精神は今日にも生き続けている。自らの心情を四季折々の場面や風景に託して十七音で詠む俳句は,自己と向き合い,自己が抱える課題を解決する力をもっている。

俳句を作り始めたことで,いじめに耐えた,不登校の少年がいる。その少年,小林凜さんは著書の中で,「学校に行きたいけど行けない自分がやすらぐために,たくさんの俳句を詠んだ。僕を支えてくれたのは,俳句だった」と述懐している(小林,2013)。愛媛県松山市で毎年8月に開催されている全国高校俳句選手権大会(通称:俳句甲子園)は5人1組のチームで参加し,俳句の出来映えだけではなく,議論による俳句の鑑賞力を競うことを特徴とし,「自分が自分であるために詠む」をテーマとしている。

俳句人口は今や百万人を超えるといわれるが,その高齢者がかなりの割合を占めている。これは俳句が一定年齢以上の人の自己を支えるということを意味する。科学としての心理学を極められた波多野完治先生は80歳で俳句づくりを始められ,92歳のときに句集『老いのうぶ声』を上梓された(波多野,1997)。そして,生涯学習としての俳句について考察されている。また,私を俳句の世界へと導いてくれた祖母は,米寿を区切りとして出版した第四句集『揺れやすく』(塩崎,1999)の中で,次のような言葉を残している。「生きることが楽しくなった あかしのは俳句のおかげであると感謝し,句集を編むに当って自ら抽出した一句一句は『心のときめきの証左』であり, とき『季のつぶやき』である」と力強く述べたのである。

著者自身,俳句をとおして自己と向き合ってきた。私がいかにして俳句と出会い,自己と向き合ってきたかについては,日本心理学会発行の「心理学ワールド」に掲載された文章に書いた(皆川,2014)。所属大学発行の「情報教育ジャーナル」に掲載された論文では,自己の創作・鑑賞体験や教育経験を手がかりとして,「俳句には,感じる喜び,知る喜び,そして,考える喜びという三つの喜びがある。その背景には人との触れ合いがあり,語り合うことで,一つ一つが深まる」等と論じ,教育のツールとしての俳句の可能性を示唆した(皆川,2017)。いずれも,俳句がもたらす心理的効果に言及したものであり,その理論的支柱として,本稿で考察した人間探求派の俳句観がある。

本稿のここまでの部分は,日本心理学会第83回大会において企画した公募シンポジウム「俳句の『詠み』を通した自己との対話がもたらす心理的効果について」における自らの話題提供にもとづいている。同シンポジウムでは,著者の話題提供につづいて,佐藤手織先生による「震災詠が東日本大震災の被災地の俳人に及ぼす心理効果」と題する話題提供,つづいて島井哲志先生による「マインドフル俳句 ― 俳句をマインドフルネスのツールとして使うために ― 」と題する話題提供が行われ,フロアとの質疑応答と合わせて,標題についての議論が深められた。

4.「ポジティブ心理学」の観点による実作の検討

はじめに,ポジティブ心理学とはなにかについて簡潔に紹介し,俳句とのかかわりを考える。島井(2006),島井(2009)などによれば,ポジティブ心理学(positive psychology)は,1998年,マーティン・セリグマンにより,心理学の一分野として立ち上げられた。端的に述べるとすれば,「人間の幸せを追求する学問」である。心の病気を治すための心理学から,人生をより充実させるための研究がなされている。個人・組織・社会に応用されている。人間の弱さに焦点を当てるのではなく,「どうしたら幸せを感じるのか?よりよく生きられるのか?」に焦点を当てている。

「ポジティブ心理学」と聞くと,ポジティブ思考を思い浮かべる人が多い。しかし,ポジティブ心理学は,いつでもどこでもポジティブでいることを是とするわけではない。ポジティブもネガティブもひっくるめて,自分がより自分らしく,幸せに生きること。そのためには何が必要か。それを科学的に研究する学問である。物事の取り組み姿勢や考え方,そして人生の「幸せ」について,たくさんの「気づき」を得られると思う。ポジティブ心理学のポイントをつぎの3つに分けて考えてみたいと思う。

