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富士の高嶺から見渡せば

「慰安婦像」を子供にどう説明するのか

2017.01.12 08:52


釜山の日本総領事館前の歩道に設置されたのと同じ「慰安婦像」は、韓国内ではすでに40か所から50か所以上に設置され、しかも一昨年の慰安婦をめぐる「最終的かつ不可逆的な解決」を謳ったはずの「日韓合意」以後も増え続け、今も20か所以上で新たな設置が計画されているという。やはり、韓国側には、この問題で日本と和解しようなどと言うつもりは最初からなかったのである。

(「日本が反発しても少女像設置は続く 強引な合意の産物=韓国」)

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/01/09/2017010902057.html?ent_rank_news

別段、私有地や学校などプライベートな空間なら、いくら設置してもらってもかまわないが、この像は単なる「少女像」ではなく、「慰安婦」あるいは「性奴隷」だと主張し、極めて政治的なメッセージを込めたモニュメントなのである。公道に設置されれば、幼い子供も含めて、否が応でも誰の目にとまることになる。「慰安婦像」の脇に刻まれている「碑文」を見ても、韓国語の分からない外国人には、日本統治時代の長い歴史を含めて当時の事情を説明されなければ、おそらく意味が分からないであろう。

それにしても、文字も読めない幼い子供たちが興味を持ち、当然の疑問として、「この女の子は誰?何をしているの?」と聞かれたとき、韓国の親たちはいったいどう答えているのだろうか。性の何たるかも知らない幼い子供に対して、大人のむき出しの欲望の対象となり、しかも金銭を介した性行為や男女の関係を何と言って説明していいのか。まして彼らが主張するのは残虐な暴力を伴った「性奴隷」と称される人たちで、普通では見たことも経験したこともない世界の存在である。それを子供たちにも理解できるように言葉で説明するというのは至難の技だ。子を持つ親なら、純粋無垢な子供の心に、そんな大人の醜い世界、日常ではありえない不条理な話など、できたら教えたくないと思うのが普通だろう。しかし、世界に「慰安婦像」を広めようと運動を進める中華系・韓国系の人たちは何とも思わないらしい。日本と日本人をおとしめるためなら、どろどろとした怨念を込めた「慰安婦像」が世界中に増殖することこそが望ましく、それを見た人がどんな想像を巡らし、どんな感情を抱くか、などは関知することではないのだ。

「慰安婦」について、韓国の親たちが実際に自分の子供にどう説明しているのか、興味は尽きないが、一般的に韓国では、「慰安婦」をめぐっては次のような言説が、固定観念として流布され、おそらく「慰安婦像」の脇にある碑文にもそう書かれているはずだ。

<戦時中、日本軍は12歳か13歳のまだ生理も始まっていない少女など10代以下の少女20万人を親から強制的に引き離して集団連行し、「性奴隷」として扱って自由を奪った上、戦場で野獣のような日本兵の性暴力のもとに晒し、敗戦時にはそのほとんどを殺害して、戦場に遺棄し、20万人の少女のほとんどは生還しなかった>

日韓合意後の2016年2月に韓国で公開された映画「鬼郷(キヒャン)」は、慰安婦をテーマにして大ヒットを飛ばした映画だが、「慰安婦」は「性奴隷」であるという側面をこれまで以上に強調し、犠牲となった少女たちのほとんどが「まだ生理も始まっていない少女」であったことがここでも強調され、野獣のような日本兵から、ありとあらゆる残虐な暴行、拷問を受け、最後には戦場でみな生きたまま焼き殺された、というストーリーが展開する。この映画をつくった監督自身が言うように、「慰安婦問題はユダヤ人を虐殺したホロコーストに匹敵する問題だ」と思い込ませるという意図を持って描いている。

ユネスコへの歴史遺産登録をめぐって、中国や韓国で、慰安婦問題や南京事件を「アジアン・ホロコースト」として扱う動きがあることに対して、イスラエルやユダヤ人団体からは、ユダヤ人の民族消滅を図ったホロコーストと慰安婦を同列に扱うことは、ユダヤ人に対する侮辱だとする抗議の声が上がっている。(大高未貴「慰安婦・南京=ホロコースト」のウソに終止符を」正論2017年2月号)

しかし、こうした説明を聞いた子供たちは、はたしてどう思うのだろうか。「12歳や13歳の少女が日本軍に連行されるとき、親たちはいったい何をしていたのだろう?」「自分の子供が無理やり連れ去られるのを、ただ呆然と見送り、何も助けてくれなかったのか?」。「自分の親はいざというとき自分をほんとに守ってくれるのか?」。韓国の子供たちは、心底不安に思っているのではないか?

しかも当時、自分の子供が連れ去られたことに、親が抗議したという報道は見当たらず、戦争が終わっても帰ってこない娘たちが、今どこにいるのかを必死になって探し、消息を尋ねたという形跡もなく、20万人もの少女が戦場で殺害・遺棄されたというのに、戦後、半世紀ちかくの間、韓国政府も国民も調査もせず何の対処もとらなかった。吉田清治の虚偽証言を扱った朝日新聞の誤報をきっかけに、韓国で元「慰安婦」と称する女性のカミングアウトが始まり、「慰安婦」という存在にようやく注目が集まるようになった。「連れ去られるときに、かわいそうな少女たちをなぜ助けてあげなかったのか?」「戦争が終ったときにすぐに助けに行くべきだったのに、70年も経ってから日本に謝罪しろと言ってわぁわぁ騒いでいるが、この間、韓国の政治家や役人はいったい何をしていたのか?」。冷静に考えれば誰もが疑問に感じる不思議が、慰安婦問題には満ち溢れているが、一方的で感情的な主張ばかりで、客観的で論証的に落ち着いて議論できる雰囲気はなくなっている。

それにしても、以上のような慰安婦に関する説明を聞き、自分の頭で考えることができるようになった韓国の子供たちは、「この国はほんとに大丈夫か?自国民の尊厳を本当に守ってくれるのか?」という疑問を抱かないだろうか。そうした意味では、「慰安婦像」は、子供たちに疑問を抱かせ、真実に目覚めさせるためには、いい「教材」になっていると言えるかもしれない。