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人間の「安全保障」こそが大切

2021.07.07 10:00

ひきとり新聞最新号のニュースを順にテキストで紹介していきます。)


『安全保障とは何か――国家から人間へ』

古関 彰一著、岩波書店、2013年、3,030円

  *   *

私たちは「安全保障」と言えば、第一に日米安保条約を思い浮かべる。「安全保障」とは何よりも「国家を、他国の攻撃から軍事的に守る」ことと思い込んでしまっているのだ。しかし、古関によれば、近代の「安全保障」論を確立したベンサムが目指したのは「国家を守ること」ではなく、「個人、人間を守ること」だった。「安全保障」がもっぱら「国家安全保障」を表すようになったのは、第二次大戦後のアメリカの国際戦略によるものである。

近年、「中国の脅威」が声高に叫ばれ、奄美諸島、南西諸島に自衛隊基地が急速に一大補強されている。G7で初めて台湾海峡の「平和と安定」が言及され、日本周辺の「安全保障」はキナ臭くなってきている。

その反面、1994年の国連報告書が「人間の安全保障」という概念を打ち出して以来、北欧やカナダでは「社会的連帯」や「相互扶助」や「共生」を基礎とする「人間の安全保障」を目指すようになった。

アンポを「人間の安全保障」の観点から見直してみたい。(門倉)

(ひきとり新聞10号・ひきトリの本棚3より)