①ポジティブ心理学は,「幸せ」について5つの要素を定義している。

②ポジティブ心理学は,個々人の「強み」に注目する。

③ポジティブ心理学は,「ネガティブ」の存在を否定するものでは決してない。

1)ポジティブ心理学の本質である,「幸せ」に必要な五つの要素

ポジティブ心理学は,いつでもポジティブ,ハッピーでいることを是としているように思われるかもしれないが,決してそうではない。ポジティブ心理学の創設者は,著書の中で「『幸せ(Happiness)』という言葉が大嫌いだ」と述べ,ポジティブ心理学が扱う「幸せ」は,私たちがよくイメージするような,単なる快楽であり,ずっと続けてたら飽きてしまうような状態とは異なるとしている(セリグマン,2014)。彼によれば,本来の「幸せ」は一つの尺度で定義できるものではない。Happiness と区別して Well-being と呼ぶことが多く,以下の五つの要素で構成される。ポジティブ感情,エンゲージメント,人間関係,意味・意義,達成の5要素である。この5要素は,それぞれの頭文字をとって PERMA モデルと呼ばれている。また,フロウとパークス(2017)も上記のことを考察し,ポジティブ心理学を教授するための多種多様な活動を紹介している。

⑴ P:ポジティブ感情(Positive Emotion)は,能動的なもの

興味深いことがあったときやなにかに感動したとき,それらのことを題材として俳句をつくることがある。俳句をつくろうとしているとき,言葉がどんどんあふれ出てくることもあれば,しばし黙考することもある。楽しみながらつくることもあれば,苦しみ抜いてつくることもある。こうした状況を客観的に見ると,ポジティブ心理学が想定する「ポジティブ感情」とは,のんびり寛いでいる快適さとは趣を異にしていることがうかがえる。

ポジティブ心理学は,「ネガティブ」の存在を否定しない。そもそもネガティブ感情は,「何かがうまくいってない。すぐ対応する必要がある」という警告であると考える。ネガティブ感情のコントロールは,逆境を乗り切り,素早く立ち直る能力であり,これを専門用語では「レジリエンス(Resilience)」という。筆者自身,いやなことがあったとき,その心情を俳句で表現しようとすることもある。ネガティブ感情によって,創作意欲がかきたてられると感じることもある。

⑵ E:エンゲージメント(Engagement)は,没頭すること

Engagement とは,ある活動に対して自ら能動的に関わり,それ自体を楽しみ,没頭することである。何かに熱中しているとき,人は時の経つのも忘れていることがある。時間を忘れて何かを作ることに夢中になっていたり,何となく見始めたテレビ番組が面白くて最後まで見てしまうといった経験をする人もいる。Engagement とは,こういう状態である。俳句をつくろうとしているとき,私たちは正にこの状態になる。季語とそれをとりまく状況に魅入られ,時を忘れて創作に没頭するのである。

⑶ R:人間関係(Relationship)によって,励まされる

他者との関係をどれだけ楽しく,お互いに支え合えるような関係を築けているか。これがポジティブ心理学で言う関係性である。人は他者との関わりなしに一人では生きていけない。俳句をつくること自体は,基本的に孤独な作業である。しかし,俳句は座の文芸とも言われており,明示的・暗示的に,読み手という他者を想定している。読み手に共感してもらえると,素直に嬉しくなる。「ここは,こうしたほうがもっといいのでは」といったアドバイスをもらえると,「もっと頑張ろう」とやる気が高まり,俳句をつくればまた共感してもらえる。他者からの励まし,そしてそういう他者が自分の近くにいてくれるということが,自分の潜在能力を発揮しようという動機づけになる。

⑷ M:行動することの意味や意義(Meaning)を考える

私たちの行動には,何らかの意味やそれを行う目的がある。行動の意味や意義をはっきり理解したとき,その人のやる気はいっそう高まるのである。「なぜ俳句をつるのか」と問われたら,「ただつくりたいから」と答えることもある。純粋に俳句をつくりたいというのも,ある意味立派な目的である。人によっては,「読んでくれる人たちを元気にしたいから」と答えることもあるかもしれない。ポジティブ心理学では,「意味」が単に自分のためだけではなく,誰かほかの人のため,社会のためなど自分よりも大きなものにつながるとき,そこから得られる幸せは最良のものとなる,と言われている。そういう俳句をつくりたいと思うことも,多くなってきた。

⑸ A:達成(Achievement)の継続が幸せの秘訣

目標を達成したときの爽快感は,幸せにつながる。今の幸せのみならず,将来の成長に向けた「自己効力感(selfefficacy)」につながるのである。「自己効力感」とは,目の前に立ちはだかる問題に対して,自分の力で乗り越えられる,そして自分のとった行動が望ましい結果を生む,と感じられる(認知する)ことである。1回達成したらおしまい,という類の「達成」では意味がない。幸せでいつづけるためには,継続的に達成感を味わうことが大切なのである。継続の秘訣は3つあるとされている。その第一は,すぐに達成できる小さな目標と,より長期的な目標を設定することである。第二は,毎日の小さな変化を成長と捉えることである。第三は,仕事を評価してくれる他者の存在である。例えば,気が向いたときに俳句を作る,といった小さな目標は,小さな達成感を味わうのに最適である。けれどこれだけでは単なる繰り返しになってしまうので,もっと時間のかかる大きな目標が必要である。たとえば,「いつか句集を出す」などがあげられる。俳句に詠みたくなるような感動的な体験をした,会心作ができた,俳句を二日連続で作った,などなど,どんなことでもかまわない。自分の小さな変化に敏感になり,毎日少しずつ成長している,という感覚を持つことが大切である。自分の作品を好意的に鑑賞してくれる人。同じように俳句を書いている仲間。皆が筆者の「継続」を後押ししてくれている。ここでも「人間関係」が重要な役割を果たすのである。この小さな継続と人間関係が,最終的に1つめの大きな目標の達成につながっていく。そのためには,自分の強みを知らなければならない。

2)「ポジティブ心理学」の観点からの俳句の分析 ― 自作を事例として ―

つぎに,自作の俳句をポジティブ心理学の観点から読み解き,俳句が作者にもたらす心理的効果について考察する。論者は,現在所属している同人誌に1983年7月より投句を続けている。ここでは,2013年2月から2019年1月までの間に投句した俳句をとりあげる。この間,2015年4月までは,同人欄と雑詠欄を合わせて10句ずつを投句した。また,2015年5月からは毎月12句ずつを投句している。また,この期間に同人誌の800号記念大会や850号記念大会があり,前者では11句,後者では21句を投句した。その結果,この期間の総投句数は840句となり,うち497句が主宰選に入選し,投句から2か月後に発行される同人誌に掲載された。これらの入選句497句を分析し,ポジティブ心理学の要素に関わる俳句を抽出した。

⑴ P:ポジティブ感情(Positive Emotion)から生まれた俳句

詠んだときの心境が,ポジティブ感情の測定尺度に用いられる形容詞に通じる俳句を抽出したところ,「新たなる一歩のごとく梅ひらく」,「啓蟄の島にあふるる日射しかな」,「散りぎはの桜を仰ぐ朝かな」,「虫の音を人声と聞く夜のしじま」,「栗飯の栗つややかに炊き上がる」,「元旦の青空に意を決したる」,「人を待つ十石舟に散る桜」,「さらさらとざわざわとあり麦の秋」,「白梅の力抜かざる白さかな」,「菜の花の沖へ漕ぎ出す小舟か

な」,「引き返すこともありけり蟻の列」,「検診の結果に安堵涼新た」,「声弾む銀杏黄葉の明るさに」,「オリオンの舞ひ立つ空に闘志湧く」,「寄り添ひて一座となりて福寿草」,「躓きを力に変へて春を待つ」など,38句が該当すると考えられた。

⑵ E:エンゲージメント(Engagement)を実感したときの俳句

ある活動に能動的に関与しているときの心境を詠んだと考えられる俳句を抽出したところ,「湯豆腐の掬ふ楽しさ難しさ」,「推敲を重ぬる机上木の葉髪」,「一行を消し二行足す夜の秋」,「夜半の冬進むべき道論じ合ふ」,「歳晩やあと一行の報告書」,「小論に書き足す一語聖五月」「添削の一字の重み新樹光」 , 「深秋や温故知新の俳句道」 , ,

「シリウスの孤高の光道を指す」,「寒の星一歩一歩といふ言葉」,「雲の峰次の一歩を踏み出せり」,「緑陰に立ちて詩論をたたかはす」など,27句が該当すると考えられた。

⑶ R:人間関係(Relationship)によって励まされたときの俳句

お互いに支え合えるような関係を築けていると感じたときの心境を詠んだと考えられる俳句を抽出したところ,「そばにゐる人のぬくもり初詣」,「雛菓子を皆が持ち寄りゼミ句会」,「少しづつ深まる会話寒昴」,「一人より二人がうまし蓬餅」,「七草粥互ひの夢を語りつつ」,「春灯や簡潔に記す読後感」,「打ち明けて元気が戻る月夜かな」,「あたたかや古きアルバムめくりつつ」などの26句が該当すると考えられた。

⑷ M:行動することの意味や意義(Meaning)を考えたときの俳句

大切なものに貢献できていると感じ,行動の意味や意義を理解できたと思えたときに詠んだと考えられる俳句を抽出したところ,「落花浴び諸事淡淡と進めをり」,「草稿に朱を入れてゐる師走かな」,「高みへと踏み出す一歩梅真白」,「秋遍路しるべ石にも手を合はせ」「行く道のひとつが見えて冬北斗」 , 「まだ少し迷ひもありて鱗雲」 , ,

「天高し座右の銘に克己心」など,26句が該当すると考えられた。

⑸ A:達成(Achievement)の継続から生まれた俳句

継続的な達成感を味わい,「自己効力感(self-efficacy)」の高まりを実感したときに詠んだと考えられる俳句を抽出したところ,「昇進を告げられてより春きざす」,「講演の依頼のメール春動く」,」,「焼山寺のぼりつめれば初紅葉」,「一条の光が見えて聖母月」,「芽柳や先づは小さき一歩より」,「稿進みいざよふ月を仰ぎけり」など,24句が該当すると考えられた。

⑹ N:ネガティブ感情(Negative Emotion)の克服に向かう俳句

ネガティブ感情に流されず,抑え込まず,その感情が何を警告しているのかを読み取って対応しようとして詠んだ俳句を抽出したところ,「草稿の埋まらぬ余白冴返る」,「討論のかみ合はぬまま梅雨夕焼」,「話逸れ冬三日月の尖りをり」,「海を見て気をとり直す四月かな」,「ペンを持つ指先にある余寒かな」,「執筆のとどこほりおり梅雨の月」,「梅雨滂沱物議の種のまかるる日」など,25句が該当すると考えられた。

⑺ 「ポジティブ心理学」の観点からの俳句の分析のまとめ

上述のとおり,分析対象とした497句のうち33.4%にあたる166句がポジティブ心理学の要素に関わる俳句であると考えられる。一作者による俳句の分析にとどまったが,俳句を詠むことが作者になんらかの心理的効果をもたらすこと,とりわけ「ポジティブ感情」を持って良好な「人間関係」を築き,自らの「強み」に気づきそれを発揮し,連携させて自己の立場や役割に「エンゲージメント」し,「意味」のある目標を「達成」するといった心理過程に寄与することが示唆されたと考えられる。今後は,複数事例での検討やより客観的な分析を行うことが期待される。

5.まとめと今後の研究展望

中村草田男を旗手とし,石田波郷,加藤楸邨らによって構成された人間探求派は,本稿において考察したように,人間性の探求と俳句の持つ伝統美との融合に努めた。具体的には,季語と定型を遵守し,対象の客観的描写の中に自らの心象を託そうとした。本稿第1節では,近代俳句の勃興から人間探求派の登場にいたるまでの俳壇史を概観し,人間探求派の位置づけを確認するとともに,人間探求派の俳句観と心理学との接点を見いだした。

人間探求派は俳壇史において重要な位置を占めたが,その精神は現代にも生き続けている。本稿第2節では,人間探求派の俳句観の検討とと実作の鑑賞を試み,「自らの心情を四季折々の場面や風景に託して十七音で詠む俳句は,自己と向き合い,自己が抱える課題を解決する力をもっている」という考えをもつにいたった。そして,第3節では,この考えを「俳句を作り始めたことで,いじめに耐えた,不登校の少年のエピソード(小林,2013)」,

「俳句の出来映えだけではなく,議論による俳句の鑑賞力を競う」という俳句甲子園の特徴の分析,および「俳句が一定年齢以上の人の自己を支えるということ」についての2つの実例の分析(波多野,1997;塩崎,1999)によって検証した。さらには,著者自身による「俳句をとおしていかに自己と向き合ってきたか」についての論考

(皆川,2014)や,「俳句には,感じる喜び,知る喜び,そして,考える喜びという三つの喜びがある。その背景には人との触れ合いがあり,語り合うことで,一つ一つが深まる」という論を立てた論考(皆川,2017)をあげ,いずれも俳句がもたらす心理的効果に言及したものであることからも,「俳句は,自己と向き合い,自己が抱える課題を解決する力をもっている」という考えを裏づけるものとして位置づけた。

本稿第4節では,自作の俳句をポジティブ心理学の観点から読み解き,俳句が作者にもたらす心理的効果について考察した。その結果,同人誌に掲載された俳句の中から,ポジティブ心理学の要素に関わる俳句が多数抽出された。この結果は,俳句を詠むことが作者になんらかの心理的効果をもたらすこと,とりわけ,ポジティブ感情を持って良好な人間関係を築き,自らの強みに気づき,それを発揮し連携させて,自己の立場や役割にエンゲージメントし,意味のある目標を達成する,といった心理過程に寄与することを示唆するものと考察された。これらの研究成果は,ポジティブ心理学の観点を加えることで,人間探求派が理論と実作を通じで示そうとした,「俳句は,自己と向き合い,自己が抱える課題を解決する力をもっている」という考えを科学的な根拠をもって証明しうる可能性を示唆するものである。一作者による俳句の分析にとどまっており,客観的な分析も十分ではない。

複数事例での検討やより客観的な分析を行うことを今後の課題とする。