Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

旅のチカラ、旅のカケラ

サヨナラよりもいい言葉

2008.04.08 12:00


トントントン、部屋をノックする音。

扉を開けると宿の若旦那が立っていた。


「四方街に行こう、あそこは夜がキレイなんだ」


と、言っている様子。

この体調、この疲労でもう1回行くの?


実は病み上がりで、まだ吐き気が治まらない。

それでも朝から10時間、みっちりと「麗江」を

観光して帰ってきたところにこの誘い。

友人は再び体調不良でダウン。

ベッドから「いってらっしゃい」と手だけ振っている。


あぁ眩暈がしそう…。


でも、嬉しそうに待っている「ホワンホァ」を断れない。

ホワンホァは推定35歳。昭和のイケメンという感じ。

パリッとスーツを着こなし、いつもポケットに片手をつっこんでいる。

小さいカメラ1つ抱えて部屋を飛び出した。


ホワンホァは中国語しかしゃべれない。

ときどきノートに漢字を書いてコミュニケーションを図るが、

彼の発する言葉や、彼が書く文字はほとんど理解できない。

いい大人がふたり、

ただニコニコしながら夜道を歩いた。


「四方街」

昼間とは全く違う表情で僕らを待っていた。

これはもう宮崎駿の世界だ!

無数のぼんぼりがゆらめき、燈篭が儚げに川を流れる。

異国の風、異国の香り、異国の音。

疲れのせいか、視界が歪んで見えた。

ふわふわと、

なんだか夢の中にいるような感覚…。

まさしく“幻想的”とはこのことだ。


誰も知らない小さな路地を抜け、

迷路のような街を彼について歩く。

そういえば幼い頃、こうやって

両親や親戚に連れられて夏祭りを楽しんだっけ?

露店に目移りし、人の多さにビックリしながら。

実に3時間、夢の世界をさまよった。

光に包まれながら、心は幼少の思い出をたぐっていた。


―カズはどこまで旅をするんだ?

「まだ、始まったばかり。中国は1周するよ」

―じゃあ、旅が終わったら中国に留学しに来なよ。

「それもいいけど、中国語は難しいな…」

―日本語より簡単だし、もったいないよ。


宿に戻ると、女将さんやお婆ちゃんも登場。

ノートいっぱいに筆談大会が始まった。

長い長い1日。

優しさにどっぷりと浸かり、

少し元気を取り戻した気がする。


「再見(ツァイチェン)」※さようなら


漢字で書けばわかる。

サヨナラよりもいい言葉だって。