【COLUMN】Krzysztof Kieślowski をご存知ですか
Krzysztof Kieślowski(クシシュトフ・キェシロフスキ)は
ポーランドが世界に誇る偉大な映画監督です。
(1941年6月27日生 / 1996年3月13日没)
私が初めて鑑賞したキェシロフスキ監督の作品は
WOWOW で放映されていた『デカローグ』でした。
デカローグは、聖書の十戒を題材として製作された
10編構成のテレビシリーズです(1989~1990年放映)
ポーランドにおける初回放映時の視聴率は52%
最終回には64%もの高視聴率を獲得したようですので
大きな話題と注目を集めていたことがうかがえます。
登場人物たちの心の暗部(闇)を
鋭く切り取るばかりではなく
当時のポーランド社会主義が色濃く反映されている為
作品には全編を通して重い緊張感が漂っています。
画面から伝わる息苦しい緊張感を感じつつも
一瞬とて目を離すことができなかったのは、そこに
キェシロフスキ監督の人間愛が溢れていたからです。
時には痛々しく、また時には滑稽かつシュールに
そして時には救いようなく物語を描きながらも
同時にとても温かい愛溢れるまなざしを
キェシロフスキ監督は登場人物たちへ向けていました。
まだまだ人生経験の浅かった私ではありましたが
ひとは誰しも、見えない闇をひっそりと抱きかかえ
自分の闇を隠しながら怯え生きているのだと感じました。
キェシロフスキ監督は、人間の心の闇にどこまでも迫り
その闇へ救いの手を差し伸べていたように思います。
54年の生涯をかけて「目には見えない何か」を
ずっと追い続けていたのかもしれません。
あくまでも個人的な私見に過ぎませんが
キェシロフスキ作品の見えないテーマとして
スピリチュアルが扱われていたように思います。
日本でも好評を博した『ふたりのベロニカ』は
同じ日 / 同じ時刻に生まれ、同じ容姿と才能や癖
そして同じ先天性心臓病を共有する
ポーランドとフランスの女性ベロニカが描かれています。
お互いの存在を知らないふたりではあるものの
いつもお互いのことを感じ取り合っているふたりに
ツインフレームのような印象を受けました。
検閲による6年間の上映禁止処分を受けた『偶然』は
宿命のひと で少し触れました「運命」について
とても不思議な視点から衝撃的に描かれています。
ポーランド人の青年ヴィテクが・・
ワルシャワ行きの列車に飛び乗れた場合
列車に乗ろうとする所を駅員から制止された場合
列車には乗れなかった場合
3つそれぞれのパターンによって
その後のヴィテクの運命は大きく異なる結末を迎えます。
ほんの些細な偶然と、ほんの些細な選択から
私たちの運命は全く違ったものになること
そして、それぞれ異なった運命はみな
パラレルワールドで同時進行していることを
キェシロフスキ監督は伝えたかったのかなと
私は個人的にこう解釈しています。
(『偶然』の主要テーマは反政府になっています)
最後に、キェシロフスキ作品で
私が特に感銘を覚えたもののご紹介
そして、数ある名言の中から私の一番好きな
キェシロフスキ監督の言葉で締めくくります。
私もキェシロフスキ監督のように
「目には見えない何か」を
心の目を開いて見続けていきたいです。
『終わりなし』(1985年)
『ある運命に関する物語 / デカローグ第1話』
『ある父と娘に関する物語 / デカローグ第4話』
『ある愛に関する物語 / デカローグ第6話』
『ある過去に関する物語 / デカローグ第8話』
『ふたりのベロニカ』(1991年)
『トリコロール / 赤の愛』(1994年)
感情を研ぎ澄ませてみてごらん
あなたの悲しみを地球のどこかでキャッチして
まるで自分の悲しみのように悲しんでくれる人が必ずいる
パリの地震をニューヨークのねずみはキャッチする
人間には何故それができないのか
Krzysztof Kieślowski