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チキチキバンバン

2005.01.01 15:00

CORGI

Chitty Chitty Bang Bang

ミュージカル映画が有名ですが、原作となる絵本の作者は、あの「007」シリーズのイアン・フレミングさんだったのですね。驚きです。

不思議な力をもった車が冒険するお話ですから、とてもお気に入りなのですが、特に好きなのが、この本の冒頭部分。

ほぼ使い捨て状態にある最近の車と比べて、対極とも言える、愛着いっぱいの文章です。

イアン・フレミング作 ジョン・バーニンガム画 渡辺茂男訳

「チキチキバンバン―まほうのくるま―」

 おおよそ自動車(くるま)なんていうものは、鋼とワイヤーとゴムとプラスチックと電池とオイルとガソリンと水と、それから、先週の日曜日のドライブに、だれかが、後部座席のすき間につめこんだキャンデーのつつみ紙の集積である。(集積とは、よせあつめということばを、ちょいとむつかしくいってみただけである。)おしりから煙りをはいて、前から警笛をブーブー、でかい目玉のようなヘッドライトが前に二つ、赤いライトが後ろに二つと、車輪のついた、ぐるぐる動きまわるブリキの箱―つまり自動車(くるま)とは、おおよそ、そんなものだろう。

 だが、自動車(くるま)の中には、特別なやつがある。たとえば、わたしののってるやつとか、もしかしたら、みなさんのもそうかもしれないが。まず、そいつを好きになり、理解してやることだ。そいつに、やさしくしてやり、ひっかき傷をつけるようなことをせず、ドアを力まかせにしめるようなこともせず、ガソリンをいつもたっぷりやり、オイルをよく交換し、まめに空気圧もしらべてやり、ほこりをはらい、よくみがき、できるだけ雨や雪にあてないようにしてやれば、かならずそいつは、いや、きっとそいつは、血のかよう人間みたいになってくる。―それも、ただの人間じゃなくて、魔法の力をもった人間のようにだ!。

 信じられないだと?よしきた!じゃあ、わたしがこれから語る、この自動車(くるま)の物語を読んでくれ!もうそいつの名前はごぞんじかも、いや、いや、この国のことばでは、自動車(くるま)は女性名詞だから、彼女の名前というべきかな。読み終わってから、わたしのさっきいったことが信じられるかどうか、もう一度考えてみてくれ。自動車(くるま)という自動車(くるま)が、すべて機械と燃料の集積というわけじゃない。そういうものがほとんどであるとしてもだ。


発行所 東京都千代田区神保町1―3 冨山房

発行者 坂本起一

定価  ¥1300

1980年7月15日第1刷発行

1985年11月30日第2刷発行