何もきかないで
荒井由実「何もきかないで」。
今から46年前に発表された名盤「コバルトアワー」に収録された一曲。はるかな時を越えた今、この曲に込められているメッセージが今の自分に心地よく響いてくれている。
「聞かない」という思慮深い分別。
その想いのステージにたどり着くことができれば、ようやく独り立ちの者としてのパスポートに、ひとつの重要なスタンプを押印することができることだろう。誰からの学びや指導でもなく、己でその確信と答えを引き出すことができるまで、私はこれまでたくさんの時間を費やしてしまっていた。
例えば、己が大切にする対象者がいるとしよう。ある日、大切な彼や彼女に対し、確認したいと思えることが発生した際、それは即時に確認するべくアクションを起こすべきなのか、そうではなくそのままにしておいた方が良いと思い留まるべきなのか。そのような気付きと躊躇に対峙しなければならない境遇が巡ってくることもあるだろう。
その時に、自分はいかなる判断を示すことができるのか。それは、これまでの己のあゆみが試される機会であることを、十分に認識しなければならない。
様々なケースがあることは勿論だ。しかし、重要なことは、「確認したい」と想う己の心を原動しているものとして、エゴや興味本位が一義とされていないかどうかの検証ができる自分であることを、忘れてはいけない。
「オッケー、大好きな君。何も聞かないよ」
思慮深い心の分別と振る舞い。決して人間にとって簡単なことではない。それを承知した上で、私はもっとナチュラルに身につけられる者になりたいと想い続けている。
「何もきかないで」。
この曲がリリースされた時、作者の荒井由実(当時)さんは21歳だった。その事実にも、只々驚愕だ。
決して目立つことなく、アルバムの中にそっと仕舞い込んでいたこの曲が、今も、そしてこれからもずっと私に大切なメッセージとして語りかけてくれる。
何もきかないで
作詞・作曲:荒井由実
何もきかないで どこから来たのか
何をしてきたか あなたはきかないで
テラスに広がる 星空を見てると
昔から二人 こうしているみたい
あなたはあなたの 私は私の淋しさ
心の隙間を埋め合えれば それでいいのよ
もっともっとはやく めぐり会えたなら
悲しい秘密は なかったはずなのに
あなたは私の 私はあなたの面影
離れた町から思い出せば それでいいのよ
だからきかないで どこから来たのか
さよならするまで あなたはきかないで
何もきかないで
あなたはきかないで