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日本のこころ 〜自然と繋がる、日本人の感性〜

2021.07.07 19:30

«フランスの芸術は、日本芸術の中の美しい自然の模倣に影響を受けて発展した»


この事実に向き合ったとき、ふと思ったのは、

そもそも私たち日本人にとって自然ってどんな存在なんだろうということ。

そんなことを考える中で行き着いたのは、

日本人が本来持つ"心と自然"のつながりの美しさ。




私たち日本人の自然観には、そもそも古来より受け継がれてきたマインド、が関わっています。

そして、それが特有の思想や文化となり、世界を魅了しています。

そんな心が、文化に反映された結果、フランスを始めとする西洋諸国の芸術のインスピレーションの源となったのです。



フランスで生活し、異なる歴史背景やマインドを持った社会、人々と関わる中で、

最近改めて文化、芸術、思想や国民性、そして心といった日本について考えさせられることがあります。それは日本に暮らしていた時、その文化や風習の中にいると、当たり前すぎて深く考えることもなかったこと。

しかし、一つ一つのことを意識的に考えてみると、そこには沢山の宝物のような要素が詰まっていて、本来私たち日本人は生まれながらにして尊い文化を与えられている、この国の豊かさを実感します。だからこそ、日本の文化として受け継がれてきたこの感性を、もっと誇りを持って世界に発信していきたい—



-私たちの中の自然と神さま-



日本人にとっての自然観は、宗教的な背景から西欧諸国とは異なります。

キリスト教の考えでは、神の創造物の中であり、人間が最も優れた存在であり、自然は人間が管理するもの。

対する日本では、自然と人間の存在の境界線が曖昧であり、自然と一体となることが概念としてあります。土地的にも、昔から自然災害などに苛まれてきた日本では、テクノロジーや科学の発展を経てもなお、自然が”制御”できる存在ではないことを身に染みて知っている。

そんな背景から、わたしたちは何千年も前から、自然と調和する方法を探ってきました。

その結果、家にしても、庭園にしても、緑や風、光と一体となる作りや工夫がされています。




自然の中に神様が宿っているという神道の思想が元になっている日本人のエスプリを紐解くと、

自然との同化を探ってきた=その目に見えない神様という自然の一部が、私たちと一体の存在になりうるということ。


そう、自然は私たちの心の中にいて、それが日本人にとっての神様なのではないでしょうか。



また、禅やマインドフルネスとしても世界から注目されている仏教の教え。

無や空という概念によって、心の中を “無“にしたときに気付かされるのは、私たちは自然に生かされている、自然の中の一つの存在であるということを考えます。



神道と仏教という異なるものの融合によって作り出されてきた日本人の思想は、どちらも自然に深く根付いていて、自然、自分、そして神様、3個の要素が一体となり、日本人の精神が築かれているのではないかと思います。




-季語という心-


そうした中で、私たちの暮らしの中での自然への心がけはとてつもなく繊細であり、自然の観察が心に連動する美しさは、

日本特有の感性だと思います。


例えば、手紙の季節の挨拶なんていうのも、とっても美しい。


同じ時期でも十人十色の表現があり、手紙を書く用件とは全く関係なく季節への心遣いが記されるということ、これってとってもステキな感性ですよね。


4月ならば桜?それとも春風?それとも陽気?

どの言葉を選ぶかは自分次第。

その人の人柄やセンスまでもが、自然の要素や言葉に乗せて表れる。。。

そんな、人と自然のつながりが文化となって日常に根付いています。



そして、季節と花々。

たんぽぽ、桜、紫陽花、金木犀…その香りや姿で、季節の訪れを知るだけでなく、過去にその花々と共に味わった経験や感情が戻ってきたりなんてこともあります。

そもそも、桜が日本で愛される理由の一つには、その開花を長くない命に儚さを見出す、心情の投影があります。

諸行無常のこころ—すべてのものは移り変わり永遠に変わらないものはない、だから煩悩によって起こる変わっていくものへの執着を消し去り、

心を楽にする—がそこにあります。古来から受け継がれてきた日本人の思想が、桜という花と一体となっているから、今もなお人々の心を掴む。

そんな日本的な情緒が、毎年何気なく味わってきた、この花見という季節の行事に表れています。




限りある瞬間、二度と同じことがあるわけではない、その尊い瞬間を味わう。

その儚さが美しい…

四季の移り変わりに恵まれた、日本の自然界に溢れたこの儚さの美学こそが、日本人の感性を作り出しているのです。






-融合の精神-



『違うものを見つけたときに攻撃するのではなく、

その中にある共通点を見出しながら融合する方法を探す。』それが本来の日本が辿ってきた道だそうです。


歴史、宗教、そして西欧との関係…様々な融合を経て受け継がれてきた日本の文化。

そのような感性が表れた芸術がフランスに渡って、数々の芸術家たちにインスピレーションを与え、彼らの感性との更なる融合を生み出した。その結果にあるのが印象派絵画やアール・ヌーヴォーの建築を始めとする、フランスを輝かせたベルエポックという時代と芸術です。

いわば、この融合なしには今の時代これほどまでに、世界中から親しまれているフランスの芸術の繁栄は、なかったかもしれません。



本来、芸術というのはそれを通じて、異なる背景をもつ心の交流を促す役割を持っていて、

そんな感性の交流というのは、言葉で固め尽くされた説明なんかよりも、何倍も本質的な理解と信頼につながると思います。


言語、文化、思想、背景、考え、容姿…

他人と自分が違うからといって、見下したり非難するのではなく、

異なる要素の中にある共有できる部分を大事に、人々が繋がれる。

そんな輪がどんどん広がっていきますように。