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旅のチカラ、旅のカケラ

星に願いを(後編)

2008.05.06 14:50


※長い話になってしまったので2部構成に。

ぜひ、同日の前編を読んでからこの後編にお進みください。


「じゃあ、ここで降りろ」(運転手)


あぁ、降りてやるよ!と、啖呵を切れたらなぁ…。

タクシーはおろか、誰も通らないような道。

もしここに残されたら、

とんでもないことになるのは痛いほどわかっている。

出発前から足元を見られっぱなしで悔しい。


「マーさん、ちょっと粘ってみていい?」(KAZ)


頭をフル回転させ、言葉と態度を選ぶ。

血の温度が上昇したのを感じながら、

それでも気持ちは不思議と冷静だった。

運転手に媚びながら、あれこれと単語を並べる。

そして財布を後ろ手に持ち、

大きい紙幣を抜き取ってポケットに忍ばせた。


横目でチラリとマーさんに合図を送ると、

なにをしたいのかを、すぐに感じ取った様子だ。

おもむろに財布を運転手に渡し、

「これが全財産だ」と、

降伏の白旗を振った。


限りなくグレーに近い旗だけど(笑 

財布の中には多過ぎず、

少な過ぎない1011ソム(約3500円)。

そして100円程度の中国元と3ドルを残しておいた。


運転手は渋い顔で金を数える。

彼のいい値の3分の1だ。

もちろん納得はしなかった。


「じゃあ、街に戻ったら銀行へ行って

残りの金を下ろして来い」(運転手)

「いや、もう金はない。あとは日本に帰る金だけだ。

どうしてもダメだというならここで降りるよ」(KAZ)


最後のカードも切った。

運転手が元来た道を戻ることは明白だ。

だったら1000ソムだけでも手にして帰りたいはず。

ここでふたりを捨てていっても、彼には何の得にもならない。

荷物をまとめるフリをしながら、彼の返事を待った。


もちろん、返事はOKの二文字。(渋々だけど)

気の毒に思ったのか、帰り道にクッキーとソーセージ、

そしてスプライトを買ってくれた。

さらに宿泊代として中国元とドルも返してくれた。


演技をし過ぎて悪かったかな?


でも、今日だけで3000ソムも稼げたんだから充分でしょ。

再び8時間、彼の車で揺られた。


その帰り道、空には満天の星が煌めいていた。

そのまま見上げていると、どんどん星の数が増えていくようだ。

流れ星がひとつ、ゆっくりと夜空を滑っていく。

口をポカンと開けたまま、窓に張り付いて星を数えてみた。


いままで見たどんな夜空よりもキレイだった。


この空が見れたのだから、今日の旅も無駄じゃなかったはず。

先の見えない旅、星に願いを―。

ちょっとロマンチックな気分で、

夜空にまどろみ、目を閉じた。