猫の好酸球性肉芽腫症候群
猫の背中や内股、足の裏の肉球、唇などにブツブツとしたできものが繰り返し出現して、動物病院で「アレルギー」もしくは「好酸球性肉芽腫症候群」などと言われたことはありませんか?
今回は、そんな少し聞き慣れない「猫の好酸球性肉芽腫症候群」についてお話します。
好酸球とは?
血液中にある、体を様々な外敵から守る働きをする血球成分を「白血球」と呼びます。この白血球の中で、主に細菌やウイルスなどから体を守っているのが「好中球」と「リンパ球」と呼ばれ、主に寄生虫などから体を守っているのが「好酸球」と呼ばれています。この「好酸球」は寄生虫を退治する以外に、アレルギー反応に対しても重要な役割を担っています。
好酸球性肉芽腫とは
「好酸球性肉芽腫症候群」とは、何かしらのアレルギーが原因となって、痒みや皮膚の炎症など一連の症状が出ることを指します。
この症状の発症から診断までは、
- 皮膚の表面に対する何らかの刺激(寄生虫、花粉の接触など)によって、
- 接触したものに対する過剰な反応(=アレルギー)が起こり、
- 好酸球が刺激を受けた場所で増加&刺激に反応して肉芽組織がたくさん形成され、
- 「好酸球性肉芽腫(症候群)」もしくは「アレルギー」と診断される
このような流れで発生します。
分類
好酸球性肉芽腫は見た目で大きく分けると、下記の3つに分類されます。
- 無痛性潰瘍:口唇に発生するもの
- 好酸球性プラーク(好酸球性局面):首や腹部の皮膚に見られ、平坦に盛り上がったもの
- 線状肉芽腫:線状に盛り上がったもの
原因
好酸球性肉芽腫の原因ははっきりとは分かっていませんが、アレルギーがこの症状の根源に関与しているといわれています。
何かしらの要因に対するアレルギーに反応して、好酸球が集まってきている状態だと考えられます。
診断
猫の皮膚にできものや炎症が出来たら、患部を針で刺して中身を吸い、顕微鏡で観察します。この方法で好酸球がたくさん発見されたら、好酸球性肉芽腫だと診断することが出来ます。
ただし、これは症状名が判明しただけであって、根本の原因はこれだけでは分かりません。根本の原因すなわちアレルギーの原因となるアレルゲンを特定するには、より詳しい血液検査などの検査が必要です。
考えられるアレルギー物質と対処法
猫でよくみられるのがノミアレルギーです。ノミに噛まれた際に体内に入り込むノミの唾液に対するアレルギーやノミの糞に対するアレルギーもあります。ノミの駆除と予防を徹底するだけで、できものや痒みなどの症状が出なくなる場合もあるため、まずはノミ対策をきちんと行いましょう。
次に考えられるのは食物アレルギーです。食物アレルギーが疑われる場合は、今まで食べたことのないたんぱく源(ラム、カンガルー、なまずなど)を主成分とするフードへ変更し、最低2ヶ月間は皮膚の様子を観察します。これによって症状の改善が見られれば、食物アレルギーの可能性が極めて高いと判断します。また、それ以降はそのアレルギー症状を示さないフードを食べ続ける必要があります。
そのほかに考えられるのが、花粉やハウスダストなどの環境中のアレルゲンが皮膚に接触したり、口や鼻から吸い込むことでアレルギー症状が出てしまうものです。これは、アレルゲンと考えられる物質との接触を避けることがもっとも効果的な対処法です。
治療
原因が何であれ、好酸球性肉芽腫ができた猫は激しい痒みを示します。体を掻き壊したり、舐め壊したりしてしまいます。そのため、原因の究明と並行してこの痒みを軽減するための注射や飲み薬を使用します。
自宅で出来るケア
アレルギー自体を家庭で治すことは不可能ですが、この病気によって弱ってしまった皮膚の状態をそれ以上悪化しないようにケアをすることはご自宅でも可能で、とても重要なことです。
炎症の起きた皮膚は免疫力が低下しているために、細菌による感染が起きやすくなっています。皮膚の表面を清潔に保つためにシャンプーをしたり、保湿剤を使用するとよいでしょう。また、皮膚の代謝を促進するようなサプリメントを経口的に摂取させるのも効果があるといわれています。
まとめ
好酸球性肉芽腫を発症している猫は体を痒がったり痛がったりして、とても辛い思いをしていることでしょう。このような症状がみられたら少しでも早く症状を改善させるために、なるべくすぐに動物病院できちんとした検査を受けて、原因を特定したうえで治療を進めていくことが重要です。