タコが見えてしまったばかりに(2人台本)
【ジャンル:ギャグ寄り】
【所要時間:20~25分程度】
●上記イメージ画像は、ツイキャスで生声劇する際のキャス画にお使い頂いても構いません。
●ご使用の際は、利用規約をご一読下さい。
【人物紹介】
・百島 富由汰(ひゃくしま ふゆた)♂
居城より少し年上の社会人。
どうしても雨に濡れたくない。
実験好きで変人。
何か秘密を抱えている様子。
・居城 夕季乃(いしろ ゆきの)♀
大学生。
地味だがよく見ると可愛らしい。
何かトラブルを抱えている様子。
※演じる際のポイント※
百島は変わってるので、振り切ってやってもらえると楽しいです!声張れないという方も、言い方をオーバーめにやるのがコツです(*´ `*)
↓生声劇等でご使用の際の張り付け用
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『タコが見えてしまったばかりに』
作:レイフロ
百島♂:
居城♀:
https://reifuro12daihon.amebaownd.com/posts/19281022
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以下、台本です。
(SE:雨の音)
百島:
最悪だ。雨だ!
常に折り畳み傘を携帯している俺が、昨日鞄を新調したせいで入れ忘れてしまった。
俺はどうっっしても雨に当たるわけにはいかない!
10メートル程の短い歩行者用トンネルの出口で立ち往生していた俺は、途方に暮れた。
助けを求めようにも、このトンネルは裏道すぎて誰も通っているのを見たことがない!
詰んだッ!!
…と思ったその時、後ろから救世主の足音が聞こえた…!
百島:
あっ!キミ。そこのキミ!
居城:
え?私?
百島:
そうキミ!傘を貸してくれないか?!
居城:
すみません、傘はこれ1本しか持ってなくて…
百島:
それでいいから貸してくれ!
居城:
は?
百島:
俺は傘を忘れてしまって、とても困っている。
居城:
そのようですね。
百島:
一刻も早く家に帰って、思いついたこの理論を検証する必要があるんだ…。
俺にとって雨は毒のようなもの!
だから傘を貸してくれないか?!
居城:
毒って…雨に当たったって死ぬわけじゃあるまいし…
百島:
死にはしないが、大変なことになるんだ!
さぁ、傘を貸してくれ!さぁ!
居城:
嫌です。
百島:
何故だッ?!
居城:
あなたに傘を貸してしまったら、私はどうするんですか?
百島:
ここで雨が止むのを待つか、ずぶ濡れになって帰ればいい!
居城:
…失礼します。
百島:
待ってくれ!!
居城:
ちょっ、手をひっぱらないで…
…って何これ、どういうこと?!
百島:
ふふふ。見えない何かに手を掴まれている気がするかい?
そうだろうそうだろう?
でも俺の手はここだ。掴んでいないよ?どうしてだろうね?
居城:
い、一体何を言ってるんですか?!
百島:
キミはそう…呪いにかかっているんだ。
「目の前の男に傘を貸すまでそこから前に進めない」という呪いにね!
どうする?俺に傘を貸すかい?
居城:
離して下さい…!
百島:
離すも何も、俺の両手はここだ。キミには触れていないよ?
居城:
嘘つかないで下さい。
私の腕を掴んでるじゃないですか!早く離して下さい。
百島:
だからキミが動けないのは呪いにかかっているからであって…
居城:(ボソッと)
…焼きにすんぞ…?
百島:
へ?
居城:
早くこのタコみたいな触手離さないと、タコ焼きにすんぞ?!?
百島:
…へ?
タコみたいな触手って…嘘だろ?見えてる?俺のタコ、見えてる?!
居城:
吸盤ヤバっ!あとヌメヌメしてるっ!
てゆーかそれどうなってるんですか?!
肩からタコの脚が1本生えてるように見えるんですけど?!
新手のコスプレ?!
百島:
信じられない…本当に見えているなんて。
このタコが見える人に会ったのは初めてだ…!
居城:
私だって、生きてるタコが肩から生えてる人に会ったのは初めてですよ!!
え?まじでタコ?タコって海にいるタコぉ?!
百島:
あぁ。1本しかないが、これは正真正銘タコの脚だ。
居城:
まじか…そ、そうなんだ…
百島:
ショックを受けるのも無理はないが…
って、何をそんなに鞄をゴソゴソしている?
居城:
シャキンッ
百島:
え?何それ…
居城:
グサッ
百島:
あぎゃあああああ
居城:
よし!タコゲットォォ!
百島:
タコゲット!じゃないよ!なんでぶった切ったの?!
このタコは俺の肩から生えてるって言ったよねぇ?!なんで容赦なくぶった切ったのぉぉぉ?!?
居城:
だって手離してくれないから。
それにタコって、食いちぎられてもまた再生するんでしょ?
百島:
するけども!だとしても普通切る?!ねぇ?!
痛いんですけど?ねぇ?痛いんですけど?!
居城:
無脊椎(むせきつい)動物って痛覚あるんですか?
百島:
あるよぉっ!!
神経構造がもっと単純な無脊椎動物だったらともかく、
タコは多少なりともあるよぉっ!!!
居城:
多少だったらセーフですよね!
百島:
アウトだし、そそくさと凶器をしまうんじゃない!!
なにそれナイフ?銃刀法違反だからね?お巡りさぁぁぁん!
居城:
違います。30センチ定規です。
百島:
え?なんでそんなもの常備してる??
いや別に持っててもいいけど!そんな鋭利な定規は危険だろ!
居城:
普通の定規ですよ?目にも止まらぬ速度で振り下ろしただけです。
百島:
それでスパーンと俺のタコの脚は切れちゃったわけ?
え?まじ?!
居城:
タコが肩から生えてる方が、「え?まじ?」ですけど?
百島:
確かに!
居城:
納得すんのかい!
百島:
うー…いたたたぁ。
居城:
…しょうがないですね、今日の晩御飯のおかずまで頂いてしまったので、
今回はこの傘、お貸しします。はいどうぞ。
百島:
ありがとう…。
って、え?待って?晩御飯のおかずって?
居城:
今日はタコ焼きにしますね!
では、さよなら!
百島:
え?嘘でしょ?
さっき切り落とした俺のタコ…食べるのぉぉぉぉぉぉぉ?!?!?
(間)
百島N:
6月10日。
天気:晴れときどき雨。
今日、俺の肩から生えているタコが見えるという女性に会った。
彼女は、雨で困っていた俺に傘を貸してくれたが、
その代わり所持していた30センチ定規で俺のタコをぶった切りやがった!
白昼夢だったと思いたいが、こうしている今も俺のタコは
半分からぶっつりと切れたままだ。
寝ればまた生えるとはいえ…とんだ一日だった。
居城N:
次の日。
百島:
で、なぜキミは俺の部屋に上がり込んでいるのかな?
居城:
傘を返してもらいにきたんですよ。
百島:
うん。そのために昨日のトンネルで待っていた、というのは理解出来る。
居城:
私の傘は家に置いたままだって言うから、
わざわざここまで付いてきたんですよ?
百島:
それはすまなかった。
でも普通、玄関で返してもらったらそこでサヨナラだろ?
居城:
違いますよ。
「わざわざ来てもらって悪いね。お茶でも飲んでいくかい?」でしょ?
百島:
そんなナンパみたいな真似出来るか!
居城:
紳士なんですね。無脊椎動物のくせに。
百島:
言っておくが俺は、タコの脚が肩から1本生えているだけで普通の人間だっ!
居城:
えぇえぇそうでしょうとも!
タコの脚の1本くらい、うっかり肩から生えちゃいますよねぇ!
百島:
なんでそんな煽(あお)ってくるの?!
居城:
でもすごい!昨日切り落とした部分、もう再生してるんですね!
百島:
残念ながら寝て起きれば元通りだ。
居城:
しかも服ってどうなってるんですか?これすり抜けてません?!
百島:
あぁ。このタコの脚は、物理的に存在しているわけではないんだ。
だから服の干渉は受けない。
居城:
でも昨日はその触手で私の手を掴みましたよ?干渉してるじゃないですか!
百島:(力説する)
人間の脳における情報処理というのは実に面白いもので、
例えば幽霊がいると信じる者にとっては姿が見えるし、場合によっては触る事も出来る!
つまりこのタコも概念的には似たようなものなんだ。
タコが見えない者が、俺の右肩をトントンしてもタコの感触を得ることは出来ないが、
見える者にとっては、触ることが出来る。
だが、実際に服をすり抜けてしまうことからして、現実には存在していないとも言える。
この矛盾こそが…
居城:(上記セリフの語尾に被せて)
もういいです。よーくわかりました。
百島:
鼻をほじるな!飽きてんじゃねーか!
居城:
それにしてもあなたの部屋って、人類を滅ぼす生物兵器でも作ってるんですか?
百島:
俺のこと、地球侵略をもくろむタコ型宇宙人だと思ってるだろ?!
居城:
なんかピタゴラスイッチ的な器具がたくさんありますね~?
百島:
これは俺の研究だ!
昨日だってこの研究のために早く帰ろうとしていたんだ。
居城:
何の研究なんですか?
百島:
「タコ、雨ハジーク 改良版 試作ナンバー1262」だ!
居城:
は?
百島:
「タコ、雨ハジーク 改良版 試作ナンバー1262」だ!
居城:
全く同じこと言いましたね。
百島:
俺のタコは雨に濡れてしまうと、大変なことになる…!
居城:
そんなようなこと昨日も言ってましたね。
雨に濡れると、タコの脚が増えていくとか?
脚が全部揃うと、神の龍と書いてシェ○ロンが現れるとか?
百島:
それだったら嬉々として雨に濡れるわ!
雨乞い(あまごい)に一日の大半を費やすわ!!
居城:
じゃあ何が大変だっていうんですか!
百島:
…墨を吐く。
居城:
え?
百島:
吐血するかのようにゲボゲボ墨を吐いてしまう。
居城:
それは……
地味ですね。
百島:
地味とはなんだ!ものすごく苦しいんだぞ!
だから昨日傘を貸してくれとあんなに一生懸命お願いしたのに、キミと来たら!
全然貸してくれないどころかタコの脚を切り落とす始末!
30センチ定規でだぞ?!よりによって30センチ定規でザクッとためらいもなく!
居城:
だって、助けを求めてきた人の肩にタコが生えてるなんて思わないじゃないですか!
雨に濡れたら墨吐いちゃうかもしれないなぁ、なんて思うわけないじゃないですか!!
百島:
世の中には時としてあり得ないことが起こるもんなんだよ!
俺がうっかり雨に濡れて墨をゴボゴボ吐いて、
「キャー!この人墨吐いてる!タコ人間よぉ!」と騒がれて、
人体実験のために、どこぞの怪しい地下研究所に引き渡されたらどうする?!
居城:
知るか!
百島:
あーそうだろうさ!キミには他人事だろうさ!
もう興味がないなら帰れ!
居城:
あーもしもし?どこぞの怪しい地下研究所ですか?
あのぉ、タコみたいな宇宙人を発見したみたいなんですけどぉ…
百島:
言ったそばからこれかぁぁぁ!
これだからすぐ男の家に上がる尻軽女はぁぁぁ!!(携帯を取り上げる)
居城:
あーん、携帯返してぇ!
百島:
もう電話しないと誓うか?!キミの命にかけて誓うか?!
居城:
そもそも電話してないし!
つか、今めちゃくちゃ焦ってたのダッサーw
百島:
もう帰れー!!!
居城:
怒らないで下さいよ、タコ先輩!
百島:
は?タコ先輩?
居城:
まだあなたの名前知りませんし、私よりは年上かなと思ったので。
百島:
先輩という呼称は、例えば学校や会社など、共通の繋がりがあってこそ使われるべきものであって
何も関係のない人に対して…
居城:
何も関係ないなんてヒドイです…!
だって昨日はあんなに…!
私のナカに、入ってきてくれたじゃないですか…///
百島:
誤解を招くような言い方をするな!
ん?まてよ?「私の中に」って…
キミ、まさかとは思うが、昨日ぶった切ったタコ、まじで食べたのか?!
ねぇ?!タコ焼きにしたのか?!?!
居城:
ごちそうさまでした!!
百島:
はい、お粗末様でした。
…じゃねーんだよぉぉぉ、ふざっけんなよぉぉぉ!
居城:
で、結局、「タコ、雨ハジークなんちゃらかんちゃら」って何なんですか?
百島:
ようやくその話に戻るのか!
まったく…ゴホン!
簡単に言えば、雨を弾くクリームを開発してるんだ。
タコに塗っておけば突然の雨も怖くない!
それに雨だけじゃない、海にも入れるようになるんだ…!
居城:
海水に濡れても墨吐くんですね…
百島:
海に行けるようになったら、砂浜で美女と水をかけあって
「キャー冷たぁいヤダぁ」
「あはは、待て待てぇ」が出来るようになるんだぞ!
居城:
それをやるには、まずメスのタコを探さないとですね。
百島:
なんでタコと結ばれる前提なんだよ!
俺は人間だわ!!
居城:
その雨を弾くクリームって人が口に入れても大丈夫なやつですか?
百島:
は?ダメに決まってるだろ。
これは特殊な製法で作るクリームだから、体内に入ったら危険だ。
居城:
じゃあダメです。塗らないで下さい。
百島:
なんで?!
居城:
食べられなくなるからです!
百島:
は?
居城:
私、タコが大好きなんです!
百島:
いやいやいやいやいやいやいやいやいや
待て?おかしいだろ?
キミは、俺の肩から生えてるタコを今後も食べようとしてないか…?
居城:
はい!とても美味しかったので!!
百島:
味の感想なんて知りたくない!
居城:
だってタコが生えてるから、うっかり雨に濡れるとヤバいんでしょ?
だったら毎朝根本から切っちゃえばいいじゃないですか。
寝て起きてぶった切って、寝て起きてぶった切って、寝て起きてぶった切って…
百島:
発想がサイコパスっ!!
居城:
というわけで、今日からここで暮らしてもいいですか?
百島:
意味がわからん!なぜそうなる?!
居城:
朝どれのタコが一番新鮮だからですよ。
一緒に住めばすぐ取れます。
百島:
そんな家庭菜園みたいな感じで言うな!
怖いっ!まじでこの人怖いよ!
居城:
でもそれはそれとして、少しは運命感じません…?
百島:
はぁ?!
居城:
今まで誰もそのタコが見える人はいなかったんですよね?
百島:
そうだが?
居城:
運命的だと思いません?二人はいずれ恋に落ちる…かも?!キャー!
百島:
俺と恋人になったらタコを毎日食えるとか、そんな特典ねーから!!
居城:
チッ
百島:
露骨に舌打ちをするな!
居城:
じゃあ2,3日でいいので、ここに置いて下さい。
百島:
まぁ2,3日ならいいか…ってなるかぁぁぁ!!
居城:
ノリツッコミが冴えわたってますね!
百島:
誰のせいだ誰の!!
駄目だ!ダメに決まってるだろ!
居城:
私、「居城 夕季乃(いしろゆきの)」って言います。
タコ先輩の名前も教えて下さい。
百島:
え?あぁ、「百島 富由汰(ひゃくしまふゆた)」…だが…
居城:
百島(ひゃくしま)先輩!
じゃあ私、急いで着替えとか持ってきますんで、夜にまた来ますね!
百島:
は?!何の話だよ?!
居城:
2,3日泊めてくれるって言ったから!
百島:
言ってない!何サラッと嘘ついてんだよ!
居城:
じゃあどこぞの怪しい研究機関にまじで電話してもいいんですね?
百島:
す、すればいいさ!どうせこのタコの脚が見える者なんてそうそういない!
誰も信じてはくれんぞ!
居城:
じゃあこれを警察に提出してきますね。
百島:
は?動画…?これ、昨日の…
居城:
私が定規でタコを切り落として、先輩が痛がってハァハァしてる時の動画です。
映像にもタコは映ってませんでしたが、
それゆえに、ここだけ見ると今にも襲ってきそうな変質者みたく見えませんか?
百島:
何を、言って…
居城:
警察に持って行くより、ネットに流した方がいいかなぁ?
百島:
オイ、冗談じゃない!俺を脅す気か?!
居城:
はい。2,3日ここに泊めてくれたら動画は消します。
さっきの口ぶりからして先輩、今は彼女もいないんでしょ?
私は未成年でもありませんし、何か問題ありますか?
百島:
き、昨日会った女の子をととと泊めるなんて紳士としてはだなぁ!
居城:
お気遣い感謝します。
でも本当に紳士だったら、困っている女性を放っておくなんて出来ませんよね?
ただ部屋の端を貸してくれるだけでいいんです。お願いします…。
(間)
百島N:
6月11日。
天気:快晴。
なぜこうなった…?
俺は早く雨を弾くクリームの開発を進めなければいけないわけで、
その他の何にも関わっている場合ではないのだ。
だが今、隣の部屋には女の子がいる。
風呂あがりの女の子が…!
いやでもたった2,3日泊めるだけだ。
しかもこれはれっきとした人助けのためだ。
た、多分…。
俺は冷静だ。とても冷静だ!史上最高の冷静だッ!
女がなんだ!所詮は同じ人間!別にどうということはない!
なぜか俺の肩のタコがめちゃくちゃ荒ぶっているが…!
おおおおおちつけ!おちつけ!
スーハ―…(深呼吸)
でも誰か説明して欲しい…
どうしてこうなったぁぁぁ???
第一話(前編?)End.
あとがき。
続きも書く予定ではいますw
前後編になるか、長さによっては1〜3話くらいになるかもしれませんが!
なぜ居城ちゃんが泊まりたがるのか、
百島くんの荒ぶったタコはどうなるのか(?)
おたのしみに( ◜ω◝ )