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旅のチカラ、旅のカケラ

左耳のピアス

2008.04.11 10:00


「香格里拉(シャングリラ)」を後にし、

再び「麗江(リージャン)」に戻った。

宿に預けていた、荷物と友人が待っているはずだ。


今日もこうしてバスに揺られている。

指折り数えてみると、そうか50日目か。

早いのか、「まだ」と言うべきか…。


出発から50日で、6カ国目の中国を彷徨っている。

本当なら香格里拉からチベットへ行く予定だった。

しかし、ほんの数週間前に勃発したラサの暴動のため、

道を閉ざされてしまったのだ。


バスは揺れる。心も揺れる。


香格里拉のバスターミナルには、

たしかに「ラサ行き」の文字があった。

喉から手が出るほど欲しかったチケット。

今、その逆方向へとバスは進んでいる。

ポケットからデジカメをそっと取り出し、

夢の写真を眺めてみた。


香格里拉で過ごした2日間は、夢のようだった。

憧れつづけた“チベット”を

ほんの束の間、垣間見れたのだから。

どこまでも続く草原、はためくタルチョ、青い空―。

「これでいいか」

なんだか心のモヤが晴れた。

すべてを叶えようとするから、

妬みや争い、そして新たな欲望が生まれる。

きっと人生は少し足りないくらいが、ちょうどいいのだ。


窓の外に、家族で畑を耕す姿があった。

きっと彼らの生活は「ない」ことが前提だろう。

だから、ものの“ありがたみ”をよく知っている。

日本では「ある」ことが前提で、

誰もが“ないものねだり”に忙しい。

飽和状態に慣れた身体は、

少しの空腹すら大きなストレスとなる。

デジカメをポケットに戻し、

食い入るように、窓の外を眺めた。


「これでいい、これでいい」


この旅が終わったあと、

もう一度夢のつづきが見られるのだから。

そう何度も頷いた。


心の揺れは治まったが、バスはひどく揺れている。

そして、久々につけた左耳のピアスも揺れていた。