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超人ザオタル(21)突然の落下

2021.07.05 11:44

あの意識の表面に引き上げられる感覚があった。

私は瞑想から出て、ゆっくりと目を開けた。

ひとつ大きな息を吸って、そして吐いた。

視界が定まらず草原の風景がまだぼやけて見える。


私はそこで立ち上がった。

いつもの場所で慣れている気の緩みがあった。

一瞬ふらつくと、私のつま先が岩に引っ掛かった。

倒れる身体を支えようとして、足元の岩に手を伸ばした。


だが、その手は虚しく岩肌を撫でただけだった。

私はそのまま岩山から落ちていった。

身体をかばう間もなく、地面に叩きつけられた。

しばらく身動きができず息さえもできなかった。


何も感じないが、どこか怪我をしただろうか。

目を閉じたまま、身体の痛みを探ってみる。

じんわりと痛みが表面に浮かび上がってきた。

頭から鐘を打ったような痛みが響く。


背中と足首からもかなり痛みを感じる。

立ち上がれるのか。

私はうめきながら、ゆっくりと上半身を起こしてみた。

頭が血で生ぬるく濡れている感じがする。


助けてもらうにもミスラはもういない。

アムシャも瞑想の中でしか会えない。

この草原で出会ったのは、イサトしかいない。

だが、いまではあの大樹がどこにあるのかさえ分からない。


私は強いめまいを感じて、また地面に突っ伏してしまった。

波のように襲ってくる痛みに耐えながら、目を閉じ歯を食いしばる。

日が落ちて、大地はぬくもりを失い私の身体も冷えていった。

このまま死んでしまうのか。


冷えていく身体を感じながら、ここまでかと覚悟した。

痛みの波も薄れてきて、どこか遠くのことに感じてきた。

感覚が次第に失われていくのが分かった。

そして私はそのまま気を失った。


肌に暖かさを感じて私は目を覚ました。

すぐに身体のあちこちが痛みでうずき出した。

頭に触れてみると布がしっかりと巻かれている。

血止めもしてあるようだ。


チラチラと赤い炎がぼやけて見えた。

何が起こっているのか確かめようと上半身を起こそうとした。

だが、私はひとつうめき声を上げただけで動くことはできなかった。

「そのままでいてください」


落ち着いた感じの若い女の声がした。

「私は…」

そうだけ言って言葉が出なくなった。

まだ頭もはっきりとしていない。


「岩山を通りかかったとき倒れているあなたを見つけたのです。

ひどい怪我をしていたので、応急の手当だけはしておきました。

朝になったら、また怪我の様子を見てみます。

火を焚いていますから、そのまま横になっていてください。


…、私はパルティアのアルマティといいます」

私の目はまだぼやけていて見えなかったが、声ははっきりと聞こえた。

「ありがとう、アルマティ。

私はザオタルという旅の者だ」