『沖縄発新しい提案―辺野古新基地を止める民主主義の実践』
『沖縄発新しい提案―辺野古新基地を止める民主主義の実践』
新しい提案実行委員会著、ボーダーインク、2018年
書評1:
2017年ごろ、沖縄県内外のさまざまな世代のウチナーンチュによって、憲法や民主主義の観点から県外移設論を検討するネットワークが生まれました。
議論の過程で、どのようなプロセスで県外移設が実施されるかの具体案が出され、シンポジウムやChange.org(オンライン署名)、地方議会への働きかけなどを通じて、日本全体に問う取り組みを開始。本書はその一環として刊行されました。第一部に収録された論文では、以下のプロセス案と、その根拠が述べられています。
「1.辺野古米軍新基地建設工事を直ちに中止し、米軍普天間飛行場を運用停止にすること。
2.米軍普天間飛行場の代替施設について、沖縄以外の全国のすべての自治体を等しく候補地とすること。
3.その際、米軍基地が必要か否か、普天間基地の代替施設が日本国内に必要か否か当事者意識を持った国民的議論を行うこと。
4.国民的議論において米軍普天間飛行場の代替施設が国内に必要だという結論になるのなら、その結果責任を負い、民主主義及び憲法の精神に則り、一地域への一方的な押付けとならないよう、公正で民主的な手続きにより決定すること」
「軍事的に沖縄である必要はないが、本土の理解が得られないから辺野古が唯一」というのが、日米両政府の安全保障分野担当高官も述べている辺野古新基地建設の根拠です。しかし、これこそが「構造的差別」に他なりません。
「新しい提案」は、「沖縄以外の全国のすべての自治体を等しく候補地とする」ことで、新基地建設の根拠をダイレクトに突き崩していく効果を狙いました。本書には、意見書採択を求める陳情書案も掲載されており、全国どこでも誰でも一人でも始められます。各地の地方議会から国に意見書が提出されれば、これからの(埋め立て承認)撤回訴訟にも活かされます。18年12月、私が出した陳情に基づき小金井市議会(東京都)が意見書を提出。19年2月には小平市(東京都)でも市内在住沖縄人が請願し、同様の意見書が提出されました。
第二部には、「新しい提案」への応答として、立場や専門分野の異なる人たちの意見が収録されています。新基地建設を止めるために、沖縄県内外あらゆるアイデアの結集が必要です。「新しい提案」もその一つのアプローチであり、さまざまな局面での活用が期待されます。(米須清真@首都圏):『沖縄の米軍基地を「本土」で引き取る!』(コモンズ、2019年)より転載
書評2:
2017年に沖縄の市民たちによって提起された「新しい提案」は、私たちに辺野古新基地建設を止めるための具体的行動を促している。提案の骨子は以下の4点である。
「1.辺野古新基地建設中止・普天間基地運用停止、2.普天間代替施設は沖縄県以外の地域を候補地とする、3.米軍基地の必要性、普天間代替施設の必要性について当事者意識をもって国民的議論を行う、4.必要ということになれば、公正で民主的な手続きで候補地を決める」
この提案は、2020年時点で、全国すべての1788の自治体に意見書や陳状書として提出され、東京都小金井市など39の議会によって採択された。ネットでの署名活動は7000名以上の賛同を得ている。
「新しい提案」は、米軍基地集中が表している沖縄への「構造的差別」が「本土」の民主主義と地方自治をも危うくしていることに気づかせる。「国民的議論」を展開するための「本土」市民の努力が必要だ。(門倉正美@福岡)