エジプト〜カイロ編 13【ナイルの輝きは今何処? 2】
現代カイロに暮らす人々の生活の中で、ひときわ興味深い経験となったのは、〈モカタン〉という町を訪れた事でした。
何とカイロ中のゴミを処理する地域でもあるのです。
殆どがイスラム教徒であるこの国の民の残りの約一割を、アフリカに伝わった古いキリスト教の一派コプト教徒が占めています。
豚肉を食する事を禁じられているイスラム教徒に対して、豚を飼育して日々出る生ゴミを餌として与えるキリスト教徒である彼らは、次第に他のゴミの処理も含め、モカタンという一つの町を中心にカイロのゴミを一手に引き受けるようになったそうです。
このモカタンに入ると、あちこちに各ゴミを載せたトラックが行き来し、それぞれの家の前にも山のようにゴミが積まれています。
しかも人々はこのゴミと共に普通の生活を営んでいるのです。
学校があり、教会があり、飲食店があり…、ですが町中が常時ゴミの臭いに包まれていて頭痛がしてきそうな程です。
この様な環境で生きる人々の健康を考えますとぞっとするのですが、これが彼らの生活の糧であるとしたら、部外者である我々に何ほどの事が言えましょうか。
一方、紙ゴミや金属のゴミを使ってリサイクルをするセンターがあって、すべて手作業で非常に美しいものに生まれ変わらせるその技術過程は驚くべきもので、感動させられました。
古い布をパッチワークにしての敷物やハンドバッグ、瓶の蓋や回りの金属を使ってのキラキラしたパーティー用の手提げ、生のブーゲンビリアの花びらを絡ませた再生紙によるカードや便箋は本当に素晴らしい出来で、私も購入させて頂きました。
偉大で複雑な歴史の宝庫に満ちたこのエジプトを育み見守ってきたナイル河は、今も悠々と流れてはいます。
が、その輝きは果たして本当に人々の生活を照らしているのでしょうか?
軍事政権の腐敗と貧富の差、希望を失った若者の世代、イスラム国の脅威と頻発するテロ。。
解決しなければならない大きな問題を抱えながら、この国はナイルの恵みを取り戻すことが出来るのでしょうか?
(次の章が最後のものになります)