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Pianist由美子UNO が綴るショパンの情景

2019年5月20日記事から、ディレクターズカットお届けします

2021.07.07 22:00

ショパンは秘書であり友人のフォンタナを信頼しきっていた。そのため、フォンタナへの要求は日に日に生活の細かな事まで頼みごとがだんだんと増えていたショパンだった。

フォンタナからの返事はショパンの言いつけ通り仕事をこなすことが仕事であり返事であったのであろう、フォンタナからショパンへの返事の手紙は現存せず不明であるため、

フォンタナの心情は伺い知れないところが多いのであった。

ただ、遡ることショパンが1837年の時ロンドン旅行へ行く前に、ショパンがロンドンで世話になったコズミアンへショパンのことを頼むと一筆したためたフォンタナの手紙から、フォンタナの温かい人柄が伺えるのである。ショパンはフォンタナの人柄の良さが気に入っていたのではなかろうか。

ノアンに着いたショパンは不足の物があれこれ手元にないと不安であった。

ノアンへ送ってほしいショパンにとっての七つ道具はまだあった。

「食器棚の一番上には、フランネルの布のカバーで包んだ、お湯を入れてお腹を温める平らなブリキの湯たんぽがあります。

それと、私が旅行用に買った新しい膨らませて使う空気枕も加えて送ってください。

それから、作曲のための対位法論も送ってください。それらの梱包は、通りの側に包装会社があります。適切な箱に全てを入れるようにしてください。

私の手紙と同じ住所にラフィット・アンド・カヤード便を使ってそれらを早急に送ってください。残りのお金は他のために使わないで保管しておいてください。

シュレジンガーが対位法の在庫を持っていない場合お金は払わないでください。本の話は後回しにして、頼んだその他の物は遅れないですぐにでも送ってください。

とにかく、本の題名は忘れたが、ケルビーニの対位法論がシュレジンガーに在庫があるならそれを送ってください。

もしシュレジンガーが君に手を貸さないのなら、シュレジンガーがの自費出版であるため手数料を支払ってあげてください。

君に、僕は出版社のトルぺナ宛ての手紙を数日以内に送付します。

では、さようなら。郵便を出しに行きます。老人よ(フォンタナよ僕の我がままを許してくれ)、許してくれ。

君は日曜日に手紙を受け取るだろうから、頼んだ物を月曜日に送るようにしてください。」

と、ショパンの秘書フォンタナへの注文は作曲のことから雑用までありとあらゆることが多いのであった。

それから20日が経った頃、ショパンは新作の≪タランテラ≫を書いていた。

それは、ロッシーニの≪ラ・ ダンツァ≫を基に書かれた。タランテラの特徴的なリズムにショパンはこだわっていた。ショパンは始め八分の12拍子で書いていたが、ロッーシーニが八分の6拍子で書いていたらそれを確認したうえで、ロッーシーニの拍子と同じにしようと考えていた。

ロッーシーニが6/8拍子の場合、12/8拍子から6/8拍子へ書き直すようにフォンタナへ指示したショパンであった。ノアンの田舎では資料もなくショパンは自分の記憶だけが頼りで書いていたからだ。

そして、フォンタナへショパンは細かく指示しているのだ。

「私は君に≪タランテラ≫作品43を送ります。 君は僕のタランテラの写譜を丁寧にしてください。

しかし、まず最初にシュレジンガーのところへ行って、ロッシーニの曲集の彼のエディションを見てください。

私はそれが6/8で書かれているかどうかわからないが、

拍子は12/8と12/8の両方の方法で書くことができます。

しかし、6/8はロッシーニと同じ方法でそれが好ましいと言えます。 12/8で書かれているのであれば、写譜するときに、2小節を1小節にする必要があります。

君は理解できますか?

そして、それを全部を写譜してください。

繰り返し記号は付けないで、全部を繰り返しそのまま全部書き写してください。

そして、それについては素早くシュベルト[ドイツの出版社]への私の手紙と一緒にレオに引き渡してください。

彼は、来月8日までにハンブルクを立ち去ると思われます。

僕は500フランを失いたくない。 

トルーべナ出版社に関しては、まだ、充分時間はある。原稿の拍子が正しくない場合は彼にその作品を渡してはいけませんが、もう一度それを写譜をしておいてください。それは、ヴェイセル出版に送る。君はこの苦行のような写譜にうんざりしているでしょうが、私はこれまで書いてきたものよりも悪くならないことを君にお願いするよ。

それから、最後の作品番号の、つまり最後のマズルカの番号を見てください。

[op.41]またはそのワルツ[op.42]パッチー二 から出版されている次の番号に続けて≪タランテラ≫にして下さい。

私は君が喜んで手助けしてくれることを知っているので、私は心配していません。

これ以上は君にたくさんの仕事を頼む事柄はもう僕はないと思います。

僕がパリのル・トロンシェ5番地を出発する前に、もっと多くの時間を過ごすことができたら君にこのような面倒をかけずに済んだのだ。

しかし、まだ、君に頼みたいことがあります。

チャールズがネルで覆われた湯たんぽを忘れたのだよ。(ショパンは得意のスケッチで説明した)食器棚にあったらそれを送ってください。(ショパンは20日前も湯たんぽのことをフォンタナに頼んでいるがまだ送られてこないため、再度頼んでいる。よほど困っていたのであろう)

ヴィトヴィッチの詩の写しを購入してください。≪巡礼者の夜 59 ≫という題名です。

それから、パレロワイヤル37番の劇場側のアーケードの店で、14フランで私に仕事用の普段着を購入して下さい。

シャツのように正面にボタン留めされた仕事着です。 

それは47番地または27番地にあるどこかでこれを売っている。僕は1週間前にここで一着は買いました。 それは真珠のボタンを持っていて、2つの胸ポケットで、きちんと縫われているのだよ。ちょっと、待てよ、気にしないで、

私の親愛なる友人よ。僕は気が変わった。僕はこれらのことは辞めます。必要になったらまた頼むよ。

それより、≪タランテラ≫をレオに渡して、それで得たお金を預かっておいて下さい。

君に迷惑をかけてもう一度お詫びします。今日は君が送ってくれた家族からの手紙のうちの1通が届いたよ。。門番に僕への手紙を全て君に渡すように言って下さい。

私に届くすべての手紙を忘れないでくれたまえ!」

ショパンがこのとき家族から受け取った手紙は現存していないが、ショパンの言葉から、

手紙は複数あり、誰かがどこかで抜き取っていることになる。

フォンタナへ雑用を頼むことがショパンも本当は心苦しく思っていた。

しかし、ショパンには自由な行動が出来る時間が少なかったのだ。彼はサンドと言う監視員に従わざる得ないことが多かったからだ。

フォンタナの写譜の仕事は苦労を伴ったことは言うまでもない、そのうえに、ショパンの

細かな注文にもフォンタナは忍耐強くショパンを支えていたのだった。