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Alden of Tuck

ホーウィン訪問記 (2016)

2017.01.26 12:18

ホーウィンの副社長であるニックを紹介頂いてから1年半、調整に調整を重ね、ようやく2016年6月にホーウィン社訪問が実現しました。ホーウィンのシェルコードバンが作られる様子を詳しくご紹介したいと思います。(写真はLeica M3 + Sumillux 50mm/f1.4 + Kodak Tri-X)

アポが午後1時半、近くまで行ってからお昼を食べようと思い、ニックに紹介してもらった最寄駅Damenにあるカフェで軽く食事。とはいえ、今までなんどもやりとりしてきた副社長のニック(欧米系の会社でVice Presidentは通常部長級ですが、さすがにニックはホーウィンの5代目ですからNo.2のはず!)に初めて会うのはもちろんのこと、なんといってもあのホーウィンを訪問することがいよいよ実現するということで食事は全く喉を通りません。。。

さすがに早く行っても悪いかなと思いましたが、時間を潰すのももどかしく、することもないのでとりあえずスーツケースをゴロゴロやりながら歩いて行くことにしました。てくてく20分ほど歩くと、なんとなくどこかで見た煉瓦造りの建物が現れました。そして、どこからともなくあの芳しい上質のレザーの匂いがしてくるではないですか!

「もしかして、あれ?おー、あれがホーウィンか!」と一緒に連れて行ったオールデン初心者の同僚も興奮を禁じ得ません。笑

建物は煉瓦造りの伝統ある古い工場といった感じ。重いドアを開けて中に入ると、役所の待合室のような小さな部屋があり、そこで「ニックにアポがあるんだけど」と名前を告げてしばらく待ちます。

すると、”Hey, ****? Good to see you!”と副社長のニックがスタバのコーヒー片手に現れました。従業員の方と食事にでも行っていたのでしょうか。それよりも、まず自分たちとほとんど年齢が変わらないと思われる爽やかな青年であることにまず度肝を抜かれました。そうです、副社長ということでついつい、すっかり頭の禿げ上がった太ったおじさんをイメージしていました。笑

会議室に案内され、日本からのお土産を渡し、荷物を置いたら早速工場見学です。まず原皮が積まれた入荷エリアからスタート。バイソン、牛革については北米から、コードバンの原料となる馬革はフランス、ベルギー、ケベック(カナダ)から仕入れるようです。ビニールの下には食肉用等の馬の原皮が毛の付いたままの状態で山積みになっています。実は、この辺りから“かなりな”匂いがしてきます。例えると鰹節のような生臭い匂い。。。「芳しい上質なレザーの匂いが工場の中に充満していて、羨ましい職場だな。。。」と思っていたのが甘かったです。。。これは工程が進むほどきつくなってきます。笑(ビニールの下に原皮が!血や毛などがついてかなりグロテスクです。。。)

この毛の付いた原皮を回転式の樽の中に入れ、酸と一緒に一昼夜回転させながら、毛を取り去ります。(画像のものはクロムエクセルです)

次に、オークの皮などの秘密の原料によって作られた液体が入ったプールで、ゆっくりと数ヶ月かけてなめされていきます。(これがベジタブルタンニングの工程です!)

なめし工程が終わると、今度は革を裏側から機械で削っていきます。すると、革の内部に、非常に緻密な組織が現れてきます。

画像の左側と右側のシミになった部分がわかりますか?この右側の部分がコードバンです。この左側はただの馬のお尻の皮です。ここはいくら磨いてもツルツルにはなりません。(笑)(茶色のシミの縁の右側がコードバン!)

みなさんの靴をよく見ると、つま先やかかとの部分はザラついたコードバンになっていたりしませんか?ちょうど境目がつま先やかかとに来るように靴を仕立てているみたいですね。

次の工程では、先ほどの茶色の縁の部分を境目にしてコードバン部分を切り出し、乾燥させます。ガラスの板に貼り付けてある、メガネのような形の革をご覧ください。これがシェル(二枚貝)です。つまり二枚貝のように対(お尻の両側ですね)になっているからシェルと呼ばれるんでしょう。

この後は、職人のおっちゃん達が、無造作に色をヌリヌリしながら染色していくんですが、ここの画像はノウハウがあるそうで掲載NGでした。この画像の右側でその作業をやって、色付けが終わったコードバンが左側に積まれていきますので、ご想像ください。ちなみに、あれでは絶対色ムラになるだろうな、という感じの作業です。笑

(動画はクロムエクセルの色付け作業です)


次の工程は、スエード側(起毛側)であるコードバンの表面を機械で寝かしつけ、艶を出していく工程です。機械でガッチャガッチャとやりながら艶を出していきます。これによって、起毛は一方向に寝かしつけられますので、コードバンは見る角度によって、濃く見えたり、色が薄く見えたりする、というわけですね。

(艶出し作業の様子)


出来上がって出荷を待つコードバンが山のように積み上げられています。ちなみに、ダークコニャック、カラー4、なども普通にありました。「おぉ、今でも作ってる!」と思わず嬉しくなりました。主に靴以外のショップ等へ卸すようでした。「ウィスキーなど色の薄いコードバンは作るのが非常に難しい。革に傷があったりすると、もうそれだけでウィスキーとしては使えない。シミがあってもダメ、うまく染まらなかったら、再度やり直して今度は黒にするんだ」とのことでした。年々良い材料が手に入らなくなり、試行錯誤して作っているんだという様子が伝わって来ます。

カラー4です。ちなみに、ニックが履いているインディーブーツ(画像右下)ですが、ダークコニャックとのことです。さすがホーウィンです!

最後は検品エリア。ここに大量のウィスキーやナチュラルコードバンがあり、こんな感じでシミが出たりするともう一度やり直して黒にする、とのことです。何となくまだらになっているのがわかりますか?(白い点々がありNGとなったウィスキー)

「ところで、お土産にスクラップにするコードバンもらえたりするかな?」と聞くと、「Sure!」といって、ホーウィン社のロゴが入ったナイフで革の綺麗な部分を切り取ってお土産にくれました!一緒に連れて行った同僚はもう大興奮です!笑

「ゲストで来てくれた人のサインのエリアだよ。良かったら君たちもどうぞ」、オールデン本社の方やショップの方、VIPの方々がサインしていると思われる大きなホーウィンレザーの上にサイン。光栄です。。。

工場見学の後は会議室に戻り、少し座談。この時のニックの話によると、ウィスキーが継続の危機にあって廃盤になるという話は完全なデマ。単に作るのが難しく、不良率が高い為試行錯誤しているだけ。ウィスキーの色の濃さも、単にロットのバラツキによるもの。意図的に濃くしたり薄くしたりしているわけではない。原皮の状態にもよる。工場はあちこち水があるが、ニックは気にしない。雨でも雪でも普通に履いてきちんとケアすれば全然問題なし、など、その他ホーウィンならではの面白い話を色々と聞くことができました。

ということで、夢のようだったホーウィンファクトリー見学はあっという間に終了となりました。(ニックの愛犬もパチリ)

以上ですが、お楽しみ頂けましたでしょうか?皆さんの疑問を解くキッカケ、また皆さんのオールデンに対する更なる愛着へとつながることを期待しております!


【編集後記】2017/02/05

ホーウィン訪問ですが、ずっと前から計画していたんですが、ある人の紹介があってそれからずっとコンタクトを続け、「**頃アメリカ出張するからこの日はどうか?」とか「今年はこのタイミングだからこの日はどうか?」とかずっとやっているうちに一年以上掛かってしまいました。

あちらは当然平日の夕方までの時間が都合良く(というか、工場が稼働してないと意味がない。笑)、こちらは仕事で行っているので、週末が都合良い、ということで中々日程が合いませんでした。四時には工場終わりなんですよね。。。

今回もダメかな。。。と思ったんですが、うまく飛行機をやりくりすれば、トランジットで数時間取れるな。。。と思い、ダメもとで聞いて見たら「その日の午後なら都合合わせるよ!」との返事。やった!と思い、同僚連れて無理やり飛行機を変更してホーウィンへ行って来ました。笑

ニックのインスタから、彼がオールドライカが好きなことが分かっていたので、僕も自分のライカを持参してコダックの白黒フィルムで撮りつつ、iPhoneでも撮影し、加えて気になってたことを色々質問して、夢の様な時間があっという間に過ぎました。

お土産にウイスキーの切れ端を片手に帰国した成田で、アダムからAC-1入荷のお知らせが届く、というオマケ付きで、このホーウィン訪問から僕のオールデン趣味は更にツキが回って来た気がしています。笑