「宇田川源流」 アメリカを共通の敵として中国とロシアがタッグを組んでしまうというバイデン外交の「不始末」
「宇田川源流」 アメリカを共通の敵として中国とロシアがタッグを組んでしまうというバイデン外交の「不始末」
中露善隣友好協力条約は、2001年7月16日、中華人民共和国とロシア連邦の間で交わされた条約。江沢民とウラジーミル・プーチンが署名した。有効期間は20年であり、今年の7月16日にその期限がくることになっていた。中国からすれば江沢民の遺物であり、習近平が江沢民の功績をそのまま使うというのもおかしなものであるが、特に条約期間中にあえてことを起こす必要はない。
当時は中ロ国境が画定していなかったために、まずは友好条約を結び、中ロ国境での戦争を行わないということを考えていたものである。この後の2004年に胡錦涛とプーチンの間で、東北三省側とウイグルにおける国境が確定し、その時にこの条約は必要がないのではないかというような感覚になっていた。しかし、その内容は国境画定によるものばかりではない。
第9条は事実上の防衛協定であり、軍事的関係の強化が第7条と第16条に謳われている。第16条には、ロシアの軍事技術を中国に開示する旨が書かれている。また、環境技術や省エネルギー技術にも及んでいる。第13条では国連安保理事会での協力も盛り込まれている。特に中国が譲れない台湾の問題に関しては、ロシアは「奪うことができない中国の一部(第5条)」であり、「国家と領土の統一を実現する(第4条)」ことに全面協力するとあるのだ。
中国にとっては、
・ 中国人民解放軍には時代遅れな面があり、ロシアの軍事教練と軍事技術を取り入れることにより、その強化が期待できる、
・中国はロシアから燃料、特に石油を安定して供給される。東シベリア・太平洋石油パイプラインなどを活用できる。
・中国の台湾政策の支持国となる。
ロシアにとっては、
・ ロシアはソビエト連邦の崩壊以降、資金調達に悩んでいる。そのため、
・ ロシアの熟練技術者を派遣する、
・ 軍事技術、知識を売る、
・ 石油と天然ガスを売る、
というようなメリットがある。特に2014年の対ロシア経済制裁(クリミア危機によるもの)の時に、中国という経済的な基盤があるということは心強いに違いない。
さて、この条約が延長されることが決まった。それはどのような世界的な意味があるのであろうか。
中露が友好条約の延長で合意
【北京、モスクワ時事】中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は28日、オンラインで会談し、7月に締結20年を迎える善隣友好協力条約の延長に正式合意した。習氏は会談で「中ロの緊密な協力は新型国際関係の模範を打ち立てた」と述べ、先にプーチン氏と会談したバイデン米大統領を念頭に対米結束を誇示した。
中国国営中央テレビが報じた。習氏は「条約が確立した友好の理念は両国の根本的な利益に合致する」と意義を説明。中ロ両国は「引き続き力を合わせ前進する」と強調した。両首脳は「民主や人権を看板に掲げた内政干渉」や一方的な制裁措置に反対することで一致し、米欧をけん制した。
ロシア大統領府によると、プーチン氏は「条約の文言と精神に従い、われわれは両国関係を前例のない高みに引き上げ、21世紀の国家間協力の手本とすることに成功した」と応じた。
会談では、プーチン氏の訪中など今後の首脳外交日程も協議された可能性がある。中国紙・環球時報英語版は今月中旬、プーチン氏の年内訪中について「可能性がある」と述べたデニソフ駐中国ロシア大使のインタビュー記事を掲載した。
中国は共産党創立100年を記念する7月1日に向け、友好国との連帯をアピールしている。プーチン氏は会談で習氏に祝意を伝えた。 【時事通信社】
2021年06月28日 21時44分 時事通信
トランプ大統領の時代は、アメリカはうまくロシアと関係を保っていた。当初は国務長官にレックス・ティラーソン氏を登用し、ロシアとの関係をかなり気にしていた。ティラーソン国務長官は元石油メジャーのエクソンモービルの会長であり、2004年にロシアで勲章を得ているほどのロシア通であった。そのようにしながらトランプ大統領は習近平をアメリカに読んだ時にシリアにトマホークを50発以上打ち込むという、脅迫に近い内容を行うのである。ロシアに対するものと、中国に対する外交を差をつけて、中露間を分離させることを画策していたのである。
この内容はかなり功を奏していた。そのことは中国に対する経済制裁をあのレベルまで行ったこと、そしてそこにロシアが経済協力を行わなかったことなどから見ても明らかだろう。ロシアは日本周辺に偵察機などを飛ばした程度で、中国との一定の距離を保っていた。
しかし、バイデン大統領になってはそうはいかない。
バイデン大統領は、息子のハンター・バイデンが、過去にウクライナのエネルギー会社の役員になるなど、金をめぐる国際的なスキャンダルがあまりにも大きなものである。また中国との間においても、中国の投資ファンドなどに役員としてハンター・バイデンの名前が入っており、そのファンドがウイグルの人権を無視した内容になっていたり、香港のデモ隊を観察する機会に投資しているなど、かなり問題になっている。つまりハンターバイデンは、民主化や人権などよりは、自分の金のために動き、そして自分の金によって様々な政治的な影響を無視するということになる。
その息子ハンターをカバーするために政治をゆがめてしまったバイデン大統領は、アメリカが中国やロシアと仲良くしてしまうと、それらの謎の付帯が開いてしまうことを恐れ、両国と仮想敵国的な動きをせざるを得ない。そうでなければ、弱みを握られていることから、当然に脅迫されるということになる。
そのような「個人的な事象」で外交を行ったことによって、中露がこの条約を延長したということになるのである。
その影響は、イギリスや日本、オーストラリアやインドなど同盟国に与える影響計り知れないということになろう。このことから世界平和はかなり遠ざかったということになるのではないか。