エジプト〜カイロ編 11【カイロでのコンサート 2】
さて夜になり開演前の最終チェックに赴きますと、午前中の技師は見当たらず、全く見知らぬ若者が『あ、技師は僕です。』
ええええええ!
今朝のあの努力は何だったのかな。。。
皆で開いた口が塞がらなかったのですが、もう再チェックする時間はありません。
そこで、新しい技師とP氏が話し合って、彼が技師の目に入る席に座り、その都度、目線や手の上げ下げで合図する事が決まったのです。
やれやれ、お二人とも、お疲れ様でございました!
ともあれコンサートは皆の努力の集大成と申しますか、たいそう上手くいって観客の人々にも満足して頂けたようでした。
コンサート会場は、かつての王族の一員が建てた〈マニュエル パレス〉という城館の大広間でした。
招待客は各国の大使や高官、未だにひっそりと生きながらえている王族や富裕階層が主でしたが、金と黒の壁や柱が深紅の絨毯とカーテンから浮き出てくるように見え、シャンデリアの耀きも眩しく絢爛豪華なこの夜会に美しく装った彼らを眺めていると、現代カイロから1世紀昔にタイムスリップしたような錯覚を感じさせられました。
そしてこの聴衆の、付け焼き刃などでは決してない音楽を理解する確かな力、文化への敬意、一人一人の真摯な演奏家への接し方には、新鮮な驚きと感動を覚えました。
この様な高い教育水準を保ち、芸術に触れ得る環境に生きることの出来る階層がエジプト全国民の10%にも満たないのは残念で堪りません。
日本大使公邸(英国統治時代名残を見せる西欧風建築の館)でのコンサートはもっとこじんまりとして聴衆との距離もぐっと近く親しみやすい空間でした。
音の響きも素晴らしく、もちろんギターもそのままで充分音色の美しさが伝わるサロンでした。
この時も大変温かい聴衆で、カイロオペラのソリストであるバリトン歌手や女性のジャーナリストなどとも、演奏後のレセプション(さすが、かなり豪華な美味な和食で皆堪能していたようです!)で歓談出来たのも楽しい思い出となりました。
このコロナに負けずに元気でいて欲しいと、彼らの健勝を祈っています。