ミスミソウ 押切蓮介
半年前、父親の仕事の都合で東京の学校から大津馬中学校に転校して来た野咲春花は、クラスメイトからの壮絶なイジメに遭っていた。
春花は家族に心配を掛けまいとイジメに遭っていることを隠し、中学校卒業までの残り2ヶ月間を必死に耐えようとするが、春花へのイジメは悪化の一途を辿るばかり。
遂にイジメを知った家族の勧めで春花が不登校を行ったある日、イジメっ子達が彼女の家に乗り込み両親と妹に危害を加え、家に火を放つという事件が起こる。
春花の妹・祥子は大火傷を負いながらも助かったが、両親は命を落としてしまった。
やがて事件の真相が露見することを恐れたイジメっ子達は春花に自殺するよう強要。
だが、それがきっかけとなって春花は事件の真相を知り、家族を奪ったイジメっ子達に己の命を賭けた凄惨な復讐を開始する。
この漫画の舞台は、少子化と過疎化で廃校になる中学校。
ここの生徒は、自分たちが最後の卒業生であることに誇りと結束力を持っている。
東京から転校してきた野咲春花は異物として、机に落書きされたりごみ溜めに私物を捨てられ画鋲を仕込んだ上履きで蹴られるなど壮絶ないじめにあう。
春花は、「お前はミスミソウのようだ。卒業式まで耐えて、この街を一緒に出よう」と相場に励まされ生きていこうとするけど、いじめっこに家ごと家族を焼き殺され壮絶な復讐劇を開始する展開を、娯楽も何もない地方特有の閉塞感、次第に明らかになるいじめの首謀者小黒の東京に理容師の勉強に行きたくても行けない焦燥感やいじめの標的に戻りたくなくて春花を積極的にいじめる佐山の狂気などの病んだ部分、指や顔をナイフで切り裂き鉄パイプで体をバキバキへし折るなどの残酷な人体破壊描写、かつていじめにあった過去を持つ教師や自分の子供がいじめにあわなければ良いとする親のモンスターぶりを絡めて描いた傑作青春ホラー漫画です。
春を待たずに散った命が、切ないほろ苦い後味を残します。