各方面の反応~やじきたCの場合(「始まりの日」番外#1)
(その一)
「聞いたよ、剣望くん。卒業したら、甲賀へ帰るんだって?」
「耳が早いな」
「そっかあ、寂しくなるねー」
「でも、大学の入学試験は受けるんだろ」
「まあ、実力試しってことで」
「雪也が飛び級して大学受験ってのにも驚いたけどね。まあ、あいつらしいといえばあいつらしいけど」
「小鉄も同じトコ受けんだろ。無事受かったら、また徳成邸に戻んのかい?」
「多分な」
「そっかー。卒業したら、離れ離れになる訳か。二人とも寂しくないかい?」
「?何が?」
「だって、甲賀と東京だろ。遠距離恋愛って訳じゃん」
「ははは、何言って・・・」
狭霧は笑いかけ、一瞬後、ぎょっとして矢島と篠北を見た。
「おおおお前たち?!」
矢島と篠北は、にやにやとした表情で狭霧を見返した。
「ふっふっふっ、あたしらが気付いてないと思ってたのかい?」
「甘く見てもらっちゃ困るねえ」
「なっ何で・・・」
焦りながら狭霧が聞くと、二人は互いの顔を見ながら、
「そりゃね。雰囲気で分かるよ」
「うん。あ、できた!って思ったもんね」
なんで、こいつらは、余計な事にまでこう鋭いんだ・・・狭霧は頭を抱える思いだった。
「心配しなくても、雪也なんかは鈍いから気が付いてないよ」
苦悩する狭霧の背に、篠北の慰めにもならないフォローが飛んだ。
(その二)
「まあ、人生いろいろだからね。でも、二人ともAIDSだけには気をつけておくれ」
「エッ、エイズ?! きっ、気を付けろってどーゆー意味だよ?!」
「え?じゃ、まだそこまで行ってないの?」
「だから、行くとか行かないとか、一体何の話だよ?!」
「それじゃ、小鉄は一年も据え膳に手ぇ出さなかったのかい? すごいね、流石人間できてるね。鉄の自制心だねー」
「やじさん、剣望くんには刺激が強すぎるよ、その言い方・・・」
直截すぎる矢島のセリフに殆ど地面にめり込んだ狭霧を、篠北は気の毒そうに見て言った